■卵子を経ずに子孫誕生、マウス実験で成功 イギリスとドイツの研究チーム [健康ダイジェスト]
イギリスとドイツの研究チームが13日、卵子ではない細胞の一種と精子を結合させ、新生児マウスを誕生させることに世界で初めて成功したと発表しました。
イギリスの科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表された研究論文によると、子供をつくるのに卵子を必要としないという魔術のような方法を通じて誕生したマウスは健康で、正常な寿命を持ち、さらに従来の方法で子孫をもうけることもできたといいます。
論文の主執筆者で、イギリスのバース大学のトニー・ペリー氏は、「胚発生が起きるように精子を再プログラム化できるのは、卵細胞だけだとこれまで考えられていた」と述べ、「精細胞によって受精した卵細胞しか、ほ乳類の生きた子供の誕生をもたらすことはできないという定説が、初期の発生学者らが1827年ころに、ほ乳類の卵細胞を初めて観察し、50年後に受精を観察して以来ずっと支持されてきた。しかし、我々の研究はこの定説に異を唱えるものだ」と続けました。
細胞には2種類のタイプがあります。卵や精子などの「減数分裂する」生殖細胞と、体の組織や臓器の細胞の大半が含まれる「有糸分裂する」細胞です。
ほ乳類の生殖には、結合して胚を形成するための卵と精子が必要とされています。しかし、研究チームは今回、マウスの子をつくるのに、減数分裂の卵細胞を用いず、「単為発生胚」と呼ばれる有糸分裂細胞の一種を使用しました。
単為発生胚は、極めて初期段階の単細胞胚で、受精を経ずに形成されます。今回の研究では、マウスの卵細胞を化学的に活性化して単為発生胚を作製しました。そして、この単為発生胚が2つの細胞に分裂する直前に、胚を受精させるための精子の核を胚に注入しました。
こうしてつくられた子供のマウスの生存率は、従来の方法でつくられた通常のマウスの4分の1でした。
研究はまだ初期段階とはいえ、将来的には、ほかの種類の有糸分裂細胞、例えば皮膚細胞などが、子孫をつくるために使われる可能性があることを示唆しています。そうすると、男性の同性愛者、高齢女性、不妊で悩む夫婦などが、両親のDNAを持つ子供をもうける可能性も開かれてきます。
トニー・ペリー氏は、「どの有糸分裂細胞でも、同じ方法で精子を再プログラム化できるようになれば、卵細胞は不要になるだろう」と語り、「これは、生殖に革命をもたらすかもしれない」と付け加えました。
現在のところ、単為発生胚を作製するには卵細胞を必要とします。ほ乳類では、単為生殖は自然に発生することはなく、単為発生胚が偶然に形成されたとしても、その成長過程で死んでしまいます。
トニー・ペリー氏は、「卵細胞から作製する必要のある単為発生胚を、将来的には複製することができるようになるかもしれない。これは卵細胞のこの機能が過去のものになることを意味する」と続けました。
2016年9月14日(水)
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