表ではきれいなことを言いながら、裏ではまったく違う振る舞いをする。もちろん説明は一切ない。東京都が豊洲新市場を舞台におこなっていたのは、信じがたい背信行為である。

 築地からの移転工事をめぐって、主な建物の地盤に、土壌汚染対策として専門家から求められていた「盛り土」が施されていなかったことが判明した。

 新市場が稼働し、多くの人の目にふれれば簡単にばれることが、なぜまかり通ったのか。いったいどの部署の誰が、いつ、どのような理由に基づいて判断したのか。それを承認し、状況を把握していたのは誰なのか。おかしいと思い、声をあげる人はいなかったのか。

 いま都庁に突きつけられているのは、1300万人の都民の生活や健康をあずかる巨大組織が、正常に機能していないのではないかという根源的な疑問である。就任したばかりの小池都知事は経緯を検証すると表明した。当然の対応である。

 豊洲新市場は東京ガスの工場跡地につくられ、土壌や地下水の汚染が懸念されていた。

 都の委嘱を受けた専門家会議は、建物が建つところもふくめ用地全体を地下2メートルまできれいな土壌に入れ替え、さらにその上に2・5メートルの盛り土をするように提言した。

 ところが都は設計段階で、建物の下には土を盛らず、コンクリートで囲んだ空間を設けることを決めた。市場の約3分の1の地下が空洞になった。

 配管などを通すために、そうしたほうが便利だと考えたという。ならば有識者や都民に丁寧に説明し、理解を得るのが筋だろう。専門家会議の最終報告書も、地下利用をいっさい禁じているわけではない。

 だが都は「専門家会議の提言を確実に実現しています」と言い続けてきた。そもそも築地から豊洲への移転には賛否があったが、今回の事態に賛成派からも怒りの声があがっている。

 都は、建物の基盤となるコンクリートには土壌汚染防止の基準を満たすだけの十分な厚さがあり、問題ないと言っている。安全性の確認は喫緊の課題だ。

 深刻なのは、政策を進めるときの前提となる「信用」の失墜である。

 2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、都の前には解決すべきたくさんの課題がある。だが多くの都民は、いまの都庁にそれを推し進める能力があるのか、大きな懸念を抱いている。監視機能がないことが露呈した都議会ともども、再生を急がなければならない。