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労働者は時間貸しの部品@日本以外全部

2016091500000021jij_afp0005view この記事が話題になっているようですが、

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160915-00000021-jij_afp-int (乗客残して列車運転士が下車 「超過勤務」理由に スペイン)

労働時間感覚とか労働者の権利とか、もちろんそうなんですが、それよりも何よりも、そもそも労働者とは何なのか、雇用労働とはどういうことなのかという、彼我の基本感覚の違いが出ていると考えた方が良いと思います。

というのは、この邦訳記事では詳しい事情は書かれていないのですが、スペインの最大手紙「El PAIS」(エル・パイス)の記事の最後のパラグラフに、組合側の説明が載っていて、

http://politica.elpais.com/politica/2016/09/14/actualidad/1473839555_569064.html

"Hechos como el de hoy no son nuevos, han ocurrido, pero no es habitual ya que los cuadros de servicio, es decir, los horarios de trabajo, están bien diseñados para que no se rebasen las jornadas", añade el responsable del Semaf, que reitera que "el conductor alertó con tiempo" pero el centro de gestión "no encontró a nadie para sustituirle". El Semaf desvincula el incidente de cualquier tipo de conflicto laboral. "No es una medida de presión, es un tema de seguridad", subraya Segura, que duda de que se vaya a producir sanción alguna. "Si le pretenden sancionar por cumplir la ley del sector ferroviario, estamos apañados", resume.

要は、この運転士は管理センターに時間切れになるよとちゃんと知らせたのに、管理センター側がちゃんと対応しなかったからだ、と。

これを見て、何を言っているんだ馬鹿者が、と思ったあなた、あなたはもう既に、日本国民法の定める雇用契約ではなく、日本型メンバーシップ契約の真ん中で物事を考えているのです。

いうまでもなく、日本国民法も含めて雇用契約と言うのは契約に定められた労務を取引相手方たる会社に提供する契約であって、会社の一員として何でも対応する契約じゃない。何をどうすべきかを定められた契約の範囲内で決めるべきは会社であって、労働者ではないわけです。

これを私はよく、労働者というのは部品であって、それを適切な時と場所にはめ込む責務は部品自身じゃなくて会社側にある、というわけですが、日本型メンバーシップ契約では、労働者というのは部品じゃなくてあたかも自ら経営者になったかのごとく対応しちゃうんですね、いやそれはそれで大変美しい話ではあるんですが、それを悪用する企業が出てくると、まさにブラックの温床ということにもなります。

で、本件に戻ると、運転時間が制限されているというのははじめからわかりきっていることで、鉄道を運行している会社としては、それを大前提に、どの部品をいつどこにはめ込むかをちゃんと考えていかなければいけない。こういう事態になって、さすがのスペインでも大変な騒ぎになっているようですが、大前提はそういうことです。

で、この労働者が部品であるという発想が、実は日本人にとって一番不愉快で、否定したくて仕方がない発想なんですね。某新左翼系の新聞で、私がこう批判されているんですが、

http://www.k-center.org/blog2/g-kiji/2016/05/g03140201.html (安倍政権に反撃を!6・5国鉄闘争全国運動集会へ)

・・・濱口は、〈従来の正規雇用はどの器官にも使えるiPS細胞だが、ジョブ型雇用は使える器官が限定されており、職務が消滅すればそれは正当な解雇理由となり、欠員が出れば補充される「部品型労働力」〉と、部品型雇用への転換を提言しているのです。・・・

ふむ、国鉄闘争な方々は、このスペインの鉄道運転士みたいな部品型労働力には絶対何が何でもなりたくないというわけです。

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