「三酔人経綸問答」の直筆草稿を発見
「国文学研究資料館」(東京都立川市)は13日、明治時代の自由民権運動の理論的指導者、中江兆民(ちょうみん)の代表的な著作「三酔人経綸問答(さんすいじんけいりんもんどう)」の草稿が見つかり、兆民直筆の推敲(すいこう)や書き込みの跡が多数確認されたと発表した。
「三酔人経綸問答」は、フランスの思想家、ルソーの社会契約論を紹介し「東洋のルソー」と呼ばれた兆民が、1887年に出版した。民主主義や海外進出などをめぐる政治的考えの異なる3人の登場人物が、世界の中での日本のあり方を論じる哲学書。現代語訳も出版されている。
草稿は今年1月、同館研究員が東京・神田の古書店で発見。2分冊114ページあり、草稿を毛筆で直した筆跡について、同館の谷川恵一教授が兆民の直筆と断定した。書き直しや言葉の使い方、構成の変化などから兆民の思考の変遷もうかがえる貴重な資料という。
谷川教授は「この時代の著作の草稿が発見される例はほとんどない。長年読み継がれた文章に誤植などが見つかる可能性もあり、極めて貴重だ」と話している。
草稿は15、16両日、同館で一般公開。10月8日から12月25日まで、兆民の出身地・高知市の「市立自由民権記念館」で公開される。【黒川将光】