2010年4月、土壌汚染対策法が改正施行され、豊洲市場用地も、工事するためには区域の指定申請を受けなければいけない対象になり、国の指定調査機関が調査の業務委託を受けた。
「しかし、指定調査機関が状況調査報告書を作成するときに、ベンゼンの汚染基準不適合区画のうち、305区画で調査をせずに区域指定をしていたのです。最初から、区域外しをしますと、土壌汚染対策法上の流れとして、汚染はないとして扱われますので、そこが汚染区域として表には出てこないことになるのです」(水谷氏)
いったい、これまで「汚染区域」の指定は、どのように行われてきたのか。また環境局は、どのような審査を行ってきたのか。都から、調査の経緯の説明が求められる。
また、築地市場で現在使用している「濾過海水」について、都は当初、豊洲新市場では「使わない」と説明してきたのに、突然「護岸から取る」ことになったという。
濾過海水を護岸から取水?
突然の方針変更に戸惑う仲卸業者
築地で47年にわたってマグロ仲卸をしている「小峰屋」の和知幹夫氏は、こう現状を訴える。
「333ヵ所の地下水の再検査、新市場近辺の海水や海底の化学物質の汚泥調査もしていない。新市場の仲卸店舗と競り場との間を走っている315号線の道路の下には、現在も当時埋めた化学物質入りのドラム缶が100本以上残存していて、腐食して沁み渡り、地下水に流れ込んでいるため、その海域には魚がいないのが現状です。しかし、都は6街区の仲卸店舗近くから取水を許可しているのです。濾過装置は、我々仲卸と荷受で施行しなさいと押し付けています」
仲卸従業員の東京中央市場労働組合執行委員長の中澤誠氏が、こう補足する。
「都は当初、豊洲では濾過海水が使えないから真水で人工海水をつくらないといけないると、ずっと言ってきた。ところが、ここにきて突然、護岸から取ることになったのは深刻です。汚染が残っている可能性は高いし、汚泥に汚染物質がいっぱいあることは予想できる。そういったものが活魚の水槽に入って来るとなれば、大変なことになる」