「おひとり様」って増えていますよね。当然、そういう人も、がんになります。治療に集中できればいいのですが、生活のことなど悩みは多く抱えています。「おひとり様のがん」について深掘りしてみました。
▼親の介護に自分の治療、担い手は全て自分ひとり
▼病気は生活を直撃。生活費の上に、さらに治療費がのしかかる
▼相談相手が少なく孤独
核家族という言葉は、第2次世界大戦後に生まれた言葉と聞いています。日本では、1960年代から急上昇をし、1963年には流行語にもなっているそうです。(ウィキペディア)
岩下久美子(故人)さんは、「おひとりさま」の概念として2001年に出版した著書「おひとりさま」(中央公論新社)の中で、「個が確立できた大人の女性」、「仕事も恋もサクセスする為の、身につけるべき生き方の哲学」、「individual (個々の、個人のという意)」、「自他共生していく為のひとつの知恵」としています。
自立した女性像として大変共感できる概念ですが、国民生活基礎調査などの公的な調査になると世帯構造が「単独世帯」と分類され、具体的には以下のような方が該当してきます。
・住み込みまたは寄宿舎等に居住する単独世帯
・その他の単独世帯(世帯員が一人だけの世帯であって、その世帯員の居住場所が上記以外の者をいう。)
例えば、大学進学や就職を機会に地方から都会へ上京、そして結婚をすることなく生活をしている人や、都心に両親がいつつも、住宅を別にして未婚で生活をしている人が相当します。
厚生労働白書によると、このような日本の生涯未婚率(生涯未婚者の割合で通常は50歳時点の未婚率で代替している。40代後半と50代前半の未婚率を平均して算出)は年々高くなっており、厚生労働白書2015では男性は24.2%、女性は14.9%と推計されています。また、2035年には男性29%、女性19%になるとも推計されているのです。
これを分かりやすく言うと、日本人男性の4人に1人、女性の7人に1人は生涯未婚、おひとり様ということになります。
※生涯未婚率についてはこちらを参考にしてください。
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/backdata/2-1-1-02.html
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/mariage/12.html
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-20.html
ひとたび病気をすると、病院からは手術や入院に際して、保証人やら同意書やら、何かと手続き書類が必要になります。そうしたときに意外に苦労をされているおひとり様は多いです。
●おひとり様のがんの難しさ
私が代表を務める一般社団法人CSRプロジェクトでは、毎月第一番目の土曜日の昼と、第四番目の火曜日の夜に、無料の電話相談をしています(http://workingsurvivors.org/secondopinion.html)。
この相談の中で、どうにも解決策が見つからないケースがままあります。それが、このおひとり様のケースです。夫婦のみ家庭などでは、パートナーの経済力にもよりますが、暮らしの手だては考えられます。扶養などになることで、困窮から抜け出すことができることもあります。ところが、全くセーフティーネットがないのが、おひとり様のがんなのです。
なんとか、この問題を世の中の人に知ってもらいたいと、2013年、NPO法人HOPEプロジェクトでは「がん患者白書2013:おひとり様のがん調査」(http://kibou.jp/images/20130710_SingleLife_can.pdf)を行いました。
これは、家族構成の違いとがん治療や生活に対するニーズの違いを把握することを目的に行ったもので、がんを経験した、①おひとり様(独り暮らし)、②プチおひとり様(親・兄妹同居)、③おふたり様(夫婦のみ、親とは別居)、④家族 (親とは別居)の四つのタイプをそれぞれ75人ずつ割り付けをし、合計300人のがん経験者の方の声をひろいました。
【収入の変化】
下の図は、病気になったあとの収入の変化を質問したものです。差を見るために、前述の四つのタイプのうち、①のおひとり様と④の家族(親とは別居)の二つのグラフを見てみましょう。これをみると、おひとり様の実に4~5割の人が世帯収入が減ったと回答をしています。この「減った」と回答された52%の方に、減った割合を質問したところ、配偶者がいる世帯と比べて、「無収入になった」と回答している人の割合が26%と圧倒的に多いことが分かります。家族世帯でも「無収入になった」と回答されているケースが4%ありますが、これは、パートナーが扶養に入った結果ですから、おひとり様のような「経済負担直撃」のパターンとは状況が異なります。
【将来の不安】
次に将来への不安について尋ねました。当然のことながら、身体や命の不安などが上位にあがってきます。しかし、おひとり様と家族タイプの間には、全く違う特徴があります。それは、おひとり様の不安の順位です。第一位は「自分の体のこと」。これはわかります。ところが、おひとり様の不安の第二位は「お金のこと」なのです。第三位が「自分の命のこと」ですので、「自分の命の心配よりお金のことが心配」という結果になります。一方、家族タイプは第一位が「自分の体のこと」、そして第二位は「家族のこと」となり、お子さんがいらっしゃるがん患者にとっては「自分の命より家族のこと」が不安なのです。
こうした家族構成の違いは、生存率や再発リスクにも影響を及ぼすことが分かってきています。その背景として、経済力の違いや服薬管理の達成率の差などがあると言われています。
抗がん剤などの治療は、生存率を10~30%上げることを目的としていますが、家族構成の違いが及ぼす生存率への影響は、ひょっとすると薬剤の効果を上回ることになるのかもしれません。
●いずれは皆、おひとり様
この結果をみて、「あああ、おひとり様って大変」で終わらせないようにしてください。
我が家も、結婚はしていますが、治療期と出産・育児期が重なったため、子どもはいません。将来の生活を考えたとき、夫婦で老化をし、どちらか片方が先に亡くなれば、おひとり様です。さらに、我が家は、血縁者内も独身や夫婦のみ世帯が多いので、お墓の管理をどうするのか?あとに残った方はどうするのか?など不安だらけです。
生まれるときも、死ぬ時も、ひとりです。これからの日本を考えると、おひとり様だけではなく、老老介護やがんがん介護、認認介護など、様々な介護形態が起こってくるでしょう。介護力が低下した家族が、そして、個人の責任におしつけるのではなく社会が「助け合える」仕組みを作らないと、日本の未来は本当に暗いと思っています。
次回は、「非正規雇用のがん」について考えてみます。
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<アピタル:がん、そして働く・コラム>
http://www.asahi.com/apital/healthguide/cancer/(アピタル・桜井なおみ)
東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。
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