246センチ、イランの隠し玉
ボスニア・ヘルツェゴビナを圧倒
長年のライバル関係に終止符を打つ男が現れた。リオデジャネイロ・パラリンピック第6日の12日、シッティングバレーボール男子1次リーグB組でイランがボスニア・ヘルツェゴビナをセットカウント3−0で圧倒した。イランの新鋭、身長246センチのメヘルザードが打ち下ろすアタックは、ボスニアのブロックにかすりもしなかった。2000年シドニー大会以来、この競技で金と銀を交互に取り合ってきた両国だが、状況は一変しそうだ。
座ったままでプレーするシッティングバレーボールはネットの高さが115センチ。メヘルザードは顔が半分、ネットの上にせり出している。右手を伸ばしたアタックの最高到達点が230センチ。対するボスニアのブロック最高到達点は平均152センチ。止めるすべがないのは一目瞭然だった。
今年3月に代表入りしたメヘルザードはまもなく29歳になる。競技歴が5年と短いのは、不自由な足を恥じて10代半ばから6〜7年間、家に閉じこもっていたからだ。16歳の時に自転車で転び、骨盤を損傷したのが原因で右脚の成長が止まった。一方で成長ホルモンが過剰に分泌される病気で身長は伸び続けた。右脚は左脚より15センチ短くなり、歩くのが困難で車いすに乗る。
転機はテレビ番組への出演。イランで最も身長の高い男性と紹介されたのが、シッティングバレーの関係者の目に留まった。メヘルザードは12日の試合後の記者会見で、最後に一言だけ言わせてほしいと断り、マイクを握った。「私のように障害を苦にする人は世界にいくらでもいる。だが、チャンスさえ与えられれば人は変われるのだ」
イランの巨大な隠し玉に驚かされたボスニアだが、決勝で再び対戦する可能性は高い。ボスニアが強豪になったのは、90年代の内戦で負傷した兵士や、地雷で足を失った若者を中心にチームを作ったからだ。20万人が犠牲になった傷をばねにして育ったチームは国の誇りだ。元軍人たちが対策をどう講じるか、楽しみだ。【朴鐘珠】