JR東日本 英の鉄道入札で最終候補に

JR東日本 英の鉄道入札で最終候補に
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JR東日本は、オランダの鉄道会社などと組んでイギリスの鉄道路線網の営業権獲得に向けた入札に参加し、最終候補となる2つのグループに選ばれたことが明らかになりました。安全で時間に正確とされる日本の鉄道の運行システムが、鉄道発祥の地イギリスでどこまで評価されるのか注目されます。
関係者によりますと、JR東日本は、大手商社の三井物産やオランダの鉄道会社と組んで、ロンドンと、イギリス中部の主要都市バーミンガムなどを結ぶ鉄道路線網の営業権をめぐる入札に参加しました。その結果、JR東日本などの企業連合は、現在、この路線の運行を行っているイギリスとフランスの鉄道会社の企業連合とともに、最終候補となる2つのグループに選ばれたということです。

イギリスでは、1994年の旧国鉄の民営化以降、鉄道の営業権を路線ごとに一定期間、鉄道会社に与える制度を採用していて、イギリス政府は数年ごとに入札を行って選定しています。2つの企業連合は、ことし11月末までに、通勤ラッシュ時の輸送人員増加への対応策や、サービスの向上策などをイギリス政府に改めて提示することになっていて、来年6月ごろにも、この路線で4年間運行にあたるグループが決まる見通しです。

営業権を獲得できれば、日本の鉄道会社としては先進国では初めてで、安全で時間に正確とされる日本の鉄道の運行システムが、鉄道発祥の地イギリスでどこまで評価されるのか注目されます。

来年6月ごろに決定

イギリスでは、1994年に旧国鉄が民営化され、鉄道のレールや駅などのインフラは公営企業が管理・運営する一方、鉄道の運行については地域や路線網ごとに民間の鉄道会社が行う制度を導入しました。

「フランチャイズ制度」と呼ばれるこの制度では、政府が路線網ごとに運行を行う鉄道会社を入札で選定し、鉄道会社には一定期間、その路線を運営する営業権が与えられます。この制度のもと、現在は16に分かれた路線網の運行に8社が参加していて、イギリスのヴァージングループをはじめ、ドイツやフランスなどの企業も参入しています。

JR東日本などが入札に参加している「ウエスト・ミッドランド」は、ロンドンや、ロンドンに次いで人口の多いバーミンガム、それにリバプールなど、中部の主要都市を結ぶ路線網で、年間6500万人が利用しています。9年前の2007年から、イギリスとフランスの鉄道会社が合弁で運行を行っていて、この合弁会社は、来年10月以降4年間の営業権をめぐる今回の入札にも参加して、JR東日本などの企業連合とともに最終候補の2つのグループに残っています。

入札では、収益計画などに加え、人口の増加で利用客が大幅に増えているバーミンガム周辺で、通勤ラッシュ時の輸送能力をどう高めるかや、チケットの種類を増やしたり、駅や列車内の通信環境を整備したりといったサービスの拡充策などが審査されることになっていて、来年6月ごろ、運行にあたる会社が決まる見通しです。

鉄道発祥の地で高まる評価

日本の鉄道技術への評価は、鉄道発祥の地イギリスで、高まりつつあります。

その象徴とも言われているのが、ロンドンと北部のスコットランドなどを結ぶ高速鉄道の車両更新事業を日立製作所が受注したことです。合わせて866両の車両製造、27年間にわたる保守点検、事業規模にして1兆円に上る大型受注の背景には、日立が、2009年から車両の納入を行ってきたイギリス南部の路線での実績がありました。

2010年にイギリスを大寒波が襲い、大雪などによってロンドンの近郊では、鉄道ダイヤの乱れが相次ぐ中、日立が新幹線で培った技術力で製造した車両は、大きな遅れもなく運行したのです。製造した車両の納期を確実に守る日本式のビジネススタイルも高く評価されていて、日立は、その後もイギリス国内の路線の車両製造などを相次いで受注。イギリス国内に鉄道車両を量産する新たな工場を建設し、車両の生産を始めています。

またJR東日本も、おととしイギリス政府が進めるヨーロッパ最大規模の新しい高速鉄道計画について、線路の整備や列車運行などの技術的な助言を行う契約を結びました。この高速鉄道計画は、鉄道輸出に力を入れる中国も受注を目指すなど、世界各国から注目されていますが、JR東日本は、まずは既存の路線で営業権を獲得して実績を積み上げ、高速鉄道計画の受注にもつなげる狙いがあると見られます。

JR東日本としては、東京をはじめ首都圏の複雑に入り組んだ路線網の運営や、新幹線の運行で培った安全で時間に正確な鉄道輸送システムをどこまでアピールできるかがポイントになりそうです。