「ハウス・オブ・デット」は、米国の新鋭経済学者、アティフ・ミアン米プリンストン大教授、アミール・サフィ米シカゴ大教授が2014年に共著した力作だ。2008年の世界的な金融危機を迎える前に増えた家計債務によって、いかに米国経済が危機に弱くなったかを分析した。サマーズ元米財務長官は「08年の危機以降で最も重要な経済学の書籍だ」と称賛した。
両教授は米国の危機の原因を家計債務の急増に求めた。2000年以降、わずか7年で家計債務は倍増した。1930年代の大恐慌直前にも見られた現象だった。借金をして消費すれば景気は良いかもしれないが、危機の芽をはらんでいた。危機が起きた後、雇用を失い、債務返済に苦しんだ家計は消費を切り詰めた。それが再び雇用を減らすという悪循環に陥った。差し押さえた住宅が投げ売りされ、住宅価格は一段安となった。借金で建てた家(ハウス・オブ・デット)のバブルが消えると、消費不況に覆われた。
住宅バブルの発生と崩壊を経験した米国とは異なり、韓国は「借金で建てた家」がどれほど経済危機に弱いのか判断できない。現在は銀行の融資で住宅を購入することが当然に思えるが、20年前まで韓国社会はそうではなかった。1990年代初めから半ばには家計の貯蓄率は20%を超えていた。可処分所得の5分の1を預金していたことになる。家を買うには貯金が必要だった。当時は「貯蓄で建てた家」が大半だった。
ところが、2000年代に入ると、借金で建てた家が増えた。通貨危機後に住宅価格が上昇した際、まとまった資金がなかった人々はローンでマイホームを購入し始めた。ちょうど企業倒産で融資先がなかった銀行は住宅ローンに活路を見いだした。当面は利払いだけで、元金返済を先送りする住宅ローンが登場し、住宅価格と住宅ローン残高は比例して増加した。家計の貯蓄率は一時1%台に落ち込んだ。
今や貯蓄で建てた家はほとんど見つからない。全て借金が元手の家ばかりだ。06年末に602兆ウォンだった家計債務は今年6月末時点で1257兆ウォンへと倍増した。負債は家計の可処分所得の1.6倍となり、世界でも最上位水準だ。08年の金融危機前の米国のように体質が弱まっている。
「ハウス・オブ・デット」の著者らは債務減免を一つの解決策として示した。しかし、その借金を肩代わりする人だけが損をする社会をつくるリスクがある。米国が実際に選んだ道は消費を減らし、借金を返済する「苦痛の時間」を過ごすことだ。7-8年たつと消費の余力が生じ、家計消費が景気回復の火付け役になっている。
韓国政府は現在、不動産を通じた景気浮揚と家計債務の増加抑制の間で右往左往している。借金で建てた家は08年に米国経済をまひさせたほどの破壊力がある。危機が訪れれば、「苦痛の時間」であれ「借金の減免」であれ大きな代価を支払うことになる。米国の追加利上げも迫っている。それだけに今はまず家計債務の「地雷除去」に集中すべきだ。