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[FT]ロシア下院選、まだ自由とはほど遠い(社説)

2016/9/16 15:15
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 ロシアの下院選挙で大規模な不正があったと見なされ、抗議デモがわき起こってから5年になる。だが、このところの一連の事態は、18日実施の下院選が前回よりずっと自由でオープンになるという期待は失望に終わりそうであることをはっきりと示している。

18日実施の下院選を前にロシア各地で選挙戦が繰り広げられているが…=AP
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18日実施の下院選を前にロシア各地で選挙戦が繰り広げられているが…=AP

 投票まで2週間の時点でロシア当局は、国内最後の独立系世論調査機関であるレバダ・センターを「外国の代理人」として登録すると発表し、厳しい活動制限を課した。表向きの理由は、外国から資金支援を受けていたことだ。だが実際には、政権与党「統一ロシア」の支持率低下を示す世論調査結果を発表したことが原因となった可能性が濃い。

 プーチン氏が率いる大統領府にとって、2011年の抗議デモの記憶は今も生々しい。そこで政府は、前回よりもいくらか透明で公正な選挙に見えるように手を打っている。今回は、03年を最後に打ち切った小選挙区制を復活させた。政党の比例代表制と、地域的な代表を復帰させる小選挙区制で半数ずつを選出する。

 登録を認められた政党数も5年前と比べて大幅に増えた。中央選挙管理委員会の委員長は、信頼を失ったプーチン人脈のウラジーミル・チューロフ氏に代わり、女性人権活動家のエラ・パムフィロワ氏が後任に起用された。パムフィロワ氏は、今回の選挙に不正の広がりがあれば辞任すると述べている。

 だが、大統領府は求める結果を確実に得るための手も打っている。これまで12月に行われていた選挙を9月に前倒ししたのは、選挙活動の期間を縮めて国民の関心度と投票率を下げる狙いとみられる。

 当局はレバダ・センター以外にも非政府組織(NGO)への締め付けを行い、疑わしい選挙結果に抗議する市民社会の力をそいでいる。大統領府にとって最も厄介な野党指導者で汚職問題を追及するブロガーのアレクセイ・ナバルヌイ氏は、でっち上げの法的問題で排除された。

 従って、統一ロシアが前回よりは支持を減らしながらも勝利する公算が大きい。小選挙区制が過半数獲得を助ける可能性もある。比例代表制の議席獲得に必要な最低得票率は5%で、これを満たすのは統一ロシアと、いわゆる「体制内」野党を構成する3政党だけになりそうだ。

 これをすべて大統領府のせいにすることはできない。「非体制内」の民主派勢力は依然、結束できずにもたついている。しかし、前回選挙は、少なくとも大都市では従来よりも政治意識の高い有権者層が台頭していることを示した。真の政治刷新に踏み出す好機になり得ていたのだ。もっと開明的な指導者がいれば、人々に民主主義を教え、疑似政党と演出に操られた投票から引き離す努力が可能だったはずだ。

 現実には、本物の近代化をまったく伴うことなく、プーチン氏が「管理された」民主主義に修正を加えている。それができたのは、クリミア半島のロシアへの編入など、力ずくで大国の地位を取り戻す行動に出たことで、プーチン氏個人の人気が高まり続けたからだ。プーチン氏は政権幹部の一部を入れ替え、選挙で新しい議員が下院に入ることにもなるが、経済が悪化し、財政の逼迫が強まるなかにあってもロシアの政治構造は一段と硬直化している。

 それに起因する緊張は、さらに重要な18年大統領選までの18カ月にわたり高まっていくはずだ。極めて慎重に扱わないと、その緊張が爆発して噴出する恐れがある。ロシアの最高指導者として19年を経ているプーチン氏が大統領4期目を目指す決断を下せば、その危険はなおさら高まる。

(2016年9月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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