ブラック文



「号外〜、号外だよ〜。幻想郷一早くて確かな新聞、『文々。新聞』の号外ですよ〜♪」

良く晴れたある日、幻想郷の空には普段どおり自分の新聞を配りまわっている射命丸文が居た。
文はその自慢の足を利して幻想郷中を飛び回り、そして魔法の森の上空までやってきた。

その時、下の森からなにやら叫び声が聞こえてくる。

「おーい、そこの新聞記者ー! 聞きたい事があるから、ちょっと降りてきなさーい!」
その呼びかけに興味を持った文は叫び声の上がっている場所へと降下してゆく。
「こっちこっち。早くきなさーい!」という呼びかけを目安に森へと降り立つと そこにはこの森の住人、アリス・マーガトロイドが待って居た。

「いや、悪いわね。なんか忙しい所を呼びつけちゃったみたいで。でも丁度貴女のことを探していた所だったから。」
「いえいえ、中々面白そうなことかもしれませんし、私でお役に立てれば何時でも。それで、効きたいことって何ですか?」
自分で呼びつけておきながらあまり悪びれていないアリスに対し、にこやかに微笑みながら文は返答する。

「貴女は新聞記者なんだからこの幻想郷の情報には詳しいでしょう?」
「ええ、一応。それなりの自信はありますが・・・。」
ここでアリスは文に近づき、耳打ちするようにそっと囁く。

「実はね・・・貴女、魔理沙が何処にいるか知らない?」
「いえ・・・ちょっと判りませんね。何かあったのですか?」
「ここしばらくの間ゼンゼン見かけなかったのよ。それで、病気にでもなったのかと思って家をたずねて見たんだけど、もぬけの殻だったわ。まるでしばらく家に帰っていないみたいに。」
「はぁ、なるほど・・・。でもそれ位だったらあんまり心配は要らないんじゃないですか? 私も取材で結構長い間家をあけることもありますし。」
「いいえ、話はコレからが本題よ。」
そういってアリスは改めて文の瞳を見つめなおす。その瞬間、あたりの空気が急激に重くなり始める。

「まぁ、最初は私もそう思ったわ。でも一応魔理沙のことを知らないかどうか、色々な人たちに聞いてみたの。
そうしたら『貴女と魔理沙が一緒に居た。』と言う話を最後に目撃情報がぱったりと途切れているのよ。
だから、そのときに魔理沙とどんな事を話したのか、教えてもらえないかしら。」
「もちろん取材ですよ。それで、こちらから聞く事ばかりだったので『これからどうするのか』とか、そういうことはゼンゼン聞かなかったですねぇ・・・。
それに、その後私は用があったのですぐに別れちゃいましたので、それから先はわからないのですよ。」
「ふう〜ん。でもね・・・、そのインタビューの載った記事を私は見たことが無いんだけれど。どんな事を喋ったのかは教えてくれないかしら?」
アリスは文の説明に納得していないように食い下がる。

「ああ、それはインダビューしたのは良かったのですが、実はあまり面白くなかったので没ネタにしちゃいました。ほかに集めていたネタのほうが面白かったですし。
それとも・・・もしかしてアリスさん。私のことを疑っているのですか?」
いかにも「憤慨だ」というモーションをする文。

「いや、別にあなたのことを疑ってたりなんかはしないわ。」
文の逆質問をアリスが否定する、その瞬間、二人の上方から人影が現れる。
「あなたが犯人だと確信しているだけよ。火符『アグニシャイン上級』」
木々の隙間からパチュリーが飛び出し、爆炎を放つ。炎は振り向きかけた文を直撃し、一瞬で火達磨にする。
「貴女、状況証拠ではその羽みたいに真っ黒。おまけに「魔理沙が居なくなった」と聞かされても感心がなさそうな態度。
普段の貴女なら間違いなく食いつくネタのはずなのにねぇ・・・。そういうわけで、あなたは間違いなく【クロ】よ。」
「まぁ、仮に貴女が【シロ】だったとしても・・・力ずくで魔理沙を捜させるだけよ。」
パチュリーに続き、アリスも正体をあらわにし、文に攻撃をかける。
上海人形から放たれたビームが燃え盛る火の塊に吸い込まれ、大爆発をおこす。

「さぁ、出てきなさい。まさか今のでやられた、なんて事は無いのでしょう?」

パチュリーの言葉が森に響く、その次の瞬間、文字通り周囲の空気の質が変わった。
あたり一面の爆炎は風により一瞬にして切り裂かれ、中から漆黒の羽が現れる。
そしてその羽ばたきにより切り裂かれた炎は見る間に吹き散らかされていった。

「ヤレヤレ、私としたことが単純なことを忘れていましたねぇ。それとも貴女方を甘く見すぎていたのかもしれません。ドッチにしろ私のミスであることにはかわりませんがね・・・。」
そう言いながら文は立ち上がり、二人を見つめる。
外見的にはその背中の羽が人の背丈ほどに大きくなっただけ。だが、全身から出る威圧感はまるで違っていた。
その能力もあいまって、吸う空気ですら重くなったかのような圧力を二人に与える。

「くっ、それが貴女の本性、というわけね。今までヘラヘラとよくもまあ・・・。
大方魔理沙もそうやって騙して捕まえたんでしょう!」
「失礼ですね。私は自分を偽った事なんてありませんよ。ただ、私荒事は嫌いなので、余りこの姿になりません。だから誤解している人が多いだけですよ。
あ、それと、魔理沙さんは確かに私と一緒に暮らしてますよ。でも勘違いしないでください。
力尽くとかそう言う訳じゃなくて、ちゃんと愛を告白して、私の全部を見せて、その上で魔理沙さんは私を受け入れてくれたのですよ。」
気圧されかけた自分を奮い立たせるかのようにアリスが叫ぶ。
だがその叫びも文には余裕たっぷりで受け流されてしまう。
そう、その余裕はその力のよるものだけではない。魔理沙は文と共にいる、という事実こそがその流れを決定的にしていたのだ。

「クッ、舐められたものね。ここまで証拠を突きつけられて、かえって開き直るなんて。
まぁ、いいわ。半殺し程度で済ましてあげようと考えていたけれど、それも無し。
この幻想郷からあなたという存在を痕跡すら残さず抹消してあげるわ。」 「そうね、私たちから魔理沙を奪った罪、生半可なことで済むと思わないことね。
さぁ、力尽くでも魔理沙を返してもらうわ。」
もう問答は終わった、とばかりにアリスとパチュリーは戦闘体制に入り、呪文を詠唱し始める。

「ヤレヤレ、私、本当に荒事は余りやりたくないのですが。まぁ、いいでしょう。何時かは戦うことになると思っていたことですし・・・」
そんな二人を見て文はいかにも気が乗らない風に扇を構える。
だが、その瞬間、目も、口調も、態度も、全てが変わりこう言い放つ。
「貴女たちと私の力の差というものを教えてあげましょう!」


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ホンの少し前は林だった場所。だが今では木々は薙ぎ倒され、燃えさかり、地面はえぐれ、掘り返されている。

「・・・何よ、コレ。こんなのって、あり、なの・・・?」
「うか、つ、だったわ。まさか、これほどの力があるなんて。」
全身に傷を負い、もはや立ち上がることすらできない魔女二人。
そしてその悔しげな目の先には文が一人、ほぼ無傷でたたずんでいた・・・。

「ヤレヤレ、ほんと、こんな事やりたくは無かったのですが・・・。」
背中の羽も元のサイズに戻り、少々すまなそうに文はつぶやく。

「な、何よ。それで、私たちを哀れんでいる、つもりなの・・・。クッ、冗談じゃないわ。」
「は、早く私たちに止めを刺しなさい。そうしないと、今度こそ、あなたを倒すから。私たちから魔理沙を奪った恨み、絶対、絶対に忘れないんだから!」
二人の血を吐くような魂の叫び。それを聞いて文はなんとも言えない複雑な表情を浮かべ、ゆっくりと語りだす。

「コレは私だけじゃなくて、天狗全体の習性なのですが・・・私たちは今みたいに力尽くで物事を解決することを本当に嫌うんですよ。
だってそうでしょう? 自分で言うのもなんですけど、私たちが一々喧嘩していたら洒落になりませんもの。
だから言葉で説得するのがスマート、って言われるんです。なので最後にコレだけははっきり言わせてもらいます。」
そこまで言ってから文はもう一度二人を見つめなおし、問いかける。

「貴女方は『私の魔理沙、私の魔理沙』って、よく言いますけど、いつ魔理沙さんは貴女方二人の所有物になったのですか? そしてそれ以前に貴女方二人は魔理沙さんのことが好きなのですか?」
「なっ!!? あなた、それを本気で言っているの?」
「もちろんです。コレはとても重要なことですから、答えてください!」
流石に気色ばむ二人。だが文は今までに無く強い口調で回答を求める。

「わ、私は・・・も、もちろん魔理沙のことが、だ、だ、大好きよ。」
「そ、そうよ。好きじゃなかったらこんな事しないわ。」
顔を真っ赤にし、傷の痛みも忘れてしどろもどろに答えるアリスとパチュリー。
だが・・・

「じゃあ、その思いを一度でも魔理沙さんに伝えたのですか?」
その文の問い。それは二人の恋心を容赦なく打ち砕く物であった・・・。

「そ、それは・・・。」
「私の知っている限り、お二人が魔理沙さんに告白した、とかそういう話は一切聞かないのですがね。」
「クッ、それは・・・。そうよ、魔理沙よ。ちゃんと好きだって態度を示したのに、全然気がついてくれないのよ。魔理沙のせいよ!」
そんな、答えに詰まったアリスの苦し紛れの言い訳。
文はそれを聞いて一息、深いため息をついて、言った。

「態度、ですか・・・。やはり貴女達は魔理沙さんのことを何もわかっていませんねぇ・・・。」
「なっ! ど、どういうことよ。」
「確かに、貴女達は魔理沙さんの前だと明らかに落ち着きをなくして、傍から見てもはっきりと『恋をしている』というのが判りましたよ。
でも当の魔理沙さんにだけは気がついてもらえない。しかもそれが判っていながら自分からは何もせず、ただ待っているだけだったじゃないですか!」
「じゃ、じゃあ、一体何をしたというの!? 貴女は魔理沙の何を判っているというの!?」
感情をあらわにしたパチュリーの問い。ここで始めて、文ははっきりと自分の胸を張って答えた。

「まず最初に私は観察をしました。できる限り魔理沙さんのことを良く知ろうと努力しました。
魔理沙さんはどんな時、どんな事にも真っ直ぐ直球を好む人です。
『態度で示す』なんて方法で上手くいくわけないじゃないですか。
だから私は真っ直ぐ自分の想いを正直にぶつけて、それを受け入れてもらったのです。なので、私は魔理沙さんと共に居るわけです。」


もはやアリスとパチュリー、二人からの反論は無かった。
それを確認すると文はその場から音も無く去って行き、後には風が吹く中、二人の嘆きの嗚咽が僅かに聞こえてくるだけであった・・・。

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後書き

今日、バイトを終えて家に帰ったら、何故か台所に射命丸文がいた。
文は、チャーハンを炒めながら俺に
「あら、おかえりなさい」と微笑みかけた。 俺は、なぜ俺の家の台所に文がいるのかわからずに当惑したが
「た、ただいま」
とぎこちなく微笑みかえした。
その後、文が作ったチャーハンを食べた。
うまかった。
(御挨拶)

いきなり怪しげなネタから入ってすみませんね^^;
このSSは今書いているとあるSSの副産物的に生まれたSSなのです。
そういうわけで文章の練り込みが足りない(特に後半)のは勘弁してください。
タイトルにも有るように今回のコンセプトは本気になった文のブラックさです。
普段の文が「迂闊で残念」な性格なら、ブラック文は「狡猾で残忍」な性格をイメージしてみたのですが・・・。
最後も肉体だけでなく、言葉で精神までしっかりと砕いて止めを刺させてみました。

まぁ、ただのかませ犬扱いのアリスとパチュリーにはかなり申し訳ないです。
それが結構な心残りだったりします^^; ユルシテ

PS,でも本当の話、遊び全く無しの本気文は幻想郷内でもかなり手が付けられない状態だと思います。
もっもと、それを言ってしまったら誰も彼も本気を出すと手が付けられなくなりそうですけどww^^;


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