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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

冷血の王

作者:ねむみ丸
ここに記そう。冷血の王と夜明けの勇者の物語を。
第2紀720年、恵雨の月。始まりを告げるこの季節に、やはり始まりは訪れた。それは、歓迎されざる、しかし運命的な逃れられない始まりであった。ヴァレンウッド鉱山は隆盛甚だしい銀鉱山であった。現在においては人の全く見られない土地であるハイロックにありながらも、その一帯は鉱山労働者で賑わっており、麓には一個の街すらも形成されているほどであった。
ここにノルドの青年が1人、出稼ぎのやって来た。名前をネロといい、数年前に両親を亡くしてた。彼は、生来幸運の星の下におり、多くのことを望む強欲者でもあった。しかし、両親を亡くしてからというもの、彼の幸運も陰りを見せ始めていた。しばらくは農業をして過ごしていたが、それもうまくいかなくなり、そこにヴァレンウッドの労働者の募集を聞き、他の労働者たちとともに氷海を渡った。彼らの多くは海の底に沈んだが、彼自身は幸運にもハイロックにたどり着くことができた。
ヴァレンウッドにおいての彼の功績は目を見張るものであった。彼は人一倍つるはしをふるい、その努力に呼応してか、それとも彼自身の幸運によるものか、彼の掘り当てた銀の量は他のものよりも抜きん出ていた。その甲斐あってか、彼の功績は運営部の耳にも届き、一部の労働者の統括を任されるほどになっていた。収入は安定したが、しかし、彼の強欲はさらに多くの金銭を求めた。彼は謙虚である演技をした。つまり、他の労働者に混ざり、銀を掘り、荷車を引き、夜には管理しているグループに酒を振る舞った。その強欲が彼自身にも、ヴァレンウッドにも災いをもたらした。
ある夜、酒盛りの席において、彼が少し離れたところに座っていると、1人の労働者が近寄ってきた。
「旦那、随分と稼いでいるようで。へへ、大したことじゃあございませんがね、そんなに稼いでもソブンガルデには一銭も持って行けやしませんぜ。何、わたしゃ何も金の無心にきたんじゃありませんで。そんなに稼いでも死んじまったらどうしようもない、なら死ななきゃいい、とね。ちょうど不死の法を知っておりまして、ちょいと飲み比べでもして旦那が勝てば特別に教えてもいいと思いましてね。」
ネロにとって、それは甘言であった。彼も心の奥底で思っていた。このまま金を稼いでばかりで何になる、使わなければ何にもならないではないかと。しかし年は40にも近く、スカイリムに戻ることもなかなか難しくなってきていた。ネロはその労働者の言葉を受け入れ、勝負を始めた。その日の酒はヴァレンウッドでも強いもので、彼らが始める頃には宴会のようになっていた。1杯、2杯、3杯、4杯…。飲み進めるうちに2人の視界はぼやけてきていた。囃し立てる周りの声も遠ざかり、赤々と火照った顔をしていたが、彼らも意地の張り合い、先に倒れてなるものかともはや気力だけで飲んでいるようなものだった。数えること19杯。ついに勝敗は決した。ネロは負けてしまった。
ネロは負けてしまったが、彼の強欲はそれを許さなかった。彼の言う「不死の法」とは吸血病やウェアウルフ化では無い、もっと新しい類のものであろう、そして、それはリスクが少ないのであろう。なんとしてでも手に入れたかった。寝ても覚めてもそのことばかりを考えていた。
ついにネロは盗みを働いた。話を持ちかけてきた男の荷物を漁ったのだ。その男はサム・グウェヴェンという名であることを初めて知った。サムの荷物を漁り、「閲覧禁止」と題字された本を引っ張り出した。これこそが禁断の法に違いない、真に神々に近づく法に他ならないと確信を得たネロはいてもたってもいられずに本を開いてしまった。
瞬間、ネロの自我は失われ、次に目覚めた時にはヴァレンウッド鉱山は血の川が流れ池となり、銀鉱石の代わりに死体の山が築き上げられていた。
ネロは確実に不死の存在となっていた。しかし、それと同時に、太陽を忌み、人の肉を貪り、地に這いつくばり血をすする醜い存在となっていた。

しばらくの間は彼の腹は満たされ、喉は潤されていた。彼の悪名はタムリエル中に届き、腕に覚えのある冒険者、吸血鬼ハンター、不死の存在を憎むものなどが彼に挑み、そしてことごとくがその姿を見る前に、おびただしい数の屍の軍団に歩みを止めさせられたのだった。その無慈悲なまでの圧倒的絶望により、彼は冷血の王とまで呼ばれるようになった。

第3紀19年。ついに冷血の王は近隣諸国に侵攻し始めた。ついに肉は腐り、血は乾き、王の腹は満たされなくなったからである。
さて、ここにもう1人、ノルドの男がいた。彼の名はサンシャイン・ミタス。その名前は冷血の王とともにタムリエルに轟き、向かうところで数々の勝利を収め、不敗の猛勇と呼び声も高かった。また、彼自身はステンダールの信者であったが、メリディアに気に入られており、彼女の魔剣・ドーンブレイカーをもって、不死の存在を抹殺することも承っていた。
これにおいても、メリディアによりヴァレンウッド鉱山に導かれていた。ミタスは、そのおびただしい数の屍の軍団を目にしたとき、これはこの世にあってはならぬ存在であると、この群れの長の魂に必ず平穏をもたらさねばならぬと理解した。ひとまずの腹ごしらえを済ませた後、彼は颯爽と不死の軍団の只中へと突進して行った。不死の者共を浄化する夜明けの剣の前には屍の雑兵など藁も同然であった。いかに長い矢の雨であろうと彼に体に突き立つことはなく、刃の嵐が吹き荒れようとも彼のその肉体に傷の一つもつけることはなかった。
まるで一筋の光のように兵をなぎ倒し素早く冷血の王の前に挑んだ彼を一瞥し、王は気怠げに玉座を立った。その隙をつきミタスはドーンブレイカーを打ち据えた。一瞬の間に勝敗は決したかに見えた。だがどうしたことか、彼の剣は王の持つ剣によりその勢いを完全に削がれてしまった。ミタスの経験が告げていた。ここでひいてはやられると。今までの蛮勇のもの達の二の轍を踏んでしまうと。彼はさらなる追撃を加えた。一撃、二撃、一撃、二撃。彼は剣戟の一つ一つに万力を込めた。王の剣を折るように、王の腕を払うように、王の頭蓋を割るように、王の体を裂くように。しかしそのすべては王によりいなされてしまった。
時はすでに太陽が沈み、月が頂点に昇る頃でった。吸血鬼がその力の限りを持ちうる時間であった。
一見するにはミタスが優勢のように見えた。しかし、王の身のこなしは踊るようであり、遊ぶようであった。ミタスの剣戟は衝撃となって山を襲った。彼が一振りするごとに山は削れ、岩は崩れ、周囲の屍たちは吹き飛んだ。それほどまでに必死の彼の剣戟も、王には届かなかった。対して王の顔に焦りは見えず、冷静に、冷酷に、着実にミタスの剣戟を躱し、体に無数の傷をつけていった。鎧の所々は欠け、最後には防具としての用を果たさなくなっていた。
ついに決戦の時がきた。ヴァレンウッド鉱山の頂上にて2人は対峙していた。ミタスはその膝を地に着き、気力のみで意識を繋ぎ止めている状態であった。視界は霞み、頭はぼんやりとしていたが、ただ目の前の悪鬼を成敗する、そのことのみは確固として心に繋がれていた。対する冷血の王は、全くの無傷、冷静そのものであった。力あるものが力なきものを見下すように、血を這う虫を眺めるかのように冷ややかな目をミタスに向けていた。
ついに王がその剣を振り上げミタスの心臓をめがけて振り下ろしたその時である。一条の光が差した。夜明けである。暖かな光が2人を照らし出した。その懐かしい光に王は一瞬たじろいだ。その一瞬で十分であった。ミタスは瞬間、一閃を描いた。その一撃は剣を砕き、腕を裂き、確実に王の首をはねた。王の亡骸は炎に焼かれ灰となった。激戦を制したのは我らが勇者、サンシャイン・ミタスであった。

ミタスの体は無数の傷が痛々しく残っていたが、メリディアからの報酬として傷は癒され、近くの村まで運ばれた。3日の間彼は目を覚まさなかったが、村人たちの篤い看護のおかげで目を覚ました時には腹の虫が大きく鳴くほど健康になっていた。それから後、ヴァレンウッド鉱山は閉鎖され、山賊さえも近寄らなくなった。これにて冷血の王の脅威はムンダスから完全に消え去ったのであった。
以上が私が知る全てである。願わくば、彼らの魂がソヴンガルデへと届いたことを願わん。

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