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『ニッポンの出番!』にパクられた話

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。
 TBSの『所さんのニッポンの出番!』が最終回だったんですね。といっても一度しか見たことありませんが。
 じつは私、以前この番組にネタをパクられたことがあるんです。
 日本人はなぜ謝るのかみたいな回で、土下座についての内容があるとテレビ番組表で知ったので、土下座研究家としては新しい情報がないかチェックしました。
 VTRで、ある国語学者が登場しました(私はこの人のことを知りませんでした)。するとその学者さん、私の著書『誰も調べなかった日本文化史(パオロ・マッツァリーノの日本史漫談)』に書かれている土下座の歴史を、ほぼまるパクリで、いかにもご自分が調べたかのようにしゃべったのです。
 私が知らない情報は、ひとつを除いてなかったので、この学者さんは私の本以外の文献は何も参照していないと思われます。
 その知らない情報というのは、1960年代にTBSで『水戸黄門』が放送されたことで、日本人の間に土下座が広まり定着したというものでしたけど、これはまちがいです。私の研究では、土下座で謝罪する習慣が日本の庶民に広まったのは昭和初期のこと。テレビの『水戸黄門』が広めたわけではありません。
 おそらくこの学者は、さすがに私の本のまるパクリではマズいと考え、自分なりの仮説をつけ足すことで独自色を出そうとしたのでしょう。だけど、仮説を出すのならその裏付けをとらなければいけません。こういうふうにテレビで適当なことをしゃべる人が多いから、デタラメな文化史がはびこるんですよねえ。江戸しぐさとか銀ブラとか。

 べつに私は、私の本の内容を引用するときに許可を得ろとはいってませんよ。私に許可を取る必要はありません。ただし、ネタ元をあきらかにするのは、引用する際の最低限のルールです。「この本の記述によれば……」みたいにネタ元を示せば、内容をそのまま紹介してもかまわないんです。むしろ、根拠のない仮説をつけ足すくらいなら、ネタ元のまましゃべってくれたほうがいい。

 ただ、この学者さんだけを一方的に責めるのもどうかと思うんですよ。というのは、ひとつの可能性としてですが、もしかしたら学者さんは私の本がネタ元だと言及していたのに、テレビ局のディレクターが、書影などのインサートを撮るのが面倒だからそこをカットしたかもしれないんで。
 テレビって、先にシナリオが用意されていて、それに合うようにコメントなどを求めるんです。先方が用意したシナリオとちがうことをしゃべると、その発言はカットされる確率が高い。
 私は以前MXテレビから土下座についてのコメントを電話で求められたとき、やたらと「魏志倭人伝に土下座が出てるといってください」と要求されました。いや、あんな古代の文献は信憑性も薄いし現代の土下座とは似て非なるものだし、私は江戸時代以降の検証しかしてないから、といっても、「魏志倭人伝っていってください」としつこいんです。先にウィキペディアで魏志倭人伝に出てくるとあるのを調べてそういう台本ができていたから、それを私に裏付けしてほしかったのでしょう。
 あんまりうるさいから、魏志倭人伝にも出てますが、とひとことだけいって、あとは自由にしゃべりましたけど、私のコメントがどういうふうに編集されて使われたのかは、放送を見てないんでわかりません。

 テレビでのコメントは、発言者の意図と異なる編集がされてることがあるので、見る側も気をつけないとね。
[ 2016/09/13 23:02 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
日本人のための怒りかた講座

エラい人にはウソがある

昔はよかった病

日本文化史

偽善のすすめ

13歳からの反社会学(文庫)

ザ・世のなか力

怒る!日本文化論

日本列島プチ改造論(文庫)

パオロ・マッツァリーノの日本史漫談

コドモダマシ(文庫)

13歳からの反社会学

続・反社会学講座(文庫)

日本列島プチ改造論

コドモダマシ

反社会学講座(文庫)

つっこみ力

反社会学の不埒な研究報告