3塁手として安定した守備を見せるだけでなく、打撃でも活躍した安部友裕は福岡、代打でいい働きをした松山竜平は鹿児島、足のスペシャリストだが守備でも打撃でも貢献した赤松真人は京都、安定したリードで投手陣を引っ張ったキャッチャー石原慶幸は岐阜、選手会長としてチームをまとめた小窪哲也は奈良。主力の多くが他県出身者なのだ。
まあ、これは当然の話で、最近では多くの球団が地域密着型運営を心がけ地元出身選手を意識して獲る傾向はあるものの、それにこだわっていては強化はできず、やはり全国から選手を集めることになる。ただ、他の球団の選手は地元の色に染まるということはあまりない。
なぜ広島だけは
選手が土地の色に染まるのか
しかし広島だけは違う。たとえば攻撃でチームを引っ張った4人、菊池にしても、丸、鈴木、田中にしても関東人というイメージはない。広島という土地の色に染まり(赤という特別なチームカラーのせいもあるだろうが)、まるで地元生え抜きの選手のようだ。
これは同じ広島を本拠地とするJ1のサンフレッチェ広島でもいえることだ。サンフレッチェの顔といえばFWの佐藤寿人。J1通算得点では川崎の大久保嘉人に次ぐ158ゴールの記録を持つ。広島愛が強く、地元サポーターからも絶大な支持を得ている。そんなことから完全に「広島の人」というイメージができあがっているが、出身は埼玉なのだ。
また今夏、広島からイングランド・アーセナルに移籍したスピードスター浅野拓磨(労働許可の問題で今季はドイツ・シュツットガルトでプレー)は日本代表に選ばれたことで三重出身が知れ渡ったが、それまでは広島生え抜きのイメージがあった。他の主力もそう。DFの塩谷司は徳島、千葉和彦は北海道、MFの青山敏弘は岡山、柴崎晃誠は長崎と他県出身だが、広島生え抜きの雰囲気を漂わせている。広島には、プレーする選手を地元の色に染めてしまう何かがあるようだ。