香港の立法会(議会)選挙で民主派が躍進した。議席を得た若者たちは「市民は自分で未来を決める」と意気込むが、真の民主化実現には過激な行動や主張に走らず、対話路線を貫いてほしい。
投票率は一九九七年の中国返還以降で最高の58%を記録した。国際公約であるはずの香港の「高度な自治」が、中国によって踏みにじられているという香港住民の危機感を反映した数値であろう。
香港紙の色分けによると、親中派が三議席減らし四十議席にとどまったのに対し、民主派は三十議席を得た。数の上では依然親中派が過半数を占めるが、民主派は香港政府が提出する重要法案を否決できる三分の一以上を確保したことから、事実上の勝利といえる。
民主派躍進の最大の理由は、民主化に消極的な中国への反発である。大陸で禁書とされる共産党批判の書籍などを発行した書店関係者の失踪事件に、多くの香港住民は中国の関与を疑っている。
注目すべきは、香港独立も将来の選択肢に入れる「自決派」「本土派」といわれる若者たちが六議席を得たことである。
中国のふるまいを覇権的だと感じ、格差社会の閉塞(へいそく)感に悩む若い有権者が自決派や本土派の躍進を支えたといえる。中国政府の意を受けた香港政府が一部の本土派の立候補を取り消したことも住民の反感を招き、本土派に追い風になったといえる。
「雨傘運動」の挫折で穏健な民主派への失望感が広がり、多くのベテラン民主派議員が落選した。
民主派内の若返りは政治の活性化をもたらすと期待できるが、本土派とされる勢力が、独立のためには暴力すら容認する過激な主張をしているのは危険すぎる。香港の若い世代は、中国が天安門事件で学生らの民主化要求を武力弾圧したことを忘れてはならない。
自決派は「一国二制度」の将来像を住民投票にかける考えを示した。民主派内の主導権を握った若者たちは、民主化を進めるための政策立案や中国・香港政府との対話に努力してほしい。
中国は立法会選の結果に目を凝らし、干渉を強めるほど香港の民意が離れていく現実に謙虚に向き合うべきであろう。
一党独裁の中国のもとで民主的な香港を輝かせ続けるための先人の知恵が「一国二制度」であった。「一国」を声高に唱え、「二制度」を踏みにじるのは中国にとっても得策ではない。
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