2016年「夏」アニメも終わろうとしている9月半ば。
またしても視聴が間に合わず少しづつ――しかし確実に――夏アニメはどんどん溜まっていき大半の作品は最新話に追いつけていない状況だ。むしろ最新話から5話前の回も見れていないものがいくつもある。
このままでは春アニメと同じように「来季に持ち越してまで前季を視聴する」運命を辿るのも時間の問題だろう、と焦っているのだがもうどうしようもないので、せめて未だに書いてなかった春アニメの総括はあげておきたいなと思った。
今回はいつもより深入りせず、メモに留まるだけにしたい。なので人物名や名称の正確性が下がっている(雑に書くので)そこを考慮して頂けると幸いである。
ちなみに取り上げる作品はこんな感じ。容赦なく最終回に触れるので未視聴の人はネタバレ注意で。
- (1)マヨイガ
- (2)くまみこ
- (3)甲鉄城のカバネリ
- (4)ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?
- (5)キズナイーバー
- (6)ジョーカー・ゲーム
- (7)学戦都市アスタリスク・二期
- (8)ワガママハイスペック
- (9)あんハピ♪
- (10)ふらいんぐうぃっち
- (11)彼女と彼女の猫
- (12)宇宙パトロールルル子
- おわり
(1)マヨイガ
30人の男女が「ななき村」へ人生やり直しツアーに参加しセカンドライフを送ろうした矢先、その村で奇々怪々なことが起こりパニックになるアニメ。
群像型でいろいろな人物の心情をあっさりと描き出すところや、伝奇作品の雰囲気が表現されているのが特徴的。かつ登場人物は皆まじめに怪奇現象に取り組むのだが、そのまじめさがとぼけた行動に繋がっているのが変なおかし味を出しているのも必見である。
またこのツアーに参加する人は「そうするだけの理由」があり「そうするだけの理由」を克服、無視する点が本作の中心軸だろうか。
このため割と分かりやすい物語ではあるものの、予定調和の感が拭えないのがやや飽きに繋がってしまう……かなと思えた。人によっては駄作認定してしまうこともありえそうだ。私としては「悪くはない」に尽きる作品で、かといって時間を費やしてまで見て欲しい作品ではないという結論になる。(いやでも、悪くないと思いますよ?)
ただしラストシーン。皆が皆自身のコンプレックスを乗り越え現実へ戻るのではなく、ななき村に留まる人を描いたのは好印象。
「コンプレックスを克服」することだけが最適解ではないし、個々人によっては逆に見て見ぬふりをしながら生きることだって充分に価値があることを示す。そういう人の多様性を垣間見えるのは好きだったりする。
それに、村に残る人々はあそこにいてもどうしたって「自分」と対峙せざるをえないので、それはそれで苦しいことだろう。どちらも辛いが、どちらに進むかを自分で選ぶことができる「選択」のお話と見ても面白いと思う。
(2)くまみこ
本作は1-11話までは「マチとナツのほんわかライフ」だったものが、12話によって「マチとナツの"歪んだ"ほんわかライフ」 になってしまった。
可愛かったマチ、やさしいナツ、スローライフ独特の癒やし空間はただの一面でしかなく――"本当"は子離れできない熊が少女に依存しきり、少女は少女で向上する意志が薄弱な人間でしかなかったことが露わになる。
11話と12話にはとても大きな『くまみこ世界観』の隔たりがあるが、しかし12話というたった一つの回が遡及的過去形性を促しそれまでのお話もろとも『歪んだくまみこ世界観』へと書き換えてしまったのが本作の魅力であり、ユニークな部分だ。
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上記事でも書いたが、私はこういうの大好きだったりする。「ナツはそういう熊じゃなかったはずだ……」「馬鹿め!残像だ!」「なんだってー!!」「お前が見ていたのは仮初のナツでしかないんだ」とがつんと頭を殴られる痛快さ。
しかし「マチとナツのほんわかライフ」を期待していた場合、呆然としてしまうかもしれない。いやしてしまうだろう。後味の悪い作品なので人を選ぶと思う。
でも、こういう人と人の"歪み"を描くアニメが好きな人は、見て損はない。
(といいつつ私的満足度は1話の時点で★★★★だったけれど最終回全て通すと★★★であることをひとつ)
(3)甲鉄城のカバネリ
終末世界を描いた『甲鉄城のカバネリ』に覚える疑惑はこの一点だけである。
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上記事とは違う言い方をすれば
序盤では「人―世界」の構図が、美馬の登場により「人―人」になってしまった。かといって序盤で提示された「人―世界」に戻されることなく「人―人」で終幕してしまったのが「『甲鉄城のカバネリ』という作品を描き切ってはいない」という不和に繋がっている。そう言えるかもしれない。
ここを除けば本当にいい作品だったと思う。
(4)ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?
ネトゲで(形式上)結婚していた人は、実はネカマでもなんでもなく、正真正銘の女の子だった。その女の子は「ネトゲで結婚しているのだからリアルでも私たちは夫婦なんです!」と虚構と現実は一緒だと主張し、リアルでも同じ振る舞いを男の子に求めるのだが……
最初は困惑していた男の子も、ネトゲ(虚構)と現実を行き来しながら両者の差異性を発見したり、実は興味深い共通項を見つけたりしながら彼らの恋愛模様が進展していくところが見所であり、またネトゲの楽しさが伝わるアニメになっている。
ほとんどの話数で英騎と亜子達はネトゲに従事しているので、ネトゲを知らない人は「なるほどこういうものね」と知見が得られるし、「どうしてこうなった」などのネットスラングにも強くなっていくに違いない。
というか、大半の視聴者はそんなこと分かりきりながら楽しむ感じだと思う。基本的にクスっと笑えて馬鹿やってふんにゃりした雰囲気なので、そういうのが好きな人は是非おすすめしたい。
私は『ネトゲ嫁』とても好きで、虚構と現実の対比してそこから自分が「大事」だと思うものを選んでいくところとか、亜子がリアルに押し潰されてるのを英騎がそっと手を差し伸ばしたり、そういう部分にいちいちうるっとしてしまう。心あたたまる要素に弱いのかもしれない。
劇中曲がさりげないのだけどさりげなく良い曲が多いので、視聴の楽しさを支えているところもいい感じである。
とまあ、いろいろ言ってみたが実際のところ本作のいいところって言葉にしにくい。なんだろうね。ただタイトルで敬遠していた人は(タイトルの地雷臭分かります)ダメアニメでもなんでもないので、一度見て欲しいところ。
おすすめ度:★★★★
(5)キズナイーバー
多様な人間と「痛み」を共有し、他者理解を深めるアニメ。
EDの出来が素晴らしいということ以外、特筆すべきことがなくて、私はこれどう語ればいいのか迷っている。
確かに『キズナイーバー』他者理解を深める作品なのは間違いないんだけど、その方向性が「他者とは何か」「理解とは何か」といった根源的な部分にメスをいれる、追求しまくる感じではない。
どちらかというと、「痛み」の一点なのである。痛みとは何か、そういうことに重きをおいた他者理解と言っていいかもしれない。なるほど。他者理解にもいろいろあるのだな。だからか概念的な感じではなく、実生活の範囲に留まっているのが本作のポイントかもしれない。
いやでもSFちっくだけど。
私が想定しているのよりは・・・という意味。
(6)ジョーカー・ゲーム
これどう説明すればいいのか。もうミステリースパイアニメとだけ言っておけばいいだろう。(説明放棄)
おすすめ度:★★★★
(7)学戦都市アスタリスク・二期
二期の好きな点は、刀藤綺凛の刀アクション、シルヴィリアが歌う『Lonely Feather』のシーンがドキドキワクワクするものになっている。特に刀藤綺凛の足さばき、身体移動、刀を斬り付ける動作はいちいち身体移入度の高いアニメーションになっているので見ていて楽しい。
とはいえ基本的には予定調和のような展開ばかりなので、こういった物語をたくさん見ている人は辛いとは思う。一期の保持されていた作品外形の質も二期になってからは衰えてしまっているので、積極的に見る必要性はないだろう。
3期がもしあるとして、それを見るかと言われれば……ちょっと厳しいかな…っていうのが私の所感になる。特別何かが悪いわけではないんだけど、視聴するための時間を割くことに抵抗を感じる。
アスタリスクを見るならもっと面白いアニメを見たい。
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(8)ワガママハイスペック
ADV原作5分枠ショートアニメ。
見ることにさほど抵抗感がないので5分アニメのいいところだよねーって思いながら見てた。語りたいところは特にないけど、息抜きにこういう作品に接するのいいなと。
(9)あんハピ♪
ごめんなさい。8話あたりで脱落してしまった。
でも語りたいことは結構あって、ヒバリが長年恋している工事現場の看板(オジギビト)について触れていきたい。
というのも、彼女は人ではなく無機物に恋をし、感情を高ぶらせている。目に見える範囲にオジギビトさんがいれば顔を真赤にし、こそこそと近づいていくように彼女の気持ちは真剣と書いてマジなのだ。
私はこれに最初クスっと笑ってしまったのだが、でも、世の中には無機物を愛する人がいるという単純な事実を無視しているようなあ……と改めた。
そういう視線があることをヒバリも了解しており、自身の気持ちを周囲の者には気取られないようにしていたのだが、いろいろあってハナコとボタンに知られてしまうと二人は笑いもせず「そうなんだ。ヒバリちゃんが好きな人はこの人なんだね(にっこり)」と理解を示す。なんて出来た女の子なんだろう。ヒバリも自分の理解を示してくれるそんなハナコ達と友達になりたいと思っちゃうようなあって感心しながら見ていた。
『あんハピ♪』はコメディ色の強い作品なので、ヒバリのそういう在り方に視聴者は「笑って」いいのかもしれないけど、彼女の気持ちを考えると複雑だなあって……なる。すこしでも笑ってしまった自分が嫌になる後味の悪さがそこにはある。
だって「人」は「人」に恋することが正しいわけではない。それはただそういう傾向があり、そういう比率が大きいだけのことで、それはそこから外れたものに懸想することを咎められる理由にはならない。何にだって恋をしていいはずだ。ヒバリが工事現場の看板に恋情を向けたように。
しかし多数派の価値観から外れた場合、ひどく生きづらい状況がそこにはある。少数派は自分の嗜好・志向をひた隠しにして生きなければいけないことが多く、ヒバリのようにわざわざ周りに明示化しないこともよくあると思う。でも例えそういった他者の在り方を知っても それだけで 笑うというのは私はあまり好きじゃないのだろう。やってしまうことはあるけれど、積極的にやりたいものではない。だから今後はしたくないなって……そういうことをつらつらと考えてしまった作品だ。
そういえば何故あんハピ脱落してしまったのかというと、一つは時間、二つ目は(私には)面白くなかったという単純な要素だった。
(10)ふらいんぐうぃっち
春アニメで(視聴していた中で)一番のおすすめを挙げるならば、『ふらいんぐうぃっち』だろうか。
本作は「日常系」に「魔女」という要素が組み合わさったのが特徴で、新米魔女と周囲の人々のささやかな出来事が描かれている。
日常作品って日常にひそむなんでもなさを取り上げそれを指摘・再発見することで「世界に不思議なことがなくても実は面白いもので溢れてるんだぜ!」を見出す系統だと私は思っている。見飽きた生活を違う視点で切り取り、解釈することで、新しい一面を展開させる。
例えそこに宇宙人、未来人、超能力者がいなくとも、日常には日常なりの豊かさがあり、日常には日常なりの楽しさがあることを教えてくれるのである。
本作でいえば5話の『使い魔の活用法』。
チトさん(猫)はいつもどんなことしているのかなー?どこにいっているのかなー?という興味に駆られた倉本千夏が後を追いかけるシーンがこの回を象徴するものとなっている。でも別にそこには「あっ」と驚く不思議なことはない。ただ気ままに行動する猫をつぶさに観察する少女しか描かれていない。
けれど、それが楽しいのだ。
チトさん(猫)の歩き方、桜の木の上にジャンプする挙動、仕草、そういうのがいちいち可愛くて仕方がないし、千夏も千夏でそんなチトさんに振り回される様子が和む。
(チトさんかわええ………)
日常作品はこういった「なんでもないこと」を楽しく見せることができると、良い作品になるのかなーと思いもした。雰囲気の出し方とかも密接に関わってくるし、それにはやはり音楽の質や挿入の仕方も大事になってくる。『ふらいんぐうぃっち』はアドリブのようなBGMも結構あるので、印象に残っている。
◆
そうそう、そういえば『ふらいんぐうぃっち』って既に「魔女」という不思議なことが違和感なく存在し、倉本千夏のような一般人の生活に溶け込んでいるのが面白い。
先述したように日常系の魅力の一つが「なんでもない事を指摘・再発見」することであれば、魔法というのはそれをたちまち無に帰してしまう。不思議の順列が魔法>日常ならばきっとそうなるだろう。
けど本作はそうなっていない。
魔法も怪異も空飛ぶくじらも「日常」の延長線上で語られており、両者の価値に大きな差はなくなっているのだ。どんな事象も「日常」に包まれて描かれているのが『ふらいんぐうぃっち』の見所のひとつかもしれない。
おすすめ度:★★★★★
(11)彼女と彼女の猫
全4話の猫と彼女の物語。
疲れているときに見ると自然に視界が歪んでいくような、温かさと悲しさを含んだアニメ。(たまに膝を折ることもあるかもしれない)
おすすめ度★★★★
(12)宇宙パトロールルル子
最初から最後まで勢いでぶっちぎるショートアニメ・宇宙パトロールルル子。 理屈?論理?んなもんどうだっていいんだよ!しゃらくせえ!って感じ大好き。
毎話何が起こっているのか考えもせず、ただただ頭を空っぽにして画面を注視していた。ショートアニメ特有の「即効・快楽スイッチ」とでも呼ぶべきもので簡単に快楽を引き出されていくことに慣れてしまうと30分アニメは見てられない。というかツッコミが追いつかない。
この怒涛の展開――情報の奔流を体験するべく見るべき作品だと言っていいだろう。(ルルちゃん可愛いのもいいよね)
おすすめ度:★★★★
おわり
春に放映開始したクロムクロ、マクロスΔ、Reゼロはまだ終わっていませんので、次の総括で書きます。
それにしても1話の時点ではもうすこし見ていたんですが、いつの間にか12作品に絞られていきましたね。でもそれは面白くないから見なくなったというよりは、キャパが足りない……というどうしようもない事実だった記憶が。(毎クールいつもここが障害になってしまうのはどうにかしたい)
『ふらいんぐうぃっち』は漫画よりアニメが好きになったくらいに、いいアニメ化だったなあー……としみじみしてます。チトさん(猫)がこんなに可愛いとは思いもしませんでしたよ。うんうん。
ちなみに整理しておくと、おすすめ度をつけたのは全部で12作品中5作品でした。お、結構上々かも。
マヨイガ
くまみこ
甲鉄城のカバネリ
ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?
キズナイーバー
ジョーカー・ゲーム
学戦都市アスタリスク・二期
ワガママハイスペック
あんハピ♪(脱落)
ふらいんぐうぃっち
彼女と彼女の猫
宇宙パトロールルル子
来季もこんな楽しいアニメライフ送りたいなと思います。とはいえ、あと2週間ほどで夏アニメ終わりますけどね(汗)
ではまた。
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