タクシーの相乗りマッチングアプリ「withcab(ウィズキャブ)」がデビュー、まずは東京・港区と渋谷区からサービスを開始

Masaru IKEDA by Masaru IKEDA on 2016.9.16

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Image credit: UberPOOL

16日、同方向の目的地にタクシーで向かおうとするユーザの相乗りマッチングに特化したアプリ「withcab(ウィズキャブ)」がローンチした。アプリは iOS のみで提供され、iTunes AppStore からダウンロードできる。当初のサービス提供エリアは、タクシーの需要が特に多いと考えられる東京・港区と渋谷区内を出発点とする相乗りのみ(ちなみに、新宿駅は渋谷区内、品川駅は港区内に位置するので利用可能)。サービス提供時間は午後7時〜翌日深夜の2時までとなっており、夜間や公共交通機関が動いていない時間帯の安価な移動手段の確保を支援する。

withcab のアプリを立ち上げると、ある目的地へ向かおうとする最初のユーザが、その移動プロジェクトの「親」に設定される。「親」はアプリに表示された選択肢の中から、現在地から近い出発地となる待ち合わせ場所(タクシーが捕まえやすく、比較的誰もが迷わずに集合できる場所)を指定し、同方向へ向かおうとする他の一人または複数人のユーザ「子」を募ることができる。「子」にあたるユーザは、単に目的地を指定するだけで、近隣の出発地から同じ方向へ向かおうとしている「親」に自動的にマッチングされる。

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待ち合わせ場所で相乗りユーザ同士がうまく落ち合えない可能性をフォローするため、アプリにはユーザ間でチャットができる機能が備わっており、電話でも話すことが可能だ。なお、この電話機能はセンター側から呼び出してユーザ同士を中継するしくみをとっているので、ユーザ同士は互いの名前や電話番号を知らない状態で会話ができる。

ひとたび、タクシーでの移動が始まってしまえば、ここまでの「親」と「子」の関係は解消される。目的地までの乗車距離に応じて、ユーザ各人の支払うべき費用はアプリで自動的に按分計算され(この際、深夜の割増料金も考慮される)、先に降りるユーザは自分の料金分を最後の目的地まで乗るユーザに支払う流れだ。最後に降車するユーザがタクシーに代金を支払い、これで一連の移動プロジェクトは終了となる。

ユーザ間は現金決済になるので、按分で支払う際のユーザが小銭を持っていなければならない、最後の目的地にまで乗っているユーザが釣り銭を持っていなければならない、などの不便は生じるが、withcab では近い将来、アプリ上でユーザ間の自動決済ができるしくみを導入したいとしている。

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相乗りで安い移動手段を提供するサービスとしては、UberPOOLLyft Line などが存在する。筆者もアメリカにいるときは多用しているが、ラッシュアワーには price surge で料金単価が上がる一方、需要が多い時間帯は相乗り機会が発生しやすく、結果的に料金が割安になるので重宝している。イベントのときなどは、蓋を開けてみると結局同乗しているのは同じイベントに向かう人ばかりで、車内で名刺交換したり、会話に花が咲いたりするのも副次的なメリットである。

日本ではタクシー会社以外による非認可の配車業務は違法となるため、Uber や Lyft のようなサービスは経済特区などの一部例外を除いて提供できないが、withcab の移動手段には一般のタクシーが使われるため、法律的な制約は発生しない。

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Image credit: いらすと屋

withcab を開発するのは、マレーシア出身のマックス・ライ氏を中心とする4人のチームだ。ライ氏は日本への留学を夢見て、シンガポールのホテルで3年半にわたり勤務。2007年に来日後、日本語学校を経て東京外国語大学を卒業し、直近の3年ほどはインターネット広告のコンサルティング業務に従事していた。ライ氏が withcab の開発を思い立ったのは、ある日、仕事帰りの京王線で終電を逃したときのことだ。終電が帰路途中の明大前駅で終わってしまい、駅前にはライ氏と同じように家路を急ぐ人が集まっていた。同方向に向かおうと思わしきタクシーを待つ客が何人かいたので、ライ氏は声をかけて相乗りを促してみたものの、積極的に応じる人はいなかったのだという。

アプリが介在しマッチングすることで、より日常生活を効率化できると考えたライ氏は、昨年末から withcab の開発に着手。ビジネスデベロップメント1人、開発エンジニア2人を口説いてチームを構築し、今日のサービスリリースを迎えた。

withcab ではユーザがタクシードライバーにタクシー料金を支払う仕様のため、現在のところマネタイズポイントは存在しない。この点については、以前に紹介した役務提供に対する乗車料金の支払が無い notteco や norina などとも同じだ。これまでにも、相乗りのコンセプトを持ったアプリは世の中に存在したものの、あまり活用されてこなかった背景には、UI が複雑過ぎたか、ライドシェアリングの概念自体があまり浸透していなかったからではないか、と withcab のビジネスデベロップメントを担当する藤次(とうじ)氏は話す。

シェアリングエコノミーのサービスが増える中、ようやく日本でもユーザがライドシェアリングを受け入れてくれる素地が整ってきたと考え、withcab のチームは、このタイミングでサービスのローンチに踏み切ることを決めた。withcab では今後、割り勘するタクシー料金を相乗りするユーザから集めて、最後に降車するユーザに支払う事前または事後決済のしくみをアプリに追加してキャッシュレスの乗車体験を実現、その際の決済手数料の一部を収入源とする形でマネタイズしたい考え。また、タクシー会社との提携も進め、将来的には、ユーザが必要とするさまざまな形態での移動手段の提供を目指したいとしている。

withcab のチームは現在ブートストラップモードで活動しているが、今後、サービスの開発を加速するために、レイターのシードラウンドかシリーズAラウンドでの資金調達を目指している。

Masaru IKEDA

Masaru IKEDA

1973年大阪生まれ。インターネット黎明期から、シンクタンクの依頼を受けて、シリコンバレーやアジアでIT企業の調査を開始。各種システム構築、ニッポン放送のラジオ・ネット連動番組の技術アドバイザー、VCのデューデリジェンスに従事。SI、コンサルティング会社などを設立。Startup Digest(東京版)キュレータ。

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