香港の新議会 中国は新勢力と対話を
中国・香港特別行政区の議会である立法会(定数70、任期4年)の選挙が9月上旬に行われ、独立志向を持つ「本土派」ら新興の反中勢力が議会進出を果たした。従来の民主派と合わせ、重要法案を否決できる3分の1の議席も確保した。
「1国2制度」の形骸化に反発した香港住民の意識が選挙結果に表れたといえる。10月から新議員による議会が始まるが、中国や香港当局は強圧的な対応を避け、新しい勢力とも対話し、意思疎通を図るべきだ。
香港では一昨年、行政長官選挙の制度改革案をめぐり、中国が民主派を排除する方針を打ち出したことに学生らが反発し、大規模なデモ隊が香港主要部を長期間占拠する「雨傘運動」が起きた。
1997年の中国返還後、50年間は香港の高度な自治を保障するという「1国2制度」が揺らぎ、中国の介入が強まったことへの危機感の表れといえた。しかし、普遍的な民主選挙を求めた運動は実を結ばず、強制排除されて終結した。
香港の民主派は89年の天安門事件を契機に中国全体の民主化を求めて立ち上がった世代が中心だった。しかし「雨傘運動」に参加した10代、20代の若者には中国への帰属意識が薄く、香港こそ自分の「本土」と考える傾向が強い。
こうした若い世代の活動家らは従来の民主派に失望してたもとを分かち、自ら政党を作る動きが広がった。香港当局は独立の主張が明確な一部政党からの立候補を受理しないなど抑え込みを図ったが、複数の新党が議席を確保した。「雨傘運動」リーダーの一人、羅冠聡(らかんそう)氏(23)は史上最年少で当選した。
香港では昨年来、中国に批判的な本を出版していた書店関係者が相次いで失踪する事件が起き、国際的な関心を集めた。関係者の一人は中国当局に拘束されていたことを明らかにし、違法な言論弾圧、人権侵害と批判が高まった。この事件も選挙に少なからず影響を与えただろう。
親中派は半数を超える40議席を確保したが、直接選挙枠が定数の半分に過ぎず残りが親中派に有利な間接選挙枠になっているからだ。得票率では民主派に及ばない。将来、全面的な直接選挙が実施されることになれば、親中派主導による議会の安定は崩れてしまう。
中国政府は香港独立の主張が香港基本法に反し、国家主権を害すると「本土派」の動きに警戒を強め、取り締まりの可能性にも言及しているが、力で封じ込めようとすれば再び、社会の混乱につながりかねない。むしろ「1国2制度」への信頼が失われていることを自覚し、香港への対応を見直すべき時ではないか。