公明党 政権の偏り正す役割を
公明党代表選は山口那津男氏の無投票による5選が確定した。17日の党大会で正式に決まる。
自民党が参院でも単独過半数を27年ぶりに回復するなど、安倍内閣の下で公明党が発言力を確保する道は険しさを増している。だが、公明党は政権の偏りを正し、バランスを取る役割を忘れてはならない。
代表選では複数の候補が出馬せず、無投票で党首を決める慣例が踏襲された。山口氏は2009年衆院選で公明党が野党に転落した際に代表に就いた。安全保障、社会保障に詳しく、党内対立を際立たせず党を運営してきた。支持団体、創価学会も安定感を評価しての続投だろう。
今後2年の任期をまっとうすれば9年間、党首を務めることになる。今回の再選は自公両党が政権に復帰して約4年、山口体制で公明党がどれだけ政策に関与したかを点検する節目でもある。
消費増税をめぐり公明党が強く主張していた軽減税率は導入が制度化された。安倍内閣が格差是正を意識し始めるなど、経済政策では分配を重視する公明党の路線が一定の影響を与えたと言えよう。
だが、憲法解釈の変更や安全保障政策をめぐりタカ派色の濃い政権の「歯止め役」を果たしたかは疑問符がつく。集団的自衛権行使を認める憲法解釈変更をめぐっては、山口氏自身が慎重姿勢を事実上転換した。
国政選挙のたびに安倍晋三首相の1強構図は強まっている。公明党に対し「どうせ連立は離脱できない」と足元を見るような空気が政界には広がりつつある。
とりわけ、首相が在任中の実現を目指す憲法改正問題で公明党が担う役割は大きい。
同党は改憲について現行憲法を維持した上で、改正が必要な場合は新たな条文を付け加える「加憲」方式を主張している。9条についても1、2項の条文改正は認めない立場だ。人権の拡大や、地方自治の拡充などを重点項目にあげている。
一方で、自民党の憲法改正草案は「公の秩序」を強調し、復古的な基調に貫かれるなど問題の多い内容だ。「改憲勢力」とくくられても、憲法観は水と油と言っていいくらいに違う。自民党案をベースとした改憲論議には同調できないことをもっと明確に主張すべきだ。
野党でも日本維新の会は憲法改正に積極姿勢を鮮明にするなど、安倍政権に協調的だ。今後、自民党が維新との連携で公明党をけん制しようとする展開もあり得よう。
状況は甘くない。党大会で山口氏は目指す政策の優先順位や譲れない一線など、政権のバランス役としての決意を具体的に語ってほしい。