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【社説】

今、憲法を考える(読者から) 不断の努力かみしめて

 貴重なご意見をたくさんいただき、心から感謝します。

 「危惧している」こととして、金沢市の女性は「集団的自衛権の名のもとでの国際平和活動(戦争)への参加、国家緊急権の乱用による独裁への道などが憲法改正によって現実のものとなるかもしれない」と書きます。

 改憲が既定路線になってはいないか、それに対する恐れです。匿名の人は「本当に憲法を改正したいのであれば国民に正面から訴え、何をどのように改正するのか丁寧に説明すべきだ」としたうえで、「そもそも憲法改正論議が国民の側からはとくに出てきていない」点から疑問を呈しています。

 改憲の切実な事情があるのか不明だからです。埼玉県新座市の男性からは「私たちの周りにも改憲論者はいます。それは(憲法施行から)長すぎるから、一度変えてみれば」といった意見が多いと教えてもらいました。でも、憲法公布から七十年。人権宣言は二百年以上も尊重されています。

 戦争放棄を定めた九条の改正には不安視する声が多く寄せられました。ある女性は「私の父はフィリピン・ルソン島で戦死。二度と戦争を起こしてはならないと、苦労を重ねた母は私たちに言い残して、九十四歳の命を閉じました」。ある男性からは「戦争は人の心を鬼にします。多くの戦友が戦病死。無事帰れた私は運の良い男です。二度と戦はしない、九条を守る、私の務めです」。戦争を知る人こその意見でしょう。

 それに対し、名古屋市昭和区の男性(62)は北朝鮮のミサイル報道に接し、「自前の国産の憲法を制定する必要を感じた」と言います。石川県加賀市の男性(80)も「平和憲法などと金科玉条のようにありがたがっているが、日本の周囲に存在する『困った隣人たち』がそんな崇高な理想を忖度(そんたく)してくれるかどうか」と疑問を投げかけます。それも理解できます。

 九条は理想で現状にそぐわないという批判がありますが、東京都昭島市の男性はこう考えます。「理想と現実は絶えず乖離(かいり)する。現実に理想をなじませるのではなく、少しでも理想に現実を近づけるよう努力すべきだ」

 他にも「改憲ありきの議論に乗せられるな」「国民の無関心こそなくせ」−。戦後の歴史の岐路かもしれません。不断の努力こそ求められます。読者のみなさんの声を大切にし、改憲論の行方を注視していきます。

 

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