こんにちは、せみけんです。
神戸物産が、そこそこ良い決算で買い増ししましたが、残念ながら下がってしまいました。のんびり来期に期待しています。
本日も書評です。
会計関連の本としては今年(2016年)一番の本だと思います。
経営企画部とかM&Aに携わっているひとは、「MBAバリュエーション」森生明著、という本を読んだことないでしょうか。オレンジの表紙で目立つ本です。私もM&A関連の業務をしてたこともありますが、この本は非常に役に立ちます。この著者が、新著を出してだので早速購入。
1.目次
2.B/Sから見る株式時価総額と「のれん」・PBRの関係
3.明星食品を巡るTOB合戦
1.目次
第Ⅰ部 企業価値算定(バリュエーション)の基本構造
第1章 企業価値は財務諸表にどう表れるのか
第2章 基本公式から一歩深掘りする
第3章 DCF評価と倍率評価は、実は同じ
第Ⅱ部 基本構造から読み解くM&Aの世界と資本主義社会の課題
第4章 日本の株式市場は「サヤ取り天国」なのか
第5章 事業や業界を再編するM&A活動
第6章 日本市場に押し寄せる資本の論理とその課題・限界
第Ⅲ部 実務応用編 理論と実務の橋渡しの試み
第7章 リスクを数字にする方法
第8章 経営支配権を売り買いするM&Aの世界
第9章 リスクマネジメントをオプションで捉える
第10章 株式のオプション価値と事業再生
専門的な用語が並んでいますが、著者はできるだけ分かりやすく実例を交えながら解説してくれます。企業買収も株式投資も結局、企業の価値を正しく評価することが一番大事なので、その理解のためにはとても役に立つと思います。
PER、営業利益、EBITDA(償却前営業利益)、ROEなどの用語は理解していた方が、すっと理解できると思いますし、簿記の知識はあったほうが尚よいと思いますが、企業評価をどのようにやっているか知りたい人のとっかかりとしても良いかもしれません。
株式投資を中長期的にするなら100円の価値のあるものを50円など「できるだけ安く買うこと」が大切なポイントだと思うので、100円の価値なのか、それとも80円の価値なのかをある程度自分の中で整理するためには役に立つ本だと思います。
※引用元はすべて「バリュエーションの教科書」
2.B/Sから見る株式時価総額と「のれん」・PBRの関係
このような会社があり、時価総額が100とすると、PBRは1倍です。時価総額は、株価×発行株式数で計算できます。
BSは左と右が合計値で一致するようにできているので、価値を創造している会社では、純資産の時価と簿価のぶんだけBSの左側にそれを埋める資産価値が存在することになる。
このように筆者は説明していて、企業ののれん価値想像力は純資産の時価と簿価の比率であるPBRで表現できることがわかると続けて説明しています。
(参照元:バリュエーションの教科書)
株式時価総額が200で、簿価純資産100の企業はPBRは2倍となります。そのバランスシートはどのような状態かというと上記の通りで、株式時価総額が200となるので、資産側に無形の営業資産100が発生している。
PBRが1を下回る会社は存続している価値がなく、解散した方がましといわれるゆえんもここにある。
企業は何らかの価値を産みだしており、そうであるなら、PBRは1を上回るはずです。2016年9月14日時点の日経平均はPBR1.14倍となっており、株価が正しければほとんど価値を産みだしていないといえます。
このような形で説明がなされており、図で分かりやすくなっています。16ページにある、PLとステークホルダーの利益という図も分かりやすいですね。
3.明星食品を巡るTOB合戦
明星食品を巡って、スティールと日清食品がTOB合戦が過去になされた。スティール側が700円でTOBを先にしかけ、それを受けて、日清食品が870円でTOBを提示しました。
この870円という価格は、PERで見ると40倍を超えるものであり、一見割高な買い取り価格となります。スティールがTOBをしかけるまで、600円前後で推移していた株価だったんですが、20%以上プレミアムがついています。
この根拠ですが、筆者は以下のように推測しています。
直近株価883円で、明星食品のPBRは、1.4、PERは法外に高くなるが、EBITDA倍率では、9.0であり、これらの数字は、買収者である日清食品の直近株価に対するPBRやEBITDA倍率の範囲内におおむね収まっている。
これを各種指標とともに、一覧表にして掲載されています。こういった解説をしてくれる本は少なく、実務的にも役に立つ書き方だと思います。
買収の価格は、ほかのプレーヤーがいれば高いプレミアムがついていたり、比較しづらいことから高値掴みとなりやすいです。ただ、買収する側も株主に訴訟される可能性や責任追及されることを考えると説明がつく価格である必要はあります。
そういったことを理解するのにも視覚的に理解しやすい説明です。
これ以外にもFA業界4社の企業価値比較、総合電機メーカーの企業価値・倍率推移、株式プレミアムの算定など、読み込むと時間はかかりますが、株式投資にも役に立つと思います。
企業価値算定の世界も「答えは市場に聞くしかない」という意味で同じ、1人ひとりの投資家の価値観が市場価格という声を形成して企業経営者とコミュニケーションする、それを建設的で前向きな議論の場としてはぐくむことが豊かで公正な社会づくりにつながる。
そのための共通言語やツールとして本書が役立てばいいという思いを込めて、「企業価値・M&Aの本質と実務」という副題を選んだ
株式投資する前には、必ずEV/EBITDAの指標は自分で計算していましたが、もう1度理解を確かめる上でも有用でした。全てを吸収するのは簡単じゃないですが、手元に置いて、ことあるごとに活用したいと思います。