学生時代に一年間だけフルコンタクト空手を習っていた。週に二回、道場に通い汗を流した。筋トレ、型、乱取りを二時間でやった。僕はというか皆、乱取りが好きだった。練習では最低限の防具を身につけるが、殴られたり蹴られたりすると痛い。体重差のある相手の一撃をくらうと吹っ飛ばされた。
いくら頭をつかい相手の癖を読んで突きや蹴りを食らわせても、10キロ以上の差があると与えられるダメージは少ない。メンタルが強く重量のある突進型の者は初心者でも手強い。負けない為にたくさん食べて体重を増やした。
体重が増えたぶん、重量級の相手と渡り合えるようになった。試合をして少しずつ昇級するのだが、黒帯はもとより茶帯にも勝てない。黒帯クラスの攻撃はトリッキーで、下段蹴りがくると思い脛でガードしようとしても、ハイキックに変わり、顔面にヒットする。
重量と経験値がモノをいうのはサラリーマンの世界でも同じだろう。社長や役員が太って、のしのしと歩く姿を見るとつくづくそう思う。仕事ができるかどうかよりも、上役の顔色を伺い接待飲み会をすれば、出世できる。サラリーマンは上司に積極的にフルコンタクトして、可愛がられるようにしよう。同僚に陰口を言われても、飲み会でニコニコしていればいいのである。月曜日にアンパーンチしてやればよい。(500字)