ビョーキもらった - 『イット・フォローズ』
イット・フォローズ
IT FOLLOWS
2016(2014)/アメリカ/R15+ 監督/デヴィッド・ロバート・ミッチェル 出演/マイカ・モンロー/キーア・ギルクリスト/ダニエル・ゾヴァット/ジェイク・ウィアリー/オリヴィア・ルッカルディ/リリー・セーペ/他
“それ”は ずっとずっと憑いてくる
セックスすると感染し、IT(それ)に襲われるようになる。というワンアイデアはベタなようでベタではなく、性行為に無縁なティーンズの溜飲を下げつつも、逆に性行為基準でしか異性を見る事ができない猿にも警鐘を鳴らすというメタとネタをも内包しており、たいへん感銘を受けました。セックスとタナトスを露骨に弄ると何やっても寒くなるのはインターネットのお約束ですが、こと映画に関しては露骨であればあるほど良くなる可能性もあるわけで、性愛とそれが転じた死の匂いを主軸に据え、かつサバービアンの少年少女の文脈にも絡めた本作がサプライズヒットを飛ばしたというのもむべなるかな。冬枯れ……とまでは行かないが、秋風悲し郊外地帯に響き渡る不穏なBGMも作風に合っており、このサントラを聴きながらノートに自作の神様の絵とかその神様への報告とかを書き連ねたりすると筆が進みそうです。そんな透明な存在の話はどうでもいいのですが、本作の低予算ならではのアイデアの白眉はやはり、襲ってくるIT(それ)が顔にチョチョっとメイクしてあるだけの普通の人にしか見えない、という点でしょう。それも露骨に阿呆みたいな動きで迫ってくるのではなく、基本的にツカツカと歩いて近寄ってくる。なので、感染中(取り憑かれている)の人間からは遠目には普通の通行人と判別し辛い。周囲の人間にいちいち「みんな! アイツが見える!?」と確認して「見えるよ」と答えられたらばやっと安堵するという始末。ゾンビ映画と某作のブルース・ウィリスのいいとこ取りですね。でもシック……ごほん、某作と毛色が違うのは、本作のIT(それ)たちは物を動かす(動かせる)というところで、髪は引っ張る、電化製品はブン投げる、挙句、捕まったらレ●プされるという肉体派な一面が作品の静と動をビビッドに区切っています。肉体派と言えば、そもそも感染経路が肉体同士のまぐわいという事で、ここに青春真っ盛りの若人の苦悩が表面化しているのもドラマ性を付与しています。ビデオを見せたりウィジャ・ボードをこねくり回したりといった二次的なガジェットを介在させることなく、肉体同士で直(じか)に! ってところが骨子を支え、あの勝ったんだか負けたんだかとにかく哀切な結末へと観ている者を導く。IT(それ)の存在についてはあちらの国で喧々諤々とした議論が交わされたらしいですが、それが性病の暗喩であろうが妊娠の暗喩であろうが、快楽に堕ちるというよりは恐怖から結びついてしまうなんてちょっとロマンティックじゃないですか。水着ショットがやたらあったり女優陣が美人揃いなのも監督のフェティズムを感じられて眼福々々。作中のセックスに一切の法悦が無いのもまた監督の闇を感じて良し。無軌道な少年少女に災いを以て道を正す、なんて言うとちょっと老害感をハンドルできていないようなイメージを与えてしまいますが、引用されるドストエフスキーなどに持って回った、あー、悪く言えば説教感良く言えばメッセージ性を感じることもあり、それがどういうメッセージなのか平易に噛み砕いて説明できないのが私の脳味噌の限界なのですが、要するに何か言いたかったんだろうと感じさせるに十二分な余韻を残す事請け合いです。思春期の神経症的な性願望を経験者と未経験者(かんたんに言うと童貞)に役割分担させ、あの年頃の男は猿みたいなもんだよと身も蓋もない事実を突き付けているのも現実的でマル。何でホラーが現実的でマルなんだよと申されますと、多角的に、様々な角度から、主人公ジェイ(マイカ・モンロー)の水着姿を舐め回すように、見れたら良かったのだが勿論そんなこたあできないので解釈遊びをするくらいしか脳のカロリーを消費する方法が無いのだけれども、多角的に、様々な角度から、それも誰しもが経験したティーンズの性愛に関する苦悩を提示されているが故に、最後はどういう道を示唆しているのか、そもそもIT(それ)は実在したのか(してるだろ。物が動いてるんだから)、発端や感染経路は本当にセックスだったのか、現実とリンクさせこじつけて考える愉しみと余地が本作には残されているわけです。スクールカーストの話になるとやたら饒舌になる人現象みたいなものですね。ところで私はスクールカーストの話になるとやたら饒舌になってしまうのですが、一種の青春、否、性春モノとしてカテゴライズされてもおかしくない本作から、スクールカースト云々を刈り込んだ判断は支持します。お陰で半径ワンタッチ圏内という絶妙な世界の幅でホラーと青春を両立させる事に成功しており、また性愛にまつわるエトセトラに全力で注力されていて観点もブレることなく集中できる。屋根の上にIT(それ)が全裸で突っ立っていたシーンなぞは集中の極みでしたよ。それ男だったけど。
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20160918 │ 映画 │ コメント : 0 │ トラックバック : 0 │ Edit