WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチが16日、エディオンアリーナ大阪で行われ、挑戦者の同級5位で元WBCバンタム&フェザー級王者の長谷川穂積(35=真正)は、王者ウーゴ・ルイス(29=メキシコ)が9回終了後に棄権したためTKO勝ちし、3階級制覇に成功した。
幕切れはあっけなくやってきた。10回の開始に向けてリング中央に向かった長谷川に対し、ルイスは椅子に腰を落としたまま。会場があっけに取られる中、棄権を申し出て、試合終了となった。この結果、長谷川が国内最高齢での世界王座奪取に成功し、国内2番目の記録となる5年5か月ぶりの王座返り咲きを果たした。
勝負が決まるほんの数分前には、会場の誰もが最悪の結末を予感していた。左をもらってバランスを崩しかけた長谷川はロープを背負い、ルイスの連打を食らう。4回終了時の公開採点では2―1とリードしていた王者が、8回終了時に長谷川の2―1リードとなったことで、一気に勝負を決めに来たのだ。
だが、連打を浴びながらも「攻めが雑だから、チャンスだと思った」という長谷川も的確に左右のパンチをルイスに打ち込む。
ここをしのいでリング中央に戻ると、左を打ち込む。驚異的。いや、生身の人間とは思えないような粘りにルイスはついに白旗。常に試合を優位に進めていたと思われたが、ルイスは試合後、救急車で病院に直行するほどのダメージを負っていた。
1か月半前の練習中、長谷川は左手親指を脱臼骨折し、すぐさま手術するアクシデントに見舞われた。だが「おかげで右を徹底的に練習できたし、試合後に『あれがあったから勝てた』と言えるように、と考えた」と、試合をやめる考えなどみじんもなかった。
長谷川は試合後のリング上で「約束だから、いいですか?」と話すと、中学2年になった長男・大翔君に抱え上げてもらい、満面の笑みを見せた。
希代の名王者が、ついに世界の舞台に戻ってきた。
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