英政府は、7月末に計画の見直しを唐突に発表したヒンクリーポイント原子力発電所の建設を承認した。これは、テリーザ・メイ氏が首相に就任後下した最も重要な戦略的決定であり、同国の将来の競争力だけでなく、中国とフランスとの関係にも影響してくるものだ。
このプロジェクトは、180億ポンド(約2兆円)という巨額を投じて、フランス電力公社(EDF)が、中国核工業集団(CNNC)と中国広核集団(CGN)との共同出資で建設するものだが、残念なことに、メイ首相は金銭的な条件を見直す機会を見送った。その一方で、基幹インフラへの新たな外資規制計画を発表した。これがヒンクリーポイント原発に及ぼす影響は不確定だ。新規制が厳しすぎれば、同プロジェクトに疑念が生じかねない。
ヒンクリーポイントの原発計画は、古い石炭火力発電所が陳腐化したことから、「原子力ルネサンス」構想促進の一環で、10年前に持ち上がった。その当時は現在よりも魅力的に映った。他の電力資源より優位な競争力が期待されたため、英国にとり、厳しくなる一方の排出規制目標の達成に貢献するとも考えられた。10年がたち、風力や太陽光、天然ガス発電のコストが軒並み下がる中、ヒンクリーポイント原発の電力の(買い取り)価格はその4倍近くにも達する。EDFは現在の英国の電力卸売料金の2倍以上を徴収し、その額は35年間はインフレ調整され、保証される取り決めだ。よって、問題は、ヒンクリーポイント・プロジェクトが最善の費用効率で英国のエネルギー需要を満たすと同時に、排出量削減目標を達成できるかどうかだ。
メイ首相は、英国の電力需要の約7%を満たすことになる同原発のコストや、未立証の導入予定の技術の可否、投資する中国企業の役割などの懸念に関して再検討を命じた。こうした同首相が命じた一連の修正はすべて英国の安全保障に焦点を当てている。基幹インフラへの外資導入に関する新たな法的枠組みはまだ明確でないが、その一環として、英政府は今後の原発プロジェクトにゴールデンシェア(黄金株)を保有する。これで、例外なく、英政府の同意なしに原発運営企業の大量の株式の売買は行えなくなる。
中国政府がこれらよりも懸念しているのは、英政府が今後の原子力プロジェクトに関して実施する、英国の安保分野への精査についてであろう。英国にとってはもっともな原則に立脚したものだが、その詳細はまだ不透明だ。