世界5位の取扱量を誇る釜山港。韓進海運の破綻で顧客を日本などに奪われるとみられている(ブルームバーグ)【拡大】
釜山市は長年、韓国の歴史の中で戦略的な役割を果たしてきた。日本に最も近い港として両国の貿易の中心地だった釜山港は、1876年に韓国初の国際港として開港した。
朝鮮戦争では国連軍から大量の兵力・物資の供給を受けた最後の砦(とりで)だった釜山港は、朝鮮戦争戦後も産業化による繁栄が続いた。人口約350万人の同市はアジア最大の国際映画祭を開催し、五輪開催地への立候補も検討している。
◆労働者に恩恵少なく
釜山市では以前から主力産業の造船業の低迷に悩まされてきた。巨済市に拠点を置く世界2位の造船会社、大宇造船海洋は労働力を20%、生産能力を30%削減する見通しを示しており、釜山港の企業団体は韓進海運が救済されなければ同市でさらに1万1000人が失業する可能性があると予想している。
造船業の衰退による影響を巨済市で目の当たりにしたタクシードライバーのクォン・オクボンさん(68)は「失業者は1万1000人を上回るだろう。造船会社の経営悪化で多くのレストランやパブが廃業した。韓進海運が廃業すれば釜山には大企業がいなくなる」と話した。
世界のサプライチェーンが1週間以上にわたり混乱した後、週末を前に筆頭株主の大韓航空が600億ウォン(約55億円)の資本注入に合意したことは韓進海運にとって朗報だったが、コンテナ船の帰航を待つ数千人の釜山の港湾労働者には恩恵は少ない見通しだ。