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フィーライン・アイズ

コミュ障だけど野心はあります

銀河英雄伝説・第18話「リップシュタットの密約」~打倒ラインハルトで動き出した門閥貴族と先見の明を持つ才女ヒルダ~

銀河英雄伝説・本編


銀河英雄伝説 第18話

 

オープニングナレーション

 

新皇帝エルウィン・ヨーゼフ2世を擁した、

ローエングラム侯ラインハルトとリヒテンラーデ公に対し、

帝国で一、二を争う権勢家であった、

ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯は、

協力してこれを密かに排除することを誓い合った。

 

かくて皇帝派リヒテンラーデ・ローエングラム枢軸と、

反皇帝派ブラウンシュバイク・リッテンハイム連合との対決の機運は、

急速に高まりつつあった。

 

第18話のあらすじ

 

ラインハルトは帝国宰相のリヒテンラーデと手を組み、

幼君のエルウィン・ヨーゼフ2世を新皇帝に擁立した。

 

だが、それを快く思わない大貴族のブラウンシュバイクは、

義弟のリッテンハイムらと連合してラインハルトを排除しようとする。

 

ブラウンシュバイクは「園遊会」と称して多くの門閥貴族を招き、

別荘のあるリップシュタットの森で盟約を結んだ。

 

一方、マリーンドルフ伯フランツは、

貴族の一員として自身の処遇をどうするべきか悩んでいた。

 

すると、娘のヒルダが冷静に状況を分析し、

ラインハルトに味方する利を説いた。

 

娘の明晰さに感動したマリーンドルフ伯フランツは、

家の命運を彼女に託すのだった。

 

ヒルダはラインハルトの元帥府を訪問し、

内戦の際にはマリーンドルフ家が味方になることを申し出た。

 

ラインハルトは自分が必ず勝つとは限らないというが、

ヒルダは敵が一枚岩でないことを指摘し、必ず勝てると断言した。

 

これを聞いたラインハルトは感心し、

ヒルダがほしいと言った家門と領地を安堵する公文書を与える。

 

そしてついに。

 

リップシュタット連合軍は先に仕掛けてきた。

 

ブラウンシュバイクの部下のフェルナーが、

ラインハルトを暗殺しようとして動き出したのだ。

 

主君の軍才のなさを熟知していたのと、

民衆を疲弊させることを良しとしないための策だった。

 

だが、それはあえなく失敗し、

捕らえられたフェルナーはこともあろうに、

自らラインハルトに帰順する。

 

部下の忠誠心を軽く扱う主君に嫌気が差していたのだ。

 

ブラウンシュバイクらは首都星オーディンを脱出して、

ガイエスブルグ要塞に立て篭もったのだが、

ラインハルトはそんな彼らを「賊軍」と呼んで笑うのだった-。

 

第18話の台詞(1)

 

 ヒルダ「お父様、何を考えておいでですの?」

マリーンドルフ「うん?いや、たいしたことではない」

 

ヒルダ「それは頼もしいですわね。銀河帝国の命運と、

このマリーンドルフ家の将来がたいしたことではないとおっしゃるのは。

で、ご決心はおつきになりました?」

 

マリーンドルフ「私は中立を望んでいるが、

それが叶わぬ時はブラウンシュバイク公につく。

帝国貴族としては、それが筋というものだ」

 

ヒルダ「お父様!人類の文明が地球に発生して以来、

滅びなかった国家はひとつとしてありません。

銀河帝国だけがどうして例外であり得るでしょう」

 

マリーンドルフ「ヒルダ、何を言い出すのだ?」

 

ヒルダ「ゴールデンバウム王朝はもう500年も続いてきました。

それも一部の貴族が大部分の平民を支配するという歪んだ形で」

 

マリーンドルフ「ヒルダ、おい、ヒルダ?」

 

ヒルダ「これだけやりたい放題やってきたんですもの。

そろそろ幕が降りても当然ですわ」

 

マリーンドルフ「・・・つまり、ローエングラム侯に手を貸す。と」

ヒルダ「そうです」

マリーンドルフ「しかし・・・」

ヒルダ「それにローエングラム侯には大義名分があります。

皇帝を擁する立場ですもの。それに比べてブラウンシュバイク公たちは、

野心剥き出しの私事の戦をしようとしているに過ぎません」

 

マリーンドルフ「!」

 

ヒルダ「それにブラウンシュバイク公らは、

やがて大部分の貴族を結集するでしょう。

その中にマリーンドルフ家が参加したところで、

何ほどのものもないでしょう?

しかし、ローエングラム侯にとっては政治的効果もあることなので、

厚遇されるに違いないと思うのです」

 

マリーンドルフ「ま、それはそうかも知れんが・・・」

 

ヒルダ「そして何より、この戦いはローエングラム侯が勝ちますわ」

 

マリーンドルフ「うーん・・・わかった。そうまで言うなら、

おまえに任せよう。この家はおまえが継ぐのだし、

何よりおまえの人生だ。おまえが思うようにやりなさい。

どんな結果になろうと私は後悔しないよ」

 

ヒルダ「お父様!」

 

マリーンドルフ「マリーンドルフ家のことなど考えなくてもいい。

むしろ、マリーンドルフ家を道具にして、

おまえの生きる道を広げることを考えなさい。いいね?」

 

ヒルダ「(モノローグ)ありがとう、お父様。

マリーンドルフ家の命運を私に委ねてくださって。

そして、面白い時代に私を生んでくださって」

 

第18話の台詞(2)

 

 ヒルダ「ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフでございます。閣下」

 

ラインハルト「キルヒアイスがいないのが残念だ。

あれはマリーンドルフ家とはいささか関わりがある。ご存知かな?」

ヒルダ「はい。もちろんです。昨年のカストロプ動乱では、

父を救い出していただきました」

ラインハルト「先刻までいたのだが、

ちょうどすれ違いになってしまった。で、私にご用というのは?」

 

ヒルダ「このたびの内戦に際してマリーンドルフ家は、

閣下にお味方させていただくこと、申し上げに参りました」

 

ラインハルト「内戦とは?」

ヒルダ「明日にでも起こるであろう、ブラウンシュバイク公爵との」

 

ラインハルト「ふっ。大胆な人だ。例えそうなったとして、

私が勝つとは限らないが、それでも私に味方してくださると?」

 

ヒルダ「閣下はお勝ちになります」

ラインハルト「ほう」

 

ヒルダ「ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯は、

一時的に手を結んだだけのことで、

お互いに協力しようという意思に欠けます。

何より軍の指揮系統が一本化されてないのが致命的です。

全体の兵力が閣下を上回ったとしても、

統一された閣下の軍の敵ではありませんでしょう。

それに貴族の士官だけで戦争はできません。

実際に戦闘するのは兵士たちです。

平民や下級貴族の兵士たちは、

閣下とブラウンシュバイク公とどちらを支持するか、

火を見るより明らかではありませんか?」

 

ラインハルト「みごとな見識をお持ちだ。結構。

そういうことであれば、私も味方はほしい。

マリーンドルフ家はもちろん、

その口添えのあった家は厚く遇するとしよう」

 

ヒルダ「閣下の寛大なお言葉をいただき、

私どもも知人縁者を説得しやすくなります」

 

ラインハルト「なに、せっかく味方してくださるのだ。

粗略なこともできまい。もし私で役に立つことがあったら、

何なりと言ってもらいたい。遠慮はいらん」

 

ヒルダ「では、お言葉に甘えてお願いがございます」

ラインハルト「どうぞ」

 

ヒルダ「マリーンドルフ家に対し家門と領地を安堵する。

そう保障する公文書をいただきとうございます」

ラインハルト「ほう、公文書を・・・よかろう、

今日中に文書にしてお渡ししよう」

 

ヒルダ「ありがとうございます。

マリーンドルフ家は閣下に絶対の忠誠をお誓いいたします」

 

ラインハルト「期待させてもらおう。

ところでフロイライン・マリーンドルフ、

貴女が説得して下さる他の貴族たちに対しても、

やはり同様の保証書が必要かな?」

 

ヒルダ「それは、それぞれの家の者が考えることです。

それに、閣下がおやりになろうとしていることには、

そうしたものがたくさんあってはお邪魔でございましょう?」

 

ラインハルト「ふふふふふ。ははははは!

いや、これは失礼。見かけによらず怖い方だ。

フロイライン・マリーンドルフ」

 

オーベルシュタイン「ご無礼。閣下、不平貴族どもがやはり動き出しました」

 

ラインハルト「フロイライン・マリーンドルフ。

今日はお会いできて楽しかった。

いずれ食事でもご一緒させていただこう。では」

 

第18話の台詞(3)

 

ラインハルト「確か・・・シュトライト准将であったな。

卿は私を暗殺するように、

ブラウンシュバイク公に進言したそうだが、事実か?」

 

シュトライト「事実です。

わが主君にそれが容れられていれば、

今ごろ手錠をかけられているのは、あなただったはずです。

残念なことをしました」

 

ラインハルト「何故そんなことを進言したのか」

 

シュトライト「無用な戦乱で国を損ない、民衆を損なうより、

たとえ一時の汚名を甘受することになっても、

そのほうが良いと考えたのです」

 

ラインハルト「うむ、殺すには惜しい男だ。通行証を出してやるから、

主人のもとに行って、卿の忠誠を全うするがよい」

 

シュトライト「・・・できますなら、オーディンに留まることをお許しください」

 

ラインハルト「主人のもとには行かぬのか?」

 

シュトライト「このまま主人のもとに行っても、

何故助かったのか疑われるだけでしょう。

ブラウンシュバイク公は部下の忠誠というものを、

あまり信じないお方なので」

 

ラインハルト「なら、どうだ?いっそ、私の部下にならんか?」

 

シュトライト「ありがたい仰せですが、

今日までの主人を明日から敵に回す気にはなれません。お許しください」

 

ラインハルト「わかった、自由にするがよい」

 

第18話の台詞(4)

 

フェルナー「ブラウンシュバイク公の元部下、フェルナー大佐であります」

 

ラインハルト「元?」

 

フェルナー「はっ、今日を境に見限りました。

できますならば、閣下の部下にしていただきたいと思い、出頭した次第です」

 

ラインハルト「すると、卿の忠誠心はどういう基準で左右されるのか?」

 

フェルナー「忠誠心などというものは、

その価値のわかる人に捧げてこそ意味のあるもので、

人を見る目のない主君に忠誠を尽くすなど、

宝石を泥の中に放り込むようなものです。

社会にとっての損失だとお思いになりませんか?」

 

ラインハルト「・・・ぬけぬけという奴だな。オーベルシュタイン」

 

オーベルシュタイン「はっ」

 

ラインハルト「この男、卿に預ける。使ってやれ」

 

妙香の感想

 

ヒルダ(ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ)が初登場の回でした。

 

父のフランツが伯爵なので、貴族のお嬢様なんですが、

すばらしい智謀の持ち主で政治家のようなオーラを持っていますね。

 

のちに彼女はラインハルトに重用されて、

その側近として活躍することになります。

 

これに対して門閥貴族の連合軍には、

有能な人材がほとんどおらず、

シュトライトやフェルナーは主君のもとを離れて行きました。

 

確かに権勢をかさに着てた威張り散らすだけでは、

部下の心をつかむことはできないでしょうね。

 

「ラインハルトに簒奪の意思があるから討つ」と明言し、

ことを起こす前に多くの貴族に根回しすれば、

いくらかは有利になったかも知れません。

 

あの状況では有能なメルカッツが軍を率いても、

宝の持ち腐れになることは間違いないですよ。

 

ブラウンシュバイクのもとには他にも、

ファーレンハイトなどの有能な軍人がいるんですが、

のちのちみな、ラインハルトのもとで頭角を現すようになります。

 

結局、才能と人徳がある者が覇者となるんです。

 

キルヒアイスの出番が少なかったのと、

エンディングのナレーションが気になりますが、

この戦いでラインハルトの運命も大きく変わりそうです。

 

次回は自由惑星同盟にクーデターが起きますが、

意外な人物が関わってくるので、見逃せないですよ。

 

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