青野尚子の「今週末見るべきアート」|エロティシズム溢れる「快楽の館」

瀟洒な美術館が、エロティシズム溢れる写真で埋め尽くされている。原美術館で開かれている話題沸騰の篠山紀信展「快楽の館」で篠山紀信自身が語りました。

受付近くの展示室でジャンプするモデル。この写真もまさにこの場所に展示されている。 篠山紀信「快楽の館」2016年(c)Kishin Shinoyama 2016

「原さん、新人の展覧会やりませんか」。篠山紀信が原美術館館長の原俊夫にそう言ったとき、原は篠山が自身のことを言っているのだとは思わなかったそう。そんな茶目っ気のあるやりとりをきっかけに、原美術館から篠山へ展覧会開催を打診し、この個展は始まった。展示は美術館でヌードを撮り、その写真をその美術館で見せるという前代未聞のもの。登場するモデルは壇蜜ら33人、それを美術館が閉館している展示替え期間のわずか10日間で撮影したという力技だ。写真は原則として、それが撮影されたその場所に貼られている。大サイズの「シノラマ」もあり、かなりの迫力だ。

館の前にたたずむ着衣の男性とヌードの女性の組み合わせ。脳裏に思わず淫靡なストーリーが浮かぶ。 篠山紀信「快楽の館」2016年(c)Kishin Shinoyama 2016

篠山はかつて、「美術館は作品の死体置き場だ」と言ったことがある。

「そんなこと言ったから、どの美術館も頼みに来なかった(笑)。僕がなんでそう言ったかというと、作品というのは自分のアトリエで作っても、美術館ではどの壁面に飾られるかわからない。額に入れられて『ありがたく鑑賞するように』という態度で飾られるのも気に入らなかった。それに僕のように長くやってると、総集編とか回顧展みたいになっちゃって『あいつも一丁上がりだな』と思われるのもしゃくだった」