白色マスタースパーク


 昼間だというのに真っ暗な森。
 幻想郷の魔法の森。
 霧雨魔理沙は今日も今日とて、珍しい植物を求めて森を歩き回っていた。
 魔法の森はそれ自体がある種の結界――世界でもある。
 森に満ち満ちた魔力は木々に様々な形で影響を与える。
 森が暗い理由もそのひとつで、魔法の森に立ち並ぶ木々は大きく成長し、沢山の葉を湛えた太い枝を四方八方に大きく伸ばしている。故に森にはほとんど太陽の光が届かず、暗いのだ。
 それこそ、毎日新種の植物を生み出してしまう程に。
 そうした植物は決まって魔力を内包しており、魔法使いにとっては実に興味深い対象になり得る。
 そして魔理沙は今日もそうやって生まれたのかもしれない茸――少なくとも魔理沙自身は見た事の無い茸を発見した。

「おぉ、はっけーん」
 森を歩き回って2時間。
 魔理沙は目を輝かせて、朽ちて倒れたであろう巨木の前に座り込んでいた。
 そこには、幹の部分は肉のように赤く、傘の部分は鮮やかなピンク色をした茸が群生していた。
 蒐集家の魔理沙は喜び勇んでいくつかを採取し、持参した籠に放り込んだ。
 既に足に疲労を感じ始めていたのだろう、魔理沙は今日の蒐集はこれで満足する事にして踵を返し、自宅へと歩き始めた。
 ちなみに魔法の森を飛ぶのはあまりよろしくないとされている。
 理由は、木々の中には意識を持っていたり、生物の生気を吸い取る習性を持つものがあったりするからだ。
 迂闊にそれらに捕まってしまっては、ヘタをすると命を奪われかねない。
 魔法の森の上を外からやって来て上空を飛ぶのは構わないが、中から上空へと向かって飛ぶのは非常に危険なのである。
 故に魔理沙のみならず、魔法の森を移動する者は地を歩く。

 およそ1時間程で魔理沙は自宅へと着いた。
 茸を見つけるまでに歩き回った時間そのものは2時間だが、真っ直ぐに帰路に着けば実際はこんなものである。
 玄関に立った魔理沙は魔法でロックしておいた鍵を短い呪文を呟き唱えて外し、扉を開けて中へと入った。
 後ろ手に扉をぱたんと閉じ、早足で自室へと急いだ。
 自室は魔法の研究室も兼ねており、中は様々な物で溢れ返っていた。
 地面には薄い厚いに関わり無く、乱雑に本が詰まれていて、魔理沙の胸程の高さの塔があちこちに形成されいる。
 その周りには何に使うのか分からない奇妙な形のものや大きな宝箱など、蒐集品と思われる物が無節操に転がっていたりして、足の踏み場は殆ど無さそうである。。
 薬の実験に使う大きな木机の上には、地面と同じ様な感じでフラスコやビーカー、試験管、魔法書等々……様々な物を雑多に置かれている。
 魔理沙は地面に注意しながら机の前に移動してその上から魔法書を適当に何冊か重ねて両手で抱え持ち、まだ背の低い本の塔に重ね、空いたスペースに器具や薬品の瓶を移動させ、比較的広くなった机の上に先ほどから腕に下げていた、茸の入った籠を置いた。
 そうして今から魔理沙が何をするのかというと、新しく手に入れた茸の研究である。
 魔理沙は机の少し奥の方に手を伸ばして一冊のノートとペンを取り、自分の前に置いた。
 籠の中から茸をひとつ摘み上げると、ひっくり返したり回したりして形状を調べながら、ノートにさらさらと慣れた感じで手を動かして茸の外見をメモしていった。
 その次に、魔理沙は茸に軽く魔力を流した。
 魔力には生命力も若干含まれており、流した際の反応によってそれが人体にとって危険かどうか判断するのである。
 魔力を流された茸はすぐに反応を見せた。
 茸は僅かに熱を持ち、茸の色と同じ、赤い光を淡く放った。
「ふむふむ……大きな反応はないみたいだな。うん、これなら危険は無さそうだな」
 そう呟きながら、魔理沙はこの反応をノートに記した。
 それが終わると再度机の奥に手を伸ばし、雑多な器具の中から擂り鉢のセットを掴み上げた。
 魔理沙はそれをノートの空いている方のページの上に乗せると、茸を三分の一程割いて、それを擂り鉢の中に放り込んだ。
 そして茸を擂り潰す事一刻。
 茸はすっかり粉状になっていた。
 魔理沙は再度机の奥に手を伸ばし、ビーカーをひとつ取り出した。
 それを持って自室から出て、魔理沙は台所へと向かった。
 台所でビーカーを丹念に洗うと、そのまま適量水を注ぎ、それを持って再度自室へと戻った。
 自室に戻った魔理沙はまた机の前に戻り、そのビーカーの中に先ほどの粉状茸を入れてペンの反対側で軽くかき回した。
 水はすぐに粉の色と同じく真っ赤に染まり、魔理沙はそれを満足そうに眺めてから一気に煽った。
 しかし数分程経っても魔理沙の体には何も変化は起こらなかった。
 おかしいなぁ、と思った途端、魔理沙の体に急激な変化が訪れた。
「う、あ、く……何だ? 急に身体が熱く……。胸が苦、し―――ああぁっ!?」
 一際大きな苦しみが魔理沙を襲い、魔理沙はそのまま地面へと倒れこんだ。
 意識を失ったのだろう、それから起き上がる気配はまったく無かった。

「……ん、んんん……? ここ、は――?」
 1時間程経った頃だろうか。
 魔理沙はゆっくりと意識を取り戻した。
「ああ、そうだ。実験の最中に倒れたんだったな……。――――ん?」
 僅かに靄のかかった頭に違和感を感じつつ起き上がろうとした魔理沙は、下腹部に何か違和感を感じた。
 うずうずするような、ピリピリとするような……何か不可思議な、魔理沙にとっては未知の感覚。
 起き上がった魔理沙は机の近くに置かれた椅子に腰掛けた。
 そして違和感の正体を確かめるべく、思いきってスカートを捲り上げた。
 そこにはドロワーズを押し上げる不自然な膨らみ。
「な、何だこれ……?」
 戸惑いつつも研究心と冒険心を擽られたのか、魔理沙は一気にドロワーズを膝の辺りまで擦り下げた。

「な、な、なん……なんじゃこりゃぁーーーーーーーーーーーーッッッ!!」

 そして正体を確認した瞬間、魔理沙は家の中どころか外までも響き渡る音量で絶叫していた。
 そこには、少なくとも魔理沙にとっては見慣れないモノが在った。
 色・形状は先ほどの茸に酷似、特に色なんかはまったく一緒と言っても差し支えない程。
 魔理沙の股間の根元との接地面には些かの不自然さもなく、まるで初めから存在していたかのよう。
 ソレは天を指し示すように雄々しくそそり立ち、ピクン、ピクンと僅かに動いている。
 一瞬、魔理沙は茸が自身の股間に寄生でもしたんじゃないかと思ったが、きちんと感覚があるのでその考えは即座に却下した。
 魔理沙の頭にはすぐ次の考えが浮かび、腹の部分から片手を服の中へと突っ込んで無いに等しい胸の感触を確かめた。
 そこには確かに小さいものの、女性特有の柔らかさが確かにあった。
 それらの情報から、魔理沙は認めたくはないが結論を出さざるを得なかった。

 茸を体内に取り込んだ事によって、自身に男根が生えてしまったという事実を。

 その後、魔理沙は慌てた。
 それはもう慌てに慌てた。
 自分の家にある茸図鑑を片っ端から探し出して載っていないか調べたり、茸の成分を調べてみたり。

 そうして夕刻近くになった頃。
「わ、わからん……さっぱりわからん……。私の持ってる図鑑には載ってないし茸の成分自体は特に問題はない、すると後は茸の帯びてる魔力、か」
 魔理沙は作業机に突っ伏していた。
 結局よく分からなかったのだ。
 それから魔理沙は上体を起こし、スカートを捲ってドロワーズを引っ張り、生えてしまった男根を恨めしげに見つめる。
 何より魔理沙が困っていたのは、男根が相も変わらず勃起状態な事。
 とにかくドロワーズにスレてむずむずするのだ。
 しかし魔理沙自身にはどうする事も出来ず、その感覚を我慢していた。
「困ったぜ……。さすがにこんな恥ずかしいもん、人様にゃ見せられな―――あっ」
 その時、魔理沙の頭にある人物の顔が浮かんだ。
 肩口までの短い金髪にいつもキッと釣り上がった目、そしてツンと澄ました表情。
 アリス・マーガトロイド――
 彼女は同じ魔法使い。
 パチュリーという選択肢もあるにはあるが、あそこは紅魔館。
 ヘタをすれば、咲夜やレミリアといった連中にバレてしまう危険性を孕んでいる。
 その点、彼女の家は同じ魔法の森にある。
 他者にバレる可能性はかなり低い。
 それでもこんなブツを見せるのには、魔理沙には抵抗もあるし恥ずかしさもあった。
 しかし背に腹は代えられない。
 そんなわけで魔理沙は日が落ちようとする中、茸をひとつだけポケットに忍ばせてアリス邸へと赴いた。

「アリス、いるかー」
 そろそろ夜の帳が下りようとする時間帯。
 夕と夜の最も曖昧な時間に、魔理沙はアリス邸に辿り着いた。
 扉を二度ノックしてそう中に呼びかけると、程無くしてガチャリと音を立てて扉は開いた。
「魔理沙……。どうしたのよ、こんな時間に。何か用事?」
「ああ、ちょっと困った事が起きてな。私じゃどうしようもないんでお前さんを頼って来たんだよ」
「そ、そう……」
 アリスは自身を頼ったというその言葉に僅かながら頬を染め、口元で小さく微笑んだ。
 単刀直入に言えば、アリスは魔理沙に惹かれている。
 人としても、恋愛の対象としても。
 しかし人付き合いの苦手な彼女は、どうしてもソレを表に出す事は出来なかった。
 まぁ他にも理由はあるのだが、ここでは割愛しておくとする。
「それより、今の時間じゃ家に帰るの、危ないわよ。どうするの?」
「あー……考えてなかったぜ。頼る相手がお前しかいないって思ったら居ても立ってもいられなかったんだ。出来れば問題が解決したら泊めて欲しいんだが……」
 アリスの好意に露ほども気づいていないが故に出てきたこのセリフに、アリスは内心で舞い上がりつつあった。
「そ、そうなの。しし、仕方ないわねー魔理沙は。まぁ私も鬼じゃないし、泊めてあげても良くてよ。ホホ、ホホホホホホ」
 舞い上がった末にお嬢言葉になっていた。
 笑う仕草もお嬢様ポーズになっている。
「そうか。助かるぜ」
 魔理沙はそんなアリスの内情にこれまた露ほども気づいておらず、ほっとしていた。
 まぁ、今は魔理沙的にかなりの緊急事態。
 アリスの心の機微に気を配るのは無理な話ではある。
「さ、中に入って」
 内心の舞い上がりから上機嫌になってにこにこと笑みを浮かべるアリスに促され、魔理沙は扉をくぐった。
「お茶用意するから、魔理沙は居間のソファにでも座って待ってて」
「あ、それはいいぜ。それより、お前の研究室か部屋に一緒に行って欲しいんだが……ダメか?」
「うん、それはいいけど……そんなに急を要するの?」
「あーまぁ、な……」
 それだけをポツリと呟き、魔理沙はアリスから視線を逸らした。
 頬を少しだけ朱に染め、ポリポリと人差し指で頬を掻いている。。
 その様子は、アリスに勘違いを抱かせるには十分だった。
「じゃ、じゃあ、そうね……私の部屋、でいいかしら?」
「ああ、アリスの好きな方で構わない」
「や、やだ、魔理沙ったら……いいわよ、私は……。着いて来て……」
 勘違いはさらに先――というか、最後まで行き着いていた。
 アリスは自分の身体を抱いてくねくねしていた。
 魔理沙はその様子に少しだけ危険を感じたが、今は生えちゃったモノをどうにかするのが先なので気にしない事にした。

「さささ、はは入って」
 部屋の入室を促すアリスの言葉は震えていた。
 期待とか内心の舞い上がりとかその他諸々の事情で。
 魔理沙はそんなアリスの動揺を余所に、部屋の中に入った。
「どど、ど、どこに座る? ベッド? ベッド?」
 アリスはすっかり最高潮らしく、普段の澄ました顔を崩しまくって執拗にベッドと連呼しだした。
「いやいや、ベッドは家主のアリスが座るもんだろう。私はベッド脇の椅子でいいから」
 アリスの様子に苦笑しつつ、魔理沙はやんわりとそう提案した。
 その瞬間、アリスはがくっと肩を落とした。
「あーそう。好きに座っちゃって……」
 声ごとかなり投げやりになっていた。
 そしてアリスがベッド、魔理沙が椅子にそれぞれ座って、漸く話をする場が整った。
「なぁアリス。相談したい事なんだが、まず先に見て欲しいものがある」
 そう言って、魔理沙は出掛けにポケットに忍ばせた例の茸を取り出した。
「この茸、見た事あるか?」
「ちょっと貸してくれる?」
 魔理沙の雰囲気と言動から、どうも”そういう”展開じゃないんだなぁ、と感じ取ったアリスの心は急速に正常へと戻った。
 アリスは受け取る前に片手でポケットからケースを取り出し、中から眼鏡を取り出して掛けた。
「アリス、目が悪かったのか?」
「ああ、これ? これは一応魔具よ。私の見た事のある物体の情報なら、瞬時にレンズに映し出すの。魔理沙は持ってないの?」
「んにゃ、持ってないぜ」
「香霖堂に行けばあるかもしれないから、今度行ってみなさい。―――っと、なるほどコレね」
 レンズに情報が映し出されたらしく、アリスは魔理沙に茸を返した。
「なんか分かったか?」
 受け取りながら、魔理沙。
「ええ。私も以前見つけた事のある茸よ。茸を構成する物質的な成分はそこらに生えるような茸と大して変わらないんだけど、帯びてる魔力が特殊なのよ」
「特殊?」
「服用――この場合は茸の魔力を体内に取り込んだ場合ね。この魔力を体内に取り込むと、ある変化が起きるの」
「変化?」
「そう――性別反転。性別を決定する細胞か何かに働きかけて、そっくり反転させちゃうのよ――って、まさか魔理沙、あんた……」
 説明の途中から、アリスの中にひとつの疑惑が浮上した。
「いやまぁ……多分アリスの考えてる通りだと思うぜ」
「冗談、じゃないのよ、ね?」
 まるで否定してくれ、と言わんばかりの声色。
 顔色はさぁっと青くなり、額からは冷や汗がだらだら。
「ああ。――ほらっ」
 しかし魔理沙にとってはこの場、この流れに於いて否定なんて出来はしない。
 そう言って、魔理沙は片手でスカートを持ち上げ、もう片手でドロワーズを少し擦り下げた。
 そしてポロリというか、弾けるようにして飛び出る男性器。
 未だに勃起状態のままだった。
「――――ふぅっ」
 それを見たアリスは思いきりショックを受け、気絶。
 ベッドに倒れこんだ。

「――――リス。お――アリスー。おーいアリス、起きろー」
「ん、んん……」
 数分後、アリスは漸く覚醒した。
 額に軽く手を当て、ゆっくりと起き上がった。
「大丈夫かー? アリス」
「あ、魔理沙、おはよ―――って、私どうしたんだっけ?」
「私があの茸食べた事の証明を見せたらぶっ倒れたんだよ」
「――――――あーっ! そうだったぁーっ!!」
 ずれた眼鏡を治しつつ数秒程考え込んだ末に、漸くアリスは事の経緯を思い出した。
 そして思いっきりベッドの端に逃げた。
「いや、そんなあからさまに逃げられると流石に傷つくぜ」
「それより、ほんとにアレ食べたのよね?」
「だからお前も見ただろ? ち○こ」
「直球禁止直球禁止」
 ポッと頬を赤く染めながら、アリス
「とにかく食べちゃったって事は、魔理沙、あんた今男、よね?」
「んにゃ。3分の1しか食べてないから、変化したのはココだけだぜ」
 そう言って、魔理沙はスカートの上から自身の股間部分を指し示した。
「じゃあソレが生えちゃっただけで、他には変わり無し?」
 魔理沙がまだ一応は女の子である事に一応はほっとしたらしく、アリスは魔理沙の近くまで移動した。
「ああ。それより、この茸を以前に見つけて知ってるって事は、お前も調べたのか?」
「ええ、一応ある程度は調べたわよ」
「じゃあコレをどうにかする方法とか知ってないか?」
 アリスは顎に指を宛て、その時の事を思い出していた。
「確か――丸一個分の摂取なら24時間で自然に元に戻ったと思うわ。そこまでは調べたけど、まぁなんていうか……興味なくしちゃったから、それ以上は調べなかったわ」
「って事は、3分の1だからおよそ8時間でコレは消えるって事か」
「ええ、そうね」
 それを聞いて、魔理沙は漸く一安心した。
 そして心に余裕の出てきた魔理沙は、ちょっとした事に気がついた。
「なぁアリス」
「何?」
「今説明してた時、途中妙にセリフ考えてなかったか?」
 その瞬間、アリスの心臓はドキンと跳ね上がった。
「な、な、な、何言ってんのよっ。き気のせいよ気のせい!」
 そうは言いつつも、まさに図星でしたーと証明するかのように思いっきり慌てていて、それを感じ取った魔理沙の表情はみるみるうちに意地悪そうな、にやにやとしたそれに変わった。
「それにしては妙に慌ててるぜ、アリス〜」
「だから気のせいだってばっ!」
 羞恥と怒りで赤くなった顔を隠そうと、アリスはくるりと身体ごと反転させた。
 その様子に魔理沙は益々調子に乗ってしまい、アリスの背中にべたぁっと身体を密着させた。
 そしてアリスの腰の横から両手を前へと回し、顔を肩の上に乗せた。
「へっへっへ。いくら否定してもバレバレだぜ、アリス?」
「ってこらちょっと、当たってる! 腰にあんたのが当たってるって!!」
「当・て・て・ん・だ・ぜ」
 一文字一文字強調するのに合わせ、魔理沙は股間をアリスの背中にぐりぐりと押し付けていた。
 もはやセクハラ一直線である。
「いやーっ! 離れて、離れてぇーっ!!」
 アリスはどうにか離そうと上体を左右に振るが、腰の前でがっちりと手を組んでいる魔理沙にはまったくの無意味だった。
 むしろそうやって振り回す事で魔理沙の股間はより押し付けられ、逆効果になってしまっている。
 やがてアリスはそれに気づき、上体を降るのをやめた。
 それを見計らっていたのか、魔理沙は口を開いた。
「なぁアリス」
「何よぅ……」
 諦めた末のアリスの声は、思いっきり拗ねていた。
「アリスは丸々一個食べたんだろ?」
「うぅ……」
 その呻き声だけで魔理沙には肯定として伝わった。
「って事は、知ってるんじゃないか?」
「……何をよ?」
 そして魔理沙はアリスの背中から身体を離し、その場に尻餅をつく動作で座った。
 アリスにはその行動の意図がわからず、もう一度くるりと身体を反転。
 そして目の前に飛び込んできたモノを見た途端、身体を硬直させた。
 そこには、いつの間にかスカートを捲り上げ、下半身スッパテンコー状態になっている魔理沙の姿があった。
 当然、アリスの目に飛び込んできたのは屹立して真上を指す格好の魔理沙の男根。
「処理の仕方だよ、処理の仕方」
「しょしょしょしょしょしょしょ処理ってあああああああああんた何言っちゃってんのよっ!?」
 アリスの顔は羞恥100%で耳まで真っ赤に染まり、その声は動揺100%である。
「いや、だから処理の仕方だよ。アリスの時はこんな状態じゃなかったのか? 私だってここまでやるのは恥ずかしいんだから、もうしらばっくれるのは無しにしてくれよな」
 こんな状態、とはつまり勃起状態の事を指す。
 ちなみに言葉通り、魔理沙の顔も赤く染まっている。
 アリスを見つめる真剣な眼差しから、本気で困っている事が伝わってくる。
「……ええ、そうよ。私の時もそうだったから、知ってる」
 アリスにもその事はちゃんと伝わり、一瞬の戸惑いの後、魔理沙から視線を外してそう答えた。
「そっか。じゃあ教えてくれないか? コレが生えてからそうなんだが、ずーっと腰の辺りが疼きっぱなしなんだ。というか、さっきアリスの背中にぐりぐり押し付けてから、疼きが電気みたいにビリビリしたのに変わって、身体がなんとなく火照ってて……なんか、堪らないんだよ」
 魔理沙の言葉から、アリスは漸く気がついた。
 さっきの意地悪は本当は単なる虚勢だった事に。
 そして、魔理沙が本気で困り、弱っている事にも。
 そう思うと、アリスには急に魔理沙が可愛らしく映った。
 同時に愛しさもこみ上げ、どうにかしてあげたい、と本気で思った。
 アリスは這うようにしてずりずりと近づき、魔理沙の前に身体を丸めるようにしてしゃがみ込んだ。
 その目の前には、ピクン、ピクンと上下に僅か揺れる、魔理沙の男根。
「……アリス?」
「私がしてあげるから、処理。魔理沙は何もしなくていいよ……」
 これからの行為による所為か、僅かに熱を帯びた声。
 同じく熱の篭った吐息のかかった男根はビクンッと震えた。
「あ、アリス――ひゃうっ!?」
 アリスが右手で男根をきゅっと握った瞬間、魔理沙は悲鳴とも嬌声ともつかないような、高い声を上げた。
「も、もしかして痛かった?」
 上目遣いで何かに耐えるようにして堅く目を閉じた魔理沙の顔を見て、アリスは心配げにそう訊ねる。
 しかし魔理沙がふるふると横に首を振るのを見てアリスはほっとし、ゆっくりと上下に動かし始めた。
 擦り上げる度に魔理沙の男根はびくびくと震え、以前自分が行った自慰行為の経験から、アリスにはそれが快感である事が容易に伝わった。
 それに気を良くしたのか、アリスは扱く手の速度を上げた。
「ねぇ、魔理沙……気持ちいい?」
「はぁ、あ、ああ……気持ち、いい……」
 はっ、はっ、と荒く短い呼吸とその言葉から、確かに官能の色が窺えた。
「魔理沙のココ、凄く熱い……。一番上にある穴からとろとろとしたお汁が出てびくびく震えてて、なんか、かわいい……」
 魔理沙の官能が伝染したのか、いつの間にかアリスの目つきはとろんとしていた。
 次第に尿道口から洩れ出た先走りの液はアリスの右手を汚し、にちゅにちゅと粘着質の音が響き始めた。
 それはアリスの気分を昂揚させるには十分な効果。
「ひゃっ!?」
 アリスの手から与えられる快感に身を堅くして耐えていた魔理沙は、突然亀頭部分に走った異質な感触と、明らかに手によるものとは違う刺激に驚いた。
 閉じっぱなしだった目を開けると、そこには男根に舌をつけたアリスの姿。
「おい、アリス……くぅっ」
 アリスは気づいていないらしく、構わずにもう一度亀頭に舌を這わせた。
 直後、魔理沙は無意識的にアリスの頭に片手を置いた。
 それによってアリスは上目遣いに魔理沙を見上げた。
 視線はそのまま魔理沙の視線とぶつかった。
「あ、アリス、そこまではしなくてもいいぜ……」
 僅かの間、アリスは止まっていた。
 しかし、すぐにアリスは視線を落とし、亀頭にまた舌を這わせた。
「ぁぅっ。……くは、はぁっ――頼むからやめてくれ、アリス。顔、上げてくれ」
 戸惑いと懇願の含まれた。その声。
 しかしアリスは止まらなかった。
 魔理沙がもう一度頭に手を置こうとも、構わず舌を這わせ続けた。
 そうなると、もう魔理沙にはそれ以上止める事は出来なかった。
 正確に言えば”止める余裕がない”のだが。
 アリスの舌から与えられる、腰から一直線に背筋を駆け昇るぞくぞくとした感覚、思考を痺れさせる電気のような快感。
 魔理沙にはただ全神経を集中してその快楽に耐える他は無かった。
 次第にアリスはその行為に慣れ、いつしか舌は亀頭から竿の方に移動していた。
 裏筋に這わせた時に男根が一際大きく跳ね、魔理沙の口から呻く声が洩れてソコが弱いと感じると、アリスは執拗にその部分に舌を這わせた。
「はっ、ぁ……はくっ、うぅ……ふっ」
 裏筋を舐める舌の動きは、根元から鈴口の部分まで大きく動いていたものの、鈴口を舐めた時に大きく反応する事を感じ取ると、アリスはそこの近辺を細かく舐めるようになった。
「ああ、あ、アリス、くっ、ぅ―――なんかこみ上げて、きた……あくっ」
 弱い部分を執拗に責められ、魔理沙は急速に絶頂に達そうとしていた。
 そしてアリス根元から鈴口まで一気に舐め上げた瞬間、魔理沙の頭は一気に真っ白に染まった。
「あっ、で、出る、うぁ、あ、あはあぁぁぁぁっ!!」
「ひゃぁっ!?」
 瞬間、爆発するようにして射精が始まった。
 男根が震える度に精液が吐き出され、アリスの顔を汚した。
 射精は数十秒程続き、終わった時には唇や眼鏡、頬、鼻の頭に額、とアリスの顔は粘性の高い精液で白く染まっていた。
「はぁ、はっ、はっ、はぁ、はっ―――っと、あ、アリス、すまんっ!」
 魔理沙は射精直後の虚脱感に荒い息を吐いていたが、すぐに目の前で顔に付着した精液を拭う事もせずにぼうっとした表情のアリスに気がついた。
 魔理沙はすぐにポケットからハンカチを取り出し、精液を拭った。
「……? アリス? おーい」
「―――ぁ、魔理沙……」
 どうやら放心していたらしく、魔理沙に頬をぺちぺちと叩かれてアリスは漸く飛んでいた意識を取り戻した。
「あー、そのー……大丈夫、か?」
「う、うん……それより、もしかして、ダメ、だった?」
「?」
 不思議に思った魔理沙は、自分を見ていないアリスの視線を辿ってみた。
「―――あ」
 そこには、つい今しがた射精したにも関わらず、萎える事無く屹立したままの自身の男根。
「いやまぁ、そういう訳じゃなくて、だな……。勿論そのー……気持ち良かった、ぜ? でも自分じゃどうしようもないというか…………ごめん」
 頬をぽりぽりと掻きながら必死に何か言い訳を考えていたが、結局見つからず、魔理沙は素直に謝った。
 アリスは何も答えず、赤い顔のまま俯いてもじもじと指を動かしている。
 魔理沙はこういう時に何を言えばいいか分からず、黙り込むしかなかった。
 暫しの間気まずい沈黙が流れていたが、アリスが顔を上げて口を開いた事でこの時間は終わりを告げた。
 顔は相変わらず赤いままだが、瞳には何かの決意が浮かんでいる。
 アリスはそっと両手を伸ばし、魔理沙の両頬に当てた。
 そのまま顔を寄せ、魔理沙が気づくより一瞬早く唇を合わせた。
「ん、ん……」
 そして唇を合わせたまま、ギシッとベッドの軋む音を立て、魔理沙を押し倒した。
 十秒程経って、二人の唇はゆっくりと離れた。
 真っ赤なままに真剣な顔のアリス。
 困惑したままに呆然としているような顔の魔理沙。
「―――アリス?」
 僅かの沈黙を挟んで出た言葉は、たったこの3文字。
 込められた言葉は瞳が語っていた。
 ”――どういうつもりだ?”と
「ねぇ、やっぱり私の口だけじゃ満足出来なかった?」
「いや、私はそういう事を訊いてるんじゃなくて――んぷっ!?」
 魔理沙の言葉を遮り、アリスはもう一度唇を重ねた。
 それは一瞬にしか過ぎず、すぐに唇は離れた。
「――魔理沙が困ってるのは分かってるわ。制御の利かないコレにも、この状況にも。……後者で困らせちゃってる私が言うのもなんだけど」
 少しだけ、アリスは照れくささの篭った微笑みを浮かべた。
 しかしすぐにその微笑みは崩れ、真面目な表情へと変わった。
「この状況にしちゃったのは私自身の意思だから、謝りたくない。それに、魔理沙のコレをどうにかするのにも都合がいいし」
「――都合が、いい?」
「うん。――私の身体を使えば、きっと魔理沙のコレも満足してくれると思うの」
「身体って――それはいくら何でも駄目だ、アリスっ」
 魔理沙はすぐにこの体勢がまずい事を悟り、逃れようと手を動かそうとした。
 しかし、いつの間にか魔理沙の両腕はアリスの手によって抑えられていた。
 小柄で筋力の弱い魔理沙では、腕の方はどうにもならない。
 魔理沙は次に足を使ってどうにかしようとしたが、それも無理だった。
 アリスの膝が魔理沙のスカートを踏んで抑えているからだ。
 身を捩ろうとしてもほとんど動かす事が出来ず、結果、この状況を脱する事は出来なかった。
 そして、そうやって逃れようとする行動の意図は容易にアリスに伝わる。
「私は卑怯だよね。全部、利用しちゃってる。貴女が服用した茸で困ってうちに来た事も、この部屋に入った事も、こうやって逃げられない状況になった事も、全部」
「……それ、どういう意味だよ?」
「こうやって、私自身さえも逃げられないようにしないと言えなかったの」
 アリスはそこで一呼吸置き、もう一度口を開いた。
「貴女の事が好き、って」
 そうしてアリスは身を起こした。
 これ以上魔理沙を拘束する事に意味がないからである。
 何より拘束などせずとも、ここで魔理沙が逃げない事をアリスは信じていた。
 拘束したのは言葉通り、全てアリス自身の為だけだったからである。
 魔理沙は身を起こし、アリスは俯いて表情を前髪で隠した。
 そしてアリスの信じていた通り、魔理沙は逃げなかった。
 場には重い、重い沈黙が流れ、その間に魔理沙は自身の胸に問いかけ、返答を考えていた。
 沈黙は時間にして数分程度。
 答えの決まった魔理沙は思考の間に下を向いていた顔を上げ、口を開いた。
「……今日、アリスのとこに行こうと決める前、パチュリーのとこに行く事も考えた。これは私にとっては当然頭に浮かぶ選択肢のひとつで、それはお前にも分かると思う」
「……うん」
 顔を上げ、アリスはそう小さく頷いた。
「でも此処を選んだのは何故だと思う?」
「……ここの方が紅魔館よりずっと近いし、誰も来ない、から?」
「まぁ私もついさっきまでそう思ってたんだが……そうじゃなかった。冷静に考えると、むしろパチュリーのとこの方が都合いいからな。あそこなら対 処法とかすぐ調べもつくし、図書館内に結界でも張ってしまえばまずばれはしないし。でも、私は此処を――アリスを選んだ。アリスを頼ったんだ」
「―――え?」
「つまりはまぁ、その、だな……アリスの言うような意味で好きなのかって言うと、私にも正直よく分からない。――これが現時点で私の出せる精一杯の答えだ。ハッキリしたものじゃなくて悪いんだが……」
 返答を終え、魔理沙は照れ隠しにふいと顔を僅かに背けた。
 それと同時に、アリスは魔理沙の首に両手を回し、きゅっと抱き締めた。
 そして、思わず顔を真正面に向け直した魔理沙の額に自身の額をコツンと当て、口を開いた。
「――ありがとう、魔理沙。こんな卑怯な方法で告白しちゃったのに、答えてくれて。ほんとに――ありがと」
 アリスはにこりと微笑んだ。
 喜の感情だけで彩られた。純粋な笑顔。
 それは魔理沙をもう一度照れさせるには十分で、魔理沙は自分を至近距離で見つめるアリスの視線から逃れるようにして、視線を横に逸らした。
「……アリスはこんな曖昧な答えでいいのか? さっきからアリスは自分を卑怯だって言ってるけど、こうやって答えた私自身も卑怯だと思うんだが……」
 確かに魔理沙は自分の正直な気持ちを包み隠さずに言ったのだが、アリスのはっきりとした感情に対して曖昧な感情である事に不安を感じていた。
「でも、私の事を好きって言ってくれたから。別に私が好きって思うだけ好きって思って欲しいわけじゃないの。好きならそれでいいから、私は」
 そうして微笑んだアリスを横目で見て、魔理沙は自身の胸に痛みを感じた。
 いや、痛みというよりは締め付けられる感じ。
 その感覚で、魔理沙は漸く自覚した。
 自覚し、衝動的に想いを行動へと変えた。
「――ん、んん……」
 衝動的なものだった為、その口付けはほとんど唇を押し付けているだけに過ぎなかった。
 しかしその行動自体で想いは伝わってしまうもので、アリスの瞳から一筋の雫が零れた。
 そして始まりとは対照的に、キスの終わりは非常にゆっくりとしたものだった。
「……私は、自分で思ってたよりずっと鈍かったらしい。あそこまで言われて漸く気づけた。――好きだぜ、アリス」
「え……。ほんと、に?」
 零れた涙の痕を拭う事もせず、アリスは呆然としながらそう呟いた。
 その呟きの答えとして、魔理沙はもう一度唇を合わせた。
 そのままポスッと軽い空気の抜ける音を立てながら、二人はベッドの上に倒れ込んだ。
 唇は相変わらず合わさったままで、ベッドに倒れ込んだ時にはそこから湿った音が響き始めていた。
「ふ、ん……ふぁ……んむ……ぅ――――」
 ベッドに倒れ込んだ拍子に開いた、僅かな歯の隙間から侵入してきた魔理沙の舌に、アリスはさして驚く様子も無く自身の舌を差し出し、絡め取らせた。
 そうして深くキスを交わす最中、位置的に魔理沙の口内から垂れてきた唾液は必然的にアリスの口内へと滴り落ち、口腔内に少しずつ溜まっていった。
 その唾液は舌の動きの影響でアリスの口の端から少しずつ垂れていたが、咽頭のあたりに溜まった唾液をアリスはこくっ、こくっ、と喉を鳴らして嚥下していた。
 そうして喉を鳴らした回数が二桁に達する頃、漸く二人の唇は離れた。
 離れる時に存在していた唾液の糸は途中でぷつりと切れ、重力に従いアリスの口元を濡らした。
 息を整えた魔理沙は再度唇を寄せた。
 が、今度は唇ではなく、頬の少し下辺りー―顎の横辺りに唇はつけられた。
 そこには先ほどの涙の痕がまだ残っていた。
 その涙の痕をちゅ、ちゅと吸う音を立てて辿りながら、魔理沙は唇を少しずつ上に移動させていった。
「ん、やぁ……くすぐったいよ、魔理沙ぁ……」
 くすぐったさに唇の這っている方の目を閉じるが、アリスには嫌がっている様子はまったくない。
 そうして目尻の近くまで唇を這わせ、魔理沙はゆっくりと顔を上げた。
「服脱がすぜ、アリス」
「……いいわよ、恥ずかしいから自分で脱ぐわ」
「いいじゃないか、今更恥ずかしいも何もないだろ?」
 そう言って悪戯っぽく笑う魔理沙を、アリスはむーっと可愛らしく睨んでいる。
 暫くそうやって脱がす自分で脱ぐで言い争っていたが、結局お互い脱がし合う事で決着した。
 身を起こした二人はお互いの服に手を掛け、するすると手際良く脱がせ、ほんの2、3分程で全裸となっていた。
 二人はもう一度キスを交わし、先ほどと同じ体勢でベッドに身を預けた。
 そして魔理沙は再度唇を押し付け、右手を胸へと置いた。
「んむ、ぅんん―――っ!」
 アリスはその感触に一瞬身体を強張らせ、ぬるりと舌が口内に侵入してきた事で更に全身を緊張させた。
 魔理沙は構わず、少しずつ胸に置いた手を動かし始めた。
 アリスの胸囲は決して大きくはない。
 が、その分感度がいいのか、魔理沙の指が蠢く様に合わせて全身をぴくん、ぴくんと震わせている。
 魔理沙が息苦しさを感じて唇を離した時、アリスの身体はピンク色に染まり始めていた。
 魔理沙の手の中で、中央の突起も自己主張を始めている。
「へへ、気持ち良さそうだな、アリス」
「ん……言わないでよ、馬鹿……」
 そう言って、アリスはふいっと顔を横に背けた。
 その仕草がなんともアリスらしく、魔理沙は小さく笑みを零した。
 魔理沙は空いていた左手も右手と同じ様に胸に置き、動かし始めた。
 そうして暫くは上から被せてやわやわと揉んでいたが、次第に下から持ち上げるようにしたり、中央の突起を指で軽く挟んでみたりなど、大胆なものになっていった。
「は、ぁぅ、ん……魔理沙、魔理沙ぁ……」
「……どうした、アリス」
「もっと強く……。もどかしくて、切なくて堪らないから……お願い……」
 涙で濡れて懇願の含まれた瞳で見つめられ、魔理沙の心臓はどきんっ、と跳ね上がった。
 魔理沙は頬だけでなく全身が熱くなるとともに、急に下半身の小さかった疼きが大きくなっていくのを感じた。
 小さな呻き声が洩れ、それを隠すように魔理沙はアリスの胸に口を寄せ、突起を口に含んだ。
「あんんっ!」
 魔理沙の舌が突起を舐め上げた瞬間、アリスの身体を強い刺激が駆け抜けた。
「ん、や、魔理沙、魔理沙ぁ……だめ、強いよぉ……」
 アリスはそこから全身に抜ける強い刺激に耐えるかのように、反射的に魔理沙の頭を両手で抱え込んだ。
 魔理沙は魔理沙でその突然の行動に驚き、つい含んでいたものを噛んでしまった。
「―――――――――ッッッ!!」
 そのままアリスは声にならない声を上げて数秒間全身を強張らせ、すぐにくたっと脱力した。全身にうっすらと汗を浮かべ、目を閉じて荒い息を吐いている。
「あっと、すまんアリス。大丈夫か?」
 その問いに答えはなく、見た目も魔理沙には大丈夫には見えなかった。
 それからたっぷり10分程かけ、漸くアリスは口を開いた。
「はぁ、はっ、はぁっ――――――――ん、大丈夫、落ち着いたわ……」
「そうか? 無理しなくて少し休憩してもいいぜ?」
 気遣うその言葉にアリスは首を横に振る事で伝え、不意に魔理沙の手を取って下へと導いた。
「ん……ね、私はもう大丈夫だから……」
 そこに触れた魔理沙の手にはしっかりと潤いが感じられ、休憩などするべきでない事が伝わった。
「……わかった」
 魔理沙は上体を起こし、アリスの太腿の下に自身の太腿を割り込ませ、正常位の体勢を取った。
「いくぜ、アリス―――」
「うん、きて、魔理沙……」
 魔理沙は僅かに入り口の開いている秘所に亀頭を宛がい、ぐっと腰を前に進めようと力を込めた。
「んあ、あ……入ってきてる……ふぁ……魔理沙が、ん、私の中に、入って、きてるぅっ」
 ちなみにアリスの種族は人外だからか、処女膜というものは存在しない。
 故にキツさはあるものの、アリス自身には特に痛みというものはほぼない。
「くっ、アリス、キツイぜ……。もうちょっと緩められないか?」
 今のとこ男根は亀頭が完全に埋まったところで、魔理沙は膣のキツさと熱さ、何より気を抜けば果ててしまいそうな快感に呻いてそれ以上進めずにいた。
 魔理沙のみならず、アリスも性行為は初めてなのでキツイのは仕方ないのだが、確かにアリスの全身には挿入に対して力が篭り過ぎていた。
 まぁアリスには快楽ではなく異物感しか感じられない為、これもまた仕方ないのかもしれない。
 魔理沙の問いに返事はなく、相変わらず進もうとしても強い圧迫感で進めず、挿入は一旦諦めて魔理沙はそこで止まった。
「―――? どう、したの、魔理沙?」
 急に押し広げられる感覚が収まって異物感のみになった事に気がつき、アリスは薄目を開けて魔理沙を見上げた。
「ふぅ―――どうしたもこうしたも、もうちょっと身体から力抜いてくれないとキツくて進めないぜ」
「ん……だめ、抜けない……。やっぱり怖いのかも……」
「そっか。じゃあ一回抜くぞ」
 ちゅぽっと音を立て、魔理沙はアリスの中から男根を引き抜いた。
 それからアリスの背中に両腕を回し、”よっ”と掛け声を掛けてアリスの上体を引き上げた。
 その行動の意図が分からず、アリスは不安そうに魔理沙を見つめる。
 魔理沙はそのまま更に身体を引き寄せ、アリスをきゅっと抱き締めた。
「これでちょっとは怖くなくなるだろ?」
「……うん。ありがとう、魔理沙」
「……じゃあこのまま腰を下ろしてくれ、アリス」
 アリスが自身の肩の上で頷いた事を感じ取ると、魔理沙は背に回していた手をそのまま下に下ろし、お尻を掴んだ。
 アリスはそれに合わせて腰を上げ、男根の方へと動かした。
「……挿れるね、魔理沙――――ん、んんっ……」
 男根はずぶずぶとアリスの膣へ飲み込まれていき、先ほどと違ってアリスの身体に強張りがない為か差したる抵抗もなく埋まっていく。
 そして中ほどまで埋まったところでアリスの腰はピタリと止まった。
「は、はぁ、はっ……ごめんね、魔理沙……。ちょっと休憩……」
「ああ、私も少し休憩だ。気を抜いたら出てしまいそうだからな……」
「ねぇ、魔理沙……」
「ふ、はぁ……。なんだ、アリス」
「うん、ちょっと面白い事思いついたの。魔理沙のソレが八卦炉で、出てくるのはマスタースパーク」
「……ははっ、確かにそうだな。じゃあ出る時はマスタースパークが出る、か」
「ふふっ。ね、面白いでしょ。――じゃあそろそろ……」
 魔理沙がコクンと頷いたのを確認し、アリスは再び腰を沈め始めた。
 そうしてたっぷり10分程経ち、漸く魔理沙の男根はアリスの中へと収まった。
「はぁ……全部入ったよ、魔理沙……」
「ん、ああ、入ったな。……好きだぜ、アリス」
「うん、私も―――んっ」
 そうしてキスを交わし、魔理沙はゆっくりと動き始めた。
 動くと言っても、実際は殆ど揺すっているだけに過ぎなかった。
 それ以上に動くと魔理沙自身が持たない為である。
「んん、魔理、沙、は、ん、魔理沙ぁ……」
「く、は……ぁ、アリス、アリス……」
 お互いを呼び合う声の中、結合部からは少しずつちゅぷちゅぷという粘着質な水音が響き始めていた。
 潤滑油が増えてくるにつれ、段々と揺する動きは擦る動きへと変わっていった。
 それとともに、アリスの声にも少しずつ艶が混じり始めた。
「ひゃぅ、ん、はぁっ、ぁん、だめっ、なんか、気持ち、いいぃっ――」
 魔理沙は限界が近いらしく、男根をびくびくと震わせながら、ひたすらに歯を食い縛って耐えている。
「あぁぁあんっ、魔理沙ぁっ、もっと、もっと激しく動いて、もっとぉっ!」
「ぅ、ぁ、は、ぐぅ、ぅぅ、はぁーっ、はっ――」
 魔理沙はやっと感じ始めてくれたアリスにもっと感じて欲しいという思いから、どうにか射精を引き伸ばそうと奥歯が折れる程に力を込めて噛み締め、抜き差しに合わせて呼吸をしていた。
 しかしそんな事に気づかない――気づく余裕の無いアリスは漸く感じ始めた快楽にもっと溶け込もうと雁の部分まで引き抜いては一気に根元まで飲み込むという動きをしていた。
 結果、限界はそう遠くまで伸びる事は無かった。
「くっ、ダメだ、もう限界っ――出るぜ、アリスっ」
「ん、出して、八卦炉からマスタースパーク出してぇっ、中に出してぇっ!」
「あくっ、あ、ぁあああぁぁ――――――ッッッ!」
 瞬間、魔理沙の男根は中で弾けるようにして精を放ち始めた。
「ぁ……出てる……マスタースパーク、出て、る……は、ぁ、熱…………」
 中で射精が続く間、アリスは恍惚とした表情で空中に視線を彷徨わせていた。
 相当に我慢していたせいか射精はたっぷり3分程続いた。


「すぅ……すぅ……」
 行為後、余韻に浸り終わった私とアリスは揃って照れながら後始末を終えた。
 そして二人して布団に入って数分――
 アリスはさっさと寝てしまった。
 まったく気楽なやつだなぁ、と思う反面、私はアリスの寝顔が見れて良かったとも思っていた。
 まぁこの行為はアリスの立場の方が初めての時は疲れるとか聞くし、仕方ないのかもしれない。
 私の真っ平らな胸の中、アリスは安心しきった顔で寝ている。
 私はそっと後頭部に手を回す。
 撫でる感触は心地良い。
 そうしていると、少しずつ私の頭に睡魔という靄が掛かり始めた。
 私はアリスの頭を胸に抱き、広がり続ける靄に身を任せて目を閉じた。
 そして意識が落ちる寸前、私は”起きたらどういう顔で挨拶をしようか――?”と、そんな事を考えていた。

-FIN-
質問 白色マスタースパーク
よかったふつういまいち

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