AIロボで在庫管理 国内初開発へ
ITシステム専業大手の日本ユニシスが、小売店の売り場を巡回して棚にどれだけの在庫があるかを把握し、売り場担当者に発注や棚の見直しを助言する「棚卸しロボット」を開発していることが分かった。こうしたロボ開発が明らかになるのは国内初。少子高齢化で人手不足が深刻化している小売業界の業務支援策として、今年度内にも国内の小売店で実証実験に入る。【宮島寛】
平岡昭良社長が毎日新聞のインタビューで明らかにした。平岡社長は「単なる話題づくりでなく、実用性を伴ったものだ」と強調した上で、「ロボット技術は社会課題解決のために活用できる段階に入った」との認識を示した。
棚卸しロボットは米ベンチャー企業が売り場案内用に設計した自律走行ロボットに、日本ユニシスが独自開発した人工知能(AI)を組み込む形で運用する。閉店後の夜間などに店内を自動巡回させ、内蔵センサーを通じてどの棚にどんな商品があり、どれだけの空きスペースがあるかを認識。1品当たりの大きさと棚の埋まり具合から在庫がどの程度あるのかをAIが割り出し、「間もなく欠品するので追加発注した方が良い」「この商品は週末によく売れるので目立つ棚へ移動を」などとアドバイスする。
商品の陳列位置を変えた場合も、ロボットが日々の巡回で売り場の変化を自動認識するため、特段のプログラム変更は不要という。
在庫管理の手法としては、商品にICタグを付けて1品単位で把握する方法もある。しかし、タグの設置や管理などに多額の費用がかかるため、多くの小売店は人による棚卸しを続けている。ロボットによる在庫把握はAIを用いた「推論」で多少の誤差は生じるものの、「傾向さえ分かれば販売戦略を立てられる場合も多い。人手不足で店を増やそうにも増やせないチェーン店などにとって有効なお助けロボットになる」(平岡社長)としている。
日本ユニシスはロボットを顧客の売り場案内に活用する実験も進めており、営業中は「案内係」、閉店後は「棚卸し係」と1台に2役を任せることも視野に入れる。平岡社長は「AIをもっと発達させられれば顧客と雑談できるようにもなる」と指摘。「生身の店員には知られたくないこともロボットには気軽に相談できるかもしれない。雑談の中から(高級宿泊施設の)リッツ・カールトンや加賀屋のように、本当の顧客のニーズや困りごとを引き出せれば接客も変わる」と述べた。
キーワード・棚卸し
商品などの在庫数や価格を調べること。多くの小売店はレジで会計する際、バーコードを使った「POS(ポス)」と呼ばれるシステムで、何がどれだけ売れたかを把握している。しかし、実際の在庫は不良品や期限切れ商品の撤去、万引き被害などによって異なってくる。スーパーマーケットなどでは同じ商品を複数の棚に分けて陳列したり、特売に合わせて価格を変えたりすることも多く、在庫を正確に把握するのは難しい。
そこで、帳簿上の在庫と実際の在庫をそろえるため、決算日などの節目に合わせて棚卸しを実施。商品数が多い店の場合、従業員が総出で行っても作業は半日から1日になることもざらで大きな負担になっている。