富山政活費問題 前渡しを廃止すべきだ
富山市議会で政務活動費(政活費)の不正取得が次々と明るみに出て、1カ月間に議員3人が辞職し、5人が辞意を表明した。総額は2000万円を超える。地方議会への信頼を失わせる乱脈ぶりで、制度のあり方を抜本的に見直す必要がある。
定数40の議会で過半数を占める自民党系会派の議員の虚偽請求が発覚し、民進党系会派の不正も明らかになった。辞職で欠員が一定数を超え、補欠選挙が行われる見通しだ。一方で徹底した実態調査が必要なのは言うまでもなく、真相究明をうやむやにしてはならない。
政活費は、政策の調査研究や陳情活動などの経費を補助するため地方議員に支給される公費だ。
一部の議員は領収書を改ざんし、開いていない市政報告会の費用を請求したり、報告会の茶菓子代を水増ししたりした。不正に得た金は飲食やゴルフに使い、選挙資金に充てた議員もいる。
だが、私的流用や選挙活動への充当は政活費の性格上認められていない。さらに、野々村竜太郎元兵庫県議の政活費詐取事件が2年前に発覚して以降も不正は繰り返されてきた。住民の税金を使っているという意識の乏しさにあきれるばかりだ。
こうした不正が横行するのは、前渡し方式を制度として認めていることが大きい。富山市議会では議員1人あたり年180万円が会派に事前支給されている。余れば返す必要があるが、ほとんど返還されていない。「使い切らなければ損」という意識の表れだろう。
元々、議員個人に直接前渡しする方式が不正の温床となるという批判が強かった。そのため、兵庫県議会などは政活費を会派に前渡しして、会派から議員に後払いする方式に変更した。
ところが、今回の組織ぐるみの不正を見れば、会派のチェック機能が働かないのは明らかだ。事前支給自体をやめるほかないだろう。まず使った分を請求し、それを精査してから支給する形にすべきだ。
不必要な支出をなくすため、1円以上の領収書や支払証明書の提出を例外扱いなく義務付けるべきだ。全ての領収書をインターネットで公開すれば住民も監視しやすくなる。使途を例示し、私的旅行と批判される海外出張を対象から外すなど支出範囲を限定することも考えたい。
一連の不正発覚の発端は、富山市議会が6月に議員報酬を月10万円増額することを決め、「議員とカネ」の問題に関心が高まったことだ。市民感覚からかけ離れた政活費の使い方をどう変えるか。地方議会の議長会など全国規模の団体が率先して改革に動くべきではないか。