沖縄県東村周辺で始まった米軍ヘリパッド建設をめぐる国の対応は看過できない。工事用重機の運搬に自衛隊機を使ったり、機動隊が抗議する人を強制排除したり、強引な進め方に理はあるのか。
防衛省は沖縄県東村と国頭村にまたがる米軍北部訓練場でのヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)建設のために、陸上自衛隊の大型輸送ヘリを投入し、工事用の大型トラックを建設現場近くまで運んだ。住民らの抗議活動で資機材の搬入が遅れているためとはいえ、米軍施設の建設に自衛隊機が使われるのは極めて異例だ。
ヘリパッド建設は、日米両政府が一九九六年に交わした合意の一つ。国内最大の北部訓練場の半分にあたる約四千ヘクタールを日本側に返す条件として、米側が既存ヘリパッドの移設を求めた。日本政府は沖縄の基地負担軽減策と強調するが、県民には米軍基地の再配置であり、機能強化だと映る。
ヘリパッドは人口百四十人余りの東村高江の集落を囲むように六カ所が計画され、すでに二カ所が完成。垂直離着陸輸送機オスプレイが頻繁に飛来している。
ヘリパッド移設が計画されてから、当時の那覇防衛施設局はオスプレイ配備について県民に情報提供する努力を怠ってきた。危険性が増すオスプレイ配備を心配する県民よりも、米軍への配慮を優先させることになった。
沖縄防衛局が工事資材を搬入したのは、自民党の沖縄担当相が大差で敗れた七月の参院選翌日。安倍政権の対沖縄政策への異議が県民から度々示されているにもかかわらず、工事を強行するのは民主主義のあり方としておかしい。
小さな集落を警察車両が物々しく列をなして走る。全国から動員された四百人とも五百人ともいわれる機動隊員が、座り込む人の手足をつかみ、ひきずる。けが人が続出し、逮捕者も相次ぐ。記者も取材を妨害されている。
ヘリパッド建設地は「やんばる」と呼ばれる亜熱帯の生態系が豊かな森。ヤンバルクイナなど希少生物が多く、世界自然遺産登録も目指している。県民の水がめでもある森の上空をオスプレイが飛び、騒音は激しい。
翁長雄志県知事は強引な工事を批判し、高江の住民や県議会は反対している。地方自治をゆがめ、人権や環境にも悪影響を及ぼす工事だ。地元の納得を得られないなら即刻中止すべきだ。
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