確認事項

 


 白いシーツが、引きちぎられんばかりに強く握りしめられ、強い皺を形作る。
 薄暗がりにかすかに浮かぶのは、苦しげに寄せられた眉と、きつく結ばれた口元。

「イシト……」

 カーシュの唇が、指先が、イシトの全身を這う。一言たりとも声を漏らすものかとでも言うように、イシトの唇はいっそう強く結ばれ、シーツの皺は更に増えていく。
 やがてカーシュは愛する者と一つになることを望み、自身を抑えかねてイシトの秘所へと滑り込んだ。
 イシトの眉は苦悶に歪む。だが、次第に緩いリズムがそれを緩和し始め、イシトの手はシーツを離れた。

「……あっ……カー…シュ……ッ」

 イシトの手が、いつの間にかカーシュの背を抱いていた。初めてのことだった。
 カーシュがそれに気付いて、更に強くイシト抱いた。

「イシト……!」

「…っ…カーシュ!」

 カーシュが堪らずに昇りつめると、その脈動に応えるように、イシトもまた果てた。
 しばし、ぐったりと身体を伸ばした二人。
 気恥ずかしいのだろう、カーシュに背を向けて横になったイシトを、カーシュが後ろから抱きしめる。

「イシト……。初めてだよな…おまえが応えてくれたの……」

 カーシュは愛おしげにイシトの金髪に鼻先をこすり付けて囁いた。

「俺の背を抱いて、俺の名を、呼んでくれた……」

 突然、イシトが振り向いた。それ以上口にするのは許さないとばかりに、カーシュを睨みつける。薄暗い中でも、その頬が紅潮しているのが判る。カーシュは、そんなイシトが尚更愛おしく思えた。

「怒るなよ……俺は……うれしい」

 カーシュは、きつい眼で睨みつけるイシトを、かまわずに抱き締めた。

「俺は、うれしい……おまえが応えてくれたのが、うれしい……。今までずっと、俺の身勝手でおまえに無理強いしてるって思いがいつもあった。それでも、おまえをこの腕に抱いて、確かめずにはいられなかったから……」

「……確かめる?」

 イシトが、わずかに表情を緩める。

「何を確かめるって言うんだ?」

 改めて問われると、カーシュにもよく判らない。

 何を確かめようとするのだろう。
 互いの温もりを感じ合い、口づけを交わし、そこに何を求めるのだろう。
 己の気持ちか。
 相手の気持ちなのか。

「判らない……」

 カーシュはイシトに頬を寄せて、彼には不似合いな、ため息のような小さな声で言った。

「俺がいて、おまえがいて……確かにここに、俺たちの間に、何か……」

 カーシュは言葉に詰まり、イシトを離して仰向けになった。

「判らない……」

「カーシュ……」

イシトが半身を起こし、そんなカーシュを窺うように見つめる。彼はもう、睨みつけてはいなかった。

「君が私を好きで……そういうことか?」

 カーシュが見返すと、イシトは微笑を湛えていた。カーシュは苦笑して、そのイシトの頭を抱き寄せ、自分の胸に載せた。

「俺がおまえを好きで、おまえは、そんな俺を許してる……。そういうこと」

 少し考えるように黙ったイシトは、やがてポツリと言った。

「許してるんじゃない……」

「ん?」

 カーシュが問い返すと、イシトは慌てて、また背を向けて横になった。

「イシト! なぁ、今なんて……」

 背後から問いつめるカーシュ。だが、イシトはしらを切るばかりだ。

「なんでもない!」

「何でもなくないだろっ」

「しつこいっ。それ以上言うと、もう名前を呼んでなんかやらない!」

 ぴしゃりと言い捨てたイシトに一瞬ひるんだカーシュだが、すぐにニヤリとしてイシトの肩口に唇を落とした。

「なぁ、それって……また名前呼んでくれるってことだろ?」


Ende.

 


 

 

副題「墓穴」(笑)。
珍しく、思わず墓穴を掘ってしまったイシト。
なんか、可愛いv
オープニングはかなりエロっぽいんですが、本筋はいつもの可愛らしい痴話喧嘩です。でしょ? ね? ね?

「恋愛は、いつも片思い。恋愛が成立するかどうかは、一方の好意を、もう一方が許容できるかどうかだ」
友人の談です。どうなのかなぁ。

2001.11.15