1966年、
アポロ誘導コンピューター(AGC)は、月面着陸の道を切り開いた。しかし、そんな立役者がその後何十年も、スクラップの山の中に放置されていたのだ。
AGCは、1966年のアポロAS-202ミッションで、初めて宇宙へ打ち上げられたコンピューターだ。周回軌道内外でロケットを誘導して、月へのミッションを見事に成功させた。世紀の大冒険の草分けとなったコンピューターなので、さぞかしどこかの博物館に後生大事に所蔵されているかと思いきや、実はそうではなかった。
なんとこのコンピューター、つい最近まで誰にもかえりみられることなく、アメリカ、テキサス州ヒューストンにある倉庫のスクラップの山の中にひっそりと放置されていたのだ。
それがこのたび、南アのツワネ出身、自称"生涯ハッカー"のフランソワ・ローテンバッハによって日の目をみることになった。彼は、このコンピューターがAGCであることを特定して確認しただけでなく、修理してAS-202ミッションで使われていたソフトを復旧したのだ。
Apollo Guidance Computer - Physical inspection
AS-202ミッションは、来たるアポロ計画に使われる装備を試験するための無人弾道飛行だった。1966年8月25日にフロリダ半島のケープカナヴェラルから打ち上げられ、宇宙まで飛んで太平洋に落下後、空母によって回収された。
しかし、その後どうなったか?
未来のミッションに影響を与えたハードウェアとソフトウェアだというのに、その回路やモジュールなどの部品はゴミの山に埋もれることになってしまった。この金属くずの山は、ヒューストン在住の匿名希望の男性がオークションで競り落とした。
ローテンバッハは、AGCのことを知って興味をもち、自分のこれまでの思い込みに疑問を抱くようになった。「ぼくたちのほとんどは、AGCはプログラミングできる基本的な計算機よりも劣っているという間違った認識をもって育った」とローテンバッハは言う。
「でもこれはまったく間違っていることがわかった。AGCは実はとても優秀なコンピューターなんだ」ローテンバッハは、世界中のAGC専門家の助けをかり始めた。まもなく、持っているスクラップの山の中から、歴史的な宝を見つけ出したというヒューストンのコンピュータおたくから連絡をもらった。
「この男性は、手持ちのガラクタをeBayで売りさばこうとしていたらしい。すると、ある日突然FBIがやってきて、彼がどこでこれを手に入れたかを知りたがったという。彼が当時の納品書を彼らに見せると、そのまま立ち去ったそうだ。彼は怖くなって、自分がなにを持っているか、誰にももらさないよう秘密にしていた」
しかし、この革新的コンピュータのためにわざわざ南アフリカからヒューストンにやってきたローテンバッハに対しては、男性は詳細を明かしてくれた。
彼はその後、南アフリカのローテンバッハの作業場にメモリーモジュールを送ってくれた。先週、ローテンバッハは、ネットで自分が発見したことを投稿し始め、届いたモジュールを箱から取り出す場面を撮影した動画も作成した。最新機器ではなく、歴史的な技術を公開するために。
ローテンバッハのおかげで、この偉大な歴史的コンピュータは、カリフォルニア州アラミダにある航空母艦ホーネット船舶博物館に展示されている。ソフトのモジュールがどうなったのかについてはなんのコメントもないが、ローテンバッハがこれらをいじっている姿を見るのは、なんとも誇らしい。
「これは集積回路やマイクロチップを使った世界初のコンピューターです」ローテンバッハは、厚みのある黒い棒状のモジュールをひとつを持ってくると、カメラの前に近づけて言う。NASAのシリアルナンバーが入っているのがはっきりわかる。「宇宙で初めて使われたコンピュータのまさに現物なんですよ」
Apollo Rope Memory Modules (Part 1 - Introduction)
Apollo Rope Memory Modules (Part 2 - Construction)
via:hackaday、atlasobscura、memeburnなど、/ translated konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
こういう浪漫もいいな
2. 匿名処理班
ハッカーというよりDIYerでは。
3. 匿名処理班
ホントに月面着陸したのか?
2回めは何故にしない?
4. 匿名処理班
ぜってー月面着陸なんてできないだろw
ぺらっぺらの宇宙服で放射線降り注ぐ大気のない月面歩くなんて3分で全身にガンできるとおもうよ
5. 匿名処理班
わーお
こういうの好きー
6. 匿名処理班
※2
ウィキペディアには、
>主にコンピュータや電気回路一般について常人より深い技術的知識を持ち、
その知識を利用して技術的な課題をクリア(なかったことに)する人々のこと。
って書いてあるから、ハッカーで間違いないみたいよ。
7. 匿名処理班
※3
行ったって金にならないもん
掘り返してなんやかんやしてもいいならアレだけど
表も裏も画像、映像で見れちゃってるし、大気のある他の惑星よりは神秘性薄いじゃん
今は月より火星が目標だし
月の土地とかもう売りに出されてるけど、他の惑星なら開拓した国が開拓した面積全部領土にしてもいいんじゃない?
8. 匿名処理班
※3
6回も行ってらもう行く気起こらんやろ
9. 匿名処理班
※3
>ホントに月面着陸したのか?
望遠鏡で旗らしきものが発見されてる。
>2回めは何故にしない?
資源も何もないからアメリカにとってはもう興味が無い。
代わりに火星でキュリオシティーがあちこち走り回ってる。
しかも中国とか日本も月面に行ってる。
10. 匿名処理班
いや昔ながらの狭義的なハッカーよ
クラッカーと混ぜないで!
11. 匿名処理班
フランソワって事は、ビバップのエドの元ネタ?
12. 匿名処理班
あちらさんってよくこの手の実験機材ポイポイ売却する
以前だと名の知れた宇宙実験使用品とかシャトル部品など
運がいいとTVに出れる貴重なお宝が買えるかもね
13. 匿名処理班
※3
「一人のアメリカ人を再び月面に送り込むことで、3億1千万人のアメリカ人にどんな恩恵がもたらされるのです?」
という問いに対する答えが存在しないからさ。
14.
15. 匿名処理班
これは(当時としては)メチャお金掛かっただろうなぁ
月にはチタニウムなどが豊富に有るのでは?と期待されていたみたいでしたが、後に地球にも大量に存在する事が判明したというオチが付いたけど、何もノウハウが無い時代に月に行った、行けたという偉業は決して褪せる事無く後世に語り継がれる事でしょう。
ただ、莫大な費用を掛けたが、あまりにも費用対効果が無さすぎた。NASA過ぎたんだね。
個人的には機体の7割が故障した状態で無事に戻って来た13号、オデッセイミッションが好きですね
16. 匿名処理班
宇宙で初めて使われたコンピュータはどうだろう?
人類初めてじゃないのだろうか・・・
17. 匿名処理班
2050年。 太陽風の暴走で地球上のすべてのPCが停止、
再起動が不可能となり人類は滅亡の淵へ立たされる___
しかしその時、100年に近い時を超え ただ一つ起動可能なコンピューターが
エンジニアたちの手により蘇る。
その名はAGC。 このコンピューターに希望は託された。
かつて英雄たちを月に送り届けたあの偉大なミッションの様に____!
18. 匿名処理班
スミソニアンの倉庫には人類の財宝が無造作に積まれて日の目を見ずに居る
って都市伝説を着たことがあったが、事実だったんだな
19. 匿名処理班
※18
なんかギルガメシュの宝物庫みたいですね
20. 匿名処理班
Block Iは3入力NORゲートICを4,100個使っているので、トランジスタ数にすると24,600。同じ16ビットのマイクロコンピュータ80286はトランジスタ134,000個を1チップに集積している。
メモリはわずか288KバイトROMと4KバイトRAM(コアロープメモリと磁気コアメモリで共に非半導体メモリ)だが、当時としてはかなりの大容量。
磁気コアメモリは見たことがあるけど、コアロープメモリは見たことないな。やはり時代を感じる。