――数時間後、お屋敷からカニシルを向かわせた秋葉は家の中で琥珀の帰りを待ちます。

「遅いわね〜、いったいなにがあったのかしら。まったく、来るのが遅くなるなら連絡くらいよこせばいいのに」

「秋葉様、そうは言いますが、相手は連絡手段も輸送手段も特殊な人物、連絡の手段が無い可能性もございます」

 帰りを待っている秋葉は、翡翠の対応を聞いて電話機をいじります。

「そう思って琥珀のほうにも連絡をしているのですけれど、連絡がつかないのです」

 そのまま数分……。

「どうにも心配です、琥珀だけに何事でもきっちり生き残ってはいると思いますけれど、万が一のことがあります。翡翠、行って様子を見て来なさい」

「わかりました。姉さんの様子を見て連れ戻してきます」

 あまりに帰りの遅い琥珀に、捜索部隊まで出ることになったのです。


――その頃、長い戦いを続けている琥珀とカニシル。

「ふう、なかなか相手もやるものですね〜、仕方が無いですからちょっとした策を使ってみましょう」

 琥珀は建物の裏に隠れると、なにやらごそごそしながら待つこと数分。

 その建物から突然妙にハイテンションな声と共に

 カニシルちゃん♪ カニシルちゃん♪ 今日もぐつぐつカニ鍋日和♪

 カニシルちゃん♪ カニシルちゃん♪ 今日もまろやかカニ鍋PT♪

 うま〜い醤油と昆布をつけて、後はぐつぐつ煮込むだけ〜

 泡がす〜っと浮いたなら豆腐とたれを追加して〜

 おいしくできたと思ったら〜マヨとポン酢で食卓へ〜

 食べただしがら残ったら〜雑炊うどんで残さず完食〜

 ららら、今日はおいしいカニ鍋PT〜

 るるる、今日もめでたいカニ鍋日和〜

 料理長・琥珀「愛のクッキングソング」

 というとんでもない歌が回り中に響き渡りました。
 流石に毎度毎度いじられつづけているカニシルもこの歌には頭に来たのでしょうか。

「縁起でもない歌、歌うなカニ〜……」

 隠れていた物陰から出て、建物に特攻。
 しかし、突っ込んできた先は無人。ニヤリと笑って真後ろから襲おうとする琥珀の前に突如現れた翡翠の一言。

「姉さん、お客様を調理するのはどうかと思います」

 その声で二人同時に驚きの表情を見せ。

「えっと……この方がお客様ですか」

「この人が迎えだったカニ?」

 妙な表情で向かい合って、そのまま戦いは終了しました。

「それにしてもびっくりカニ〜。今までいろんな所に行ったカニが、問答無用の出会い頭で襲われたのは初めてカニ〜」

「姉さんは料理と薬のことになると見境がなくなりますから」

 カニシルと翡翠の言葉に苦笑いしつつ弁解する琥珀。

「まさか本当にカニ少女とは思ってなかったですし、おいしいカニ料理が食べたいな〜と思っていたのでつい」

 その琥珀に、翡翠とカニシルの容赦無い台詞。

「こんな所で終わってカニ鍋にされたらお兄様も報われないカニ」

「まったくです。お客様を襲って料理にしたなんて知れたら姉さんだけでなく秋葉様もただではすまなくなるんですから」

 こうして、怒りモード爆発中の二人とちょっと罰が悪そうに笑った琥珀はお屋敷にむかいました。
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