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【社説】

政務活動費不正 構造欠陥を問い直せ

 富山県議会と富山市議会で政務活動費(政活費)の不正取得が相次いで発覚し、議員辞職ドミノの事態だ。徹底調査と公開はもちろんだが、制度の在り方や運用を抜本的に見直してもらいたい。

 七月、当時の富山県議会副議長(自民)が書籍の領収書を偽造して政活費四百六十万円を取得していたことが明らかとなり、議員辞職に追い込まれた。

 その後、富山市議会元議長で自民会派元会長が開催していない市政報告会の印刷・茶菓子代など六百九十万円の政活費を不正取得。同僚の二市議が茶菓子代を水増ししていたことが分かり、三氏とも辞職した。白紙や偽造の領収書を使って不正を繰り返していた。まさに“常習犯”だ。

 元議長は同じ会派の五市議が使い切らなかった政活費も流用していたとされる。“共犯”ともいえる。別の自民市議や民進系市議にも飛び火した。まずは過去を含め全議員の政活費使途の調査を求めたい。全容解明なくして信頼回復への取り組みは始まらない。

 政活費とは、議員報酬とは別に視察や研修など政策立案を支援する経費として自治体が支給する公費。月額は富山県議が三十万円、富山市議は十五万円。領収書の添付を義務付けているが、各会派に前払いされている。

 活動目的があってこそ経費が発生するのに、「使い切らなければ損」「領収書があればいい」との考えだとしたら本末転倒。感覚が完全にまひしている。議会のノーチェックにも驚きだ。構造的な欠陥を問い直さねばならない。

 政活費の不正では、野々村竜太郎元兵庫県議の号泣会見が記憶に新しい。全国市民オンブズマン連絡会議によると、毎年約十件を提訴し勝訴が続いているという。

 同時に、インターネット上での領収書公開や後払いなどの見直しも進む。視察先や目的、交通手段などの事前申請を義務付ける議会もある。行政の補助金同様、必要経費かどうかを見極める手法で、見習いたい。政活費を廃止した議会も少なくないが、報酬に加算されれば透明性は担保されない。

 富山市議会は六月、月額報酬の十万円増を決めた。議員を取材していた地元紙記者のメモを、辞職した元議長が奪い取る事件もあった。その地元紙の情報公開請求で一連の不正が発覚した。

 市議会は報酬引き上げの凍結ではなく、即時撤回を議決し直すのが筋だ。その上で政活費の位置付けを含めた制度改正を望みたい。

 

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