ヒラリー・クリントン氏は11日に倒れかけた後、速やかな回復を願うメッセージをたくさん受け取った。一つは思いも寄らぬ人からだった。何カ月も前からクリントン氏のスタミナに疑問を投げかけてきた対抗馬のドナルド・トランプ氏だ。
トランプ氏はフォックス・ニュースで「すぐに良くなることを願っている」と語った。その数分後には、トランプ陣営の選挙対策本部長を務めるケリーアン・コンウェー氏(49歳)がMSNBCテレビで「具合が良くなることを願うというトランプ氏の言葉を私も繰り返したい」と述べた。
だが、コンウェー氏がトランプ氏の言葉を繰り返す以上に、トランプ氏のほうが彼女の言葉を繰り返していた。トランプ氏が最近、「ブライトバート・ニュース」の会長で扇動的なスティーブン・バノン氏を起用して選対本部を刷新したとき、多くの人はトランプ氏が世論を二分する発言を続けるつもりだと考えた。しかしながら、女性向けに政治家のメッセージを調整する世論調査専門家のコンウェー氏が強力な代弁者として頭角を現した。トランプ氏を多少おとなしくさせた唯一の人物といえる存在になっている。
■後悔の弁を言わせた手腕に評価
「彼女はある程度、トランプを制御した」。共和党の世論調査担当者、フランク・ランツ氏はこう話す。「ドナルド・トランプが自らを最大の敵にさせないようにすることは何でもプラス材料だ。それが成功の尺度であれば、彼女はA評価に値するだろう」
コンウェー氏はさまざまなレベルで成功を収めた。集会では台本から逸脱しないようトランプ氏を説得し、原稿を映し出すプロンプターを使わせた。コンウェー氏はトランプ氏に、アフリカ系米国人とヒスパニックを支援することについて語るよう促した。たとえ批判的な向きが、このことがトランプ氏の言葉遣いに嫌悪感を抱く共和党員を取り込もうとしていると見られても、である。コンウェー氏はこれまでより争点に集中し、侮辱を減らすよう働きかけた。何より驚いたことに、トランプ氏を説き伏せ、かなり物議を醸す発言の一部について、彼らしからぬ「後悔」の弁を述べさせた。
コンウェー氏を支援者の一人に数えたテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)の元報道官、リック・タイラー氏は、コンウェー氏は「一分のすきもないプロフェッショナル」で歯にきぬ着せぬ人物だと言う。「トランプは恐らく、周囲の誰よりも彼女の意見を聞く。全体的に、トランプは以前より方針に沿っているように見える。脱線して不必要なニュースを作り出したりしない」
元弁護士で、大統領選挙で共和党選対本部を率いる初の女性であるコンウェー氏は、辛辣な選対本部長だったコリー・ルワンドウスキ氏や、庶民感覚がない前選対会長のポール・マナフォート氏と異なる影を投げかける。感じの良い態度と前任者たちほど攻撃的ではないスタイルで、トランプ氏を売り込むテレビ出演での姿が称賛を浴びてきた。
だが、世論調査の専門家としての実績はまちまちだ。これまで、ニュート・ギングリッチ元下院議長や俳優の故フレッド・トンプソン氏など、敗北した大統領候補数人のために働いた。2016年の予備選挙では、指名争いから撤退するまでクルーズ氏を支援する資金潤沢な政治団体を率いた。物議を醸した役割の一つは、ミズーリ州の上院議員候補、トッド・エイキン氏と協力したことだ。エイキン氏は、「合法的レイプ」の被害に遭った女性は、暴行の後に生殖過程が停止するために妊娠できないと主張した人物だ。