こんにちは、洋服大好きいわたです。
ぼくは洋服が大好きですが、最近はあまり量を買わなくなったんですよね。
理由は単純で、ぼくは常に心の底から気に入った服だけに囲まれていたいから。
そんな訳で最近、ぼくの中での服選びにおける購入基準はかなり高くなったのです。
厳しい条件を前提に欲しい服を探すと・・・これがまあ見つからない。
時期的にそろそろシャツが欲しいのに本当に見つからない。
こうなったらもう、いっそのこと理想のシャツを自身の手で作ってしまえ。
ということで、小中高で家庭科の成績は3と普通だったぼくが、自らのためにシャツを作ることに。
アパレル業界の名門校、文化服装学院出身の知り合いに同行してもらいシャツ作りに必要な材料の買い出しへ行ってきました。
ようやく必要な材料が揃ったので本格的に服作りを行うのはこれからなのですが、この時点で新たな発見がたくさん。
服作りを進めるにあたって発見は尽きないと思いますが、ひとまず現段階での気付きをアウトプットしておきます。
やってきたのは「にっぽり繊維街」
ということで服作りに必要な材料を買うため、東京都は荒川区の「にっぽり繊維街」へやってきました。
今回案内してくれるのは今年の3月に文化服装学院を卒業した友人。
彼女曰く「文化生なら日暮里にはお世話になってるよ」とのことでした。
シャツの土台となる生地を選ぶ
その名の通りの「繊維街」には生地屋さんやボタン屋さんがひしめき合っています。
お店へ入ると写真のようにして生地がズラリ。
5階建てのお店ではほとんど全フロアこんな具合で様々な種類の生地が並んでいました。
「オックスフォードにブロード、ツイル・・・どれも綿100%から成っているのに、これらは何が違うの?」
「編み方や糸の太さ・・・色々な要素が交わって生地が完成するんだよ。原材料は同じでもこれらは全くの別物になる」
ぼくは毎日何千着もの服に囲まれて仕事をしていた経験から生地の違いには詳しいと思っていました。
綿100%から成る生地はいくつか知っていましたが、いざ生地屋さんへ出向くとぼくが知っていたのはほんの一部。
想像の100倍は同じ「綿100%」から成る生地の種類があり心底驚きました。
「すごく面白い・・・」
この言葉を何百回口にしたことか。
初めての生地屋さん巡りに終始ワクワクが止まりませんでした。
服全体の印象はパーツで決まる。ボタン選びは超重要工程
「服っていくら生地やシルエットが良くても、パーツが安っぽいと途端にショボく見えるよね」
「本当にそう!だからボタンやジップは慎重に選ばないと服全体の印象が台無しになるよ」
どんなにいいブランドの良質な服でも、ボタンやジップといったパーツが安っぽいとすごく残念な印象を受けるんですよね。
服飾学校出身の友人もパーツ選びには気を遣うとのことでした。
逆に言えばそういったパーツに注意しながら服を選べばある程度は作りが良く見えたりするので不思議。
ぼくも服を選ぶときは使用されているパーツのディテールを必ず確認しています。
それくらいボタン選びが重要なのであれば手を抜く訳にはいきません。
店内にずらーっと並んでいる何百種類ものボタンの中から、買った生地の雰囲気に合うそれを選びます。
この時点で、ただの布切れだった生地が洋服になると雰囲気はどう変わるのか?
ボタンを付けるとしたらどんな色や形、サイズのそれがマッチするのか?
これらの要素を平行して考える必要があり、服作りはなかなか難しいことを痛感。
服作りに慣れている友人でさえ「いざ形にすると、やっぱり着れないと思うこともある」と言っています。
それだけ生地が布切れ状態のときと、シャツになったときの雰囲気には大きなギャップがあるんですね。
「生地とボタンを選んだけど、にっぽり繊維街にはメンズ服のパターンがないから、それだけネットで買ってね」
服作りに必要な材料を揃える過程で感じたこと
こうして無事、今回シャツを作るのに必要な材料を揃えることができました。
それぞれの材料をひとつずつ紹介していきますね。
生成り色の綿100%生地
シャツのベースには少しだけ生成りっぽい色をした綿100%の生地を。
生地の名前は初めて聞いたものでした。これは・・・なんて名前なんだっけ?
やや厚みとコシがあり、感覚的にはキャンバス生地を少し薄手にしたような。
綿100%とはいえ洗うと若干縮むそうなので、パターンに沿って裁断する前に洗濯を済ませておこうと思います。
CHANELのヴィンテージ貝ボタン
ボタンには黒くて光沢のある貝ボタンを選びました。
今回は前身頃とカフス(袖部分)のボタンサイズを11ミリで揃えています。
シャツの前身頃には13ミリ前後のボタンを使うのが平均的とのことなので、少しだけ小さめかな。
ここでいうCHANELはあのココ・シャネル率いるスーパーブランドのこと。
パリのCHANELメゾンで見つかったデッドストックのヴィンテージ貝ボタンなんだとか。
ボタンひとつにしてもロマンがありますね・・・ヴィンテージは奥が深い。
ちなみにこのボタンは1つあたり120円でした。
初めてボタンを単体で買ったぼくはてっきりこれが相場だと思っていたのですが・・・。
Amazonでは15個入りで560円。
そうか・・・ヴィンテージ。
このCHANELボタンを11個買ったので、ボタンだけで1,300円くらい。
当たり前ですが、いいモノを作ろうとすればするほどコストはかかるものですね。
ネットで買ったメンズシャツのパターン
先程から「パターン」という単語を繰り返していますが、その正体がこれ。
いわゆる型のようなものですね。この型に沿って生地を裁断し、縫い合わせてシャツを作ります。
そうやって考えると服作りにはプラモデルにも似た要素がありますね。
パターンはつい先日届いたのですが、これを見た瞬間から服作りの構想が具体的になってワクワクが止まりません。
このままのパターンに沿って裁断してもいいのですが、実際はもう少し着丈を短くして、他にもアレンジを加える予定です。
アパレル業界のお金回りを作り手目線で分析する
今回これらの材料を全て揃えるのにかかったお金はおよそ3,000円でした(パターンは除く)
で、この記事で最も書きたかった内容はここからです。
今まで消費者として洋服を楽しんでいたけれど、生産側に回ると業界の裏事情や苦労が見えてきたんですよね。
基本的にアパレル業界では洋服の製造原価は販売価格のおおよそ3割と言われています。
ブランドにもよるとは思いますが、一般的な国内デザイナーズはおおよそこれくらい。
それを前提として業界の仕組みを分析していきます。
ぼくの好きなブランドを例に出すと、シャツは22,000円(税抜き)で販売されている。
販売価格の内訳は製造原価が3割、7割がおおよその利益とします。
製造原価にフォーカスして、22,000円の3割は6,600円ですよね。
そこから実際にシャツを作るのに必要な材料費(今回は3,000円で計算)を差し引きます。
残ったのは3,600円。これが何を示しているか?
そう、この残った部分が従業員の方に支払われるお給料となっています。
「そう考えると業界のお給料が安い理由もわかるでしょ」
アパレル業界って本当に苦労しているんだな。
当然デザイナーズブランドはぼくが買った生地よりも良質なものを使っているので、
それを考えるとぼくは苦笑いすることしかできませんでした。
良い服を作ろうとするほど経営が苦しくなるジレンマ
ファストファッションが流行っている現代においてデザイナーズブランドの服を着る理由は、意味は何なのか。
デザイナーズにはあって、ファストにない要素はたくさんある。
それでもファストファッションが主流なのはどうしてか?
そもそも洋服というアイテム自体が必要最低限あれば困らないモノで、それ以上を求めるのであれば贅沢になる。
ファストファッションが主流なのはおそらく、今は着心地や質は二の次にしてデザインを重視する人が多いから。
流行に乗ることが正義な時代において、品質は多くの人が洋服を買うときに考慮されない要素となっています。
しかし皮肉なことに流行を生み出すのは世界最先端のパリコレであり、それに参加しているハイブランド。
コレクションの要素や傾向を取り入れた質と着心地の劣化版がファストブランドから販売され、人気を得る。
これに負けじとデザイナーズが品質の差を押し出したのが「高級志向」として話題となったのでしょう。
ファストに負けない、より良い服を作ろうと努力をすればするほど費用がかさみ、経営が苦しくなるジレンマ。
出費を抑えたいがために工場へ安く仕事を振るブランド。
あまりの低収入に耐えられず潰れていく国内工場。
今、日本のファッションブランドは窮地に追いやられています。
日本のデザイナーズ市場は危機的状況
話のスケールは大きくなりますが、ぼくが服作りに挑戦するのも実は自分のためだけではありませんでした。
生粋のデザイナーズブランド好きなぼくはファストファッションが主流の時代に違和感を感じています。
このままだと日本のデザイナーズブランドはファストファッションに侵食される。
よくあるファスト×デザイナーズのコラボは前者が財政破綻しかけの後者を救うための手立てと聞きます。
そうでもないとあんなペラペラ生地のファストブランドとコラボしないはず・・・。
日本でトップの知名度を誇る某デザイナーズが、ファスト大手とコラボしたあのとき、
今後もブランドとして活動を続けるために目を瞑ったのでしょう。
そんな今の状況において、国内生産の活力を取り戻してファストに負けない魅力を持った服を打ち出せたら。
ぼくは、ぼくが大好きな国内デザイナーズ市場を活気付けるために動いていきたい。
それに今取り組んでいる、まずは作り手の立場を把握するためのシャツ作りが活きるかはわかりません。
けれど何らかの手段で市場を活気付けるための行動を起こします。
また国内のブランドは素晴らしい服を作っているのに、それを消費者に伝える発信力に欠けているのも問題です。
日本のブランドはとにかく発信力が弱い。
いい服を作っているのに売れない原因のひとつでしょう。
今のアパレル業界には課題が盛りだくさんだけど、それを解消するための手段も多くあるんじゃないかな。
と、ゆくゆくはこの元気のない業界を救う力になりたいと考えているぼくの、
その最初の手がかりを掴むためのシャツ作り日記でした。
今後も気付いたことがあればこうしてアウトプットしていきます。