名護市辺野古の新基地建設を巡る訴訟で、福岡高裁那覇支部は国側の主張を踏襲し、米海兵隊が沖縄に駐留する地理的優位性や抑止力などを認めた。地方自治法の改正で国と地方が「対等・協力」関係になったにもかかわらず、判決から透けて見えるのは、地方は国の判断に従うべきとの旧態依然とした“従属関係”。裁判所自ら和解で求めた協議による解決の可能性を閉ざすなど「辺野古ありき」とも言える判決内容だった。主な争点の判断をまとめた。

「辺野古違法確認訴訟」判決の開廷を待つ県側=16日午後、福岡高裁那覇支部(代表撮影)

辺野古違法確認訴訟の判決骨子

「辺野古違法確認訴訟」判決の開廷を待つ県側=16日午後、福岡高裁那覇支部(代表撮影) 辺野古違法確認訴訟の判決骨子

 埋め立ての必要性、つまり辺野古に新基地を建設する必要性について、判決では、国の主張を受け入れ、沖縄に駐留する海兵隊の地理的優位性や抑止力を認めた。普天間飛行場の騒音被害や危険性を除去し、機能を維持するためには辺野古へ移設しなければならず、「新施設が設置されなければ普天間飛行場が返還されない蓋然(がいぜん)性が有意に認められる」と普天間の固定化にも言及した。

 「沖縄から奪った土地に普天間飛行場を造り、古くなったから、危険だから、新たな土地をよこせというのは理不尽だ」という翁長雄志知事の意見や、国土面積の0・6%の沖縄に在日米軍専用施設面積の74%が集中するという問題の本質には目を向けず、政府と同様「辺野古ありき」の姿勢が色濃い判決となった。

 翁長知事は埋め立て承認取り消しの理由の一つに、抑止力や地理的優位性などの根拠は乏しく、海兵隊が沖縄に駐留する必要がなければ、埋め立ての必要もないと強調。戦後71年間の沖縄の過重負担が将来にわたって継続する不利益の方が大きく、埋め立て承認の要件となる埋立法4条1項1号の「国土利用上適正かつ合理的」とは言えないと訴えてきた。

 判決は潜在的紛争地域の朝鮮半島や台湾海峡と沖縄が距離的に近いこと、その上で沖縄が北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」の射程外であること、日本の海上輸送交通路に位置し、グアムよりも沖縄の地理的優位性は認められると判断した。

 ただ、なぜノドンか、なぜグアムとの比較か、有事の際に在沖海兵隊がどのような役割を果たすかは明確になっていない。

 また、海兵隊の機動力、即応力を発揮するため、地上部隊と航空部隊を切り離せないという国の主張を採用。一方で、航空機や人員を運ぶ艦船は長崎県佐世保市にあるため、機動力、即応力が損なわれるという県側の主張を退けるには、具体的で判然とする理由は見当たらない内容だ。

 判決では、戦後71年間の沖縄の過重負担や名護市長選、知事選、衆院選などで示された「辺野古反対の民意」を認めながらも、辺野古新基地が普天間飛行場の半分以下の面積であることを強調し、「沖縄の負担軽減に資する」と展開。「新基地反対の民意に沿わなくても、基地負担軽減を求める民意に反するとは言えない」と結論づけた。

 普天間の面積は県内の米軍基地全体の2%にすぎず、返還されても嘉手納やシュワブ、ハンセンなど多くの基地は残る。そのために機能強化を伴う新基地を受け入れることはできないという「民意」には、まったく答えていない。