高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)について、政府が廃炉も含めた検討に入った。

 速やかに廃炉を決断すべきだ。もんじゅはこの20年余り、ほとんど運転できていない。安全対策には数千億円が必要とされ、仮に運転にこぎつけても高くつく。おのずと結論は出るはずだ。

 使用済みの核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを燃やすのが核燃料サイクルだ。その中核に位置づけられ、使った以上のプルトニウムを得られる高速増殖炉は「夢の原子炉」とも呼ばれた。

 だが、もんじゅは1995年に冷却材のナトリウムが漏れる事故を起こし、その後はほぼ止まったままだ。2012年には約1万点もの機器の点検漏れが発覚。原子力規制委員会は運転再開準備を禁じ、昨年11月、現在の日本原子力研究開発機構に代わる運営主体を探すよう、所管の文部科学相に勧告した。

 文科省は、機構からもんじゅに関わる部門を分離して保守・管理を担わせる案を探ってきたようだが、そんな看板の掛け替えは許されない。政府内で疑問や批判が出たのは当然だ。

 高速増殖炉については、実用化後の利用者と目される電力業界に開発を急ぐ声は聞かれない。燃料製造に手間がかかり、ナトリウムを使う技術の確立も必要で、コストがかかる。一方、電力業界が再稼働を急ぐ通常の原発は、燃料のウランの需給が緩んでおり、価格は安い。

 電力自由化で経営環境が厳しさを増すなか、民間企業が拒否反応を示すのは自然な流れだ。文科省は新たな運営主体に電力業界や関連メーカーを引き込みたいようだが、難航している。

 もんじゅにはこれまで、1兆円以上の事業費が投じられてきた。建設費の一部、約1400億円は電力業界など民間からの拠出金だが、残りは税金だ。

 今も毎年約200億円の維持費がかかっている。実用化とその後の利用のめどが立たないまま、巨額の税金を使い続けることに国民の支持は得られまい。

 高速炉や放射性廃棄物の研究なら、安全確保を前提に実験炉「常陽」(茨城県)などですればよい。将来の見通しを欠く計画に人材を確保することは難しく、技術や情報の管理、事故防止にも不安がつきまとう。もんじゅのこれまでの歩みがそれを示していないか。

 核燃料サイクル自体が時代遅れの夢になりつつあり、白紙からの再検討を迫られている。もんじゅについては、廃炉が唯一の合理的な選択肢である。