[映画] マイ・インターン
一昨日だったか満月だった。ああ、十五夜だと思った。秋が来たのだ。ということで、夏に生まれた私はまた一つ歳を取る。信じられないことだが、59歳になった。来年は60歳である。死にたい。いや、死にたくない。以前もそう思ったことがある。30歳の時だ。うへぇ。このブログを始めたのは45歳だったんだぜ。
かくして私が生きているなら70歳になるのは、あっという間だ。すでにボケ始めていて、前回いつブログを書いたかも覚えていない。というわけでもないが、人生もお弁当箱の隅に散ったご飯粒を集めるようなしだいになってしまった。というのが私なので、70歳の老人が主人公のこの映画『マイ・インターン』は気になるわけだ。しかも30代の美人社長との物語だ。気ならないほうが無理だ。というわりには映画館で見たわけでもなく、DVDになってから先日見た。見て、絶望した。ずるいなあ。ロバート・デ・ニーロ(72当時)はかっこよすぎる。
表題にもある「インターン」というのは、日本語でなんというのだろう。バイト? 研修生? 日本語でもまんまインターンかもしれない。正規雇用ではないが働かせてみて、使える人材なら正規雇用になるという仕組みと言っていいだろうか。米国だと無給も多いらしい。ピンズラーのフランス語教材もフランスでのインターン向けが意識されていた。フランス語だとstagiaireという。stagiaireになると、かねて大学とかも無料で行けるらしいなどなど。
物語の主人公のひとりはすでに触れたが、退職し妻も亡くした70歳の男、ベン・ウィテカ。ブルックリンに住み、長年電話帳の印刷会社に勤めていた。働くならきちんとスーツを着て、ハンカチを持つ紳士だ。名前から察せられるようにユダヤ人である。悠々自適な退職生活をしていたが、生きているなら社会参加すべきだと、とある会社のシニア・インターン制度(老人研修制度)に参加する。
その、とある会社というのが、1年半で急成長したファッション通販サイト社である。主人公のもうひとり人がその社長のジュールズ・オースティン。「ジュールズ」は女性名だが語源はシーザーの「ユリアス」と同じだからユダヤ人ではないのだろう。彼女の直属にベンが就くが、どっちかというと当初は社会的に「我が社はシニア・インターン制度を大切にしてます」のアピールであった。と、いう含みを大切にして邦題は「マイ・インターン(私直属の研修生)」ということだが、原題は「The Intern」である。このTheにはあいつだぜ、という含みが強い。
話はテンポのよいコメディで人情ものである。すぐに予想が付くが、老人のベンがその人生経験を生かし、また人間性の良さで、会社やジュールズに良い影響を与えていくというもの。まあ、人生経験を積んだよき老人には社会的な意味があるという陳腐な話である。私のような人生のどん詰まりにしてみても、よい話であるには違いない。
しかし現実には、よい老人というのは少ないのではないかと思う。自分が刻々とそうなりつつあり自覚してそう思う。そういえば先日、体調悪く数日引きこもっていたら無精髭が生えていた。自分の顔を見るのも忘れて外出して、ふと若い女性に、おしゃれではやしているんですかと聞かれ、無精髭もまんざらでもないか、とふと思うくらいにはボケたなあ俺と思った。
この映画だが、社長の若い女性、といっても、30代で仕事バリバリ。似たポジションの女性からもこの映画の支持も多いらしい。というのが頭では理解でないではない。ジュールズを演じるアン・ハサウェイの感情表現は、その年代とそのポジションに特有なものはあるようには思えた。女性が家計を支えるようになると夫のポジションは微妙になりがちというのもある。
まあ、総じていい話であった。『最強のふたり』もいい人情話であったが、二か月に一回くらいはこうした、いい話だなぁという人情話の映画を見るようにしたいものだとも思った。
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