以前の記事で、ガムテープで新宿駅の案内表示をするガードマンの、佐藤修悦さんについてお伝えした。佐藤さんは駅構内の安全を考えて、ガムテープを使って「左側通行」や「足元注意」などの文字を描く。ガムテープの魔術師といっても大げさではないだろう。
一体どうやって文字を形にするのか？ その真相を確かめたいと思い、特別にお願いをして、「ロケットニュース24」という文字を書いてもらうことにした。その様子を目の当たりにしたところ、あの「修悦体」独特の丸みを帯びた文字に秘密が隠されていることがわかったぞ！
・キャンバスはプラスチックボード
2016年9月某日、佐藤さんに当編集部まで足を運んで頂いた。佐藤さんは現役のガードマンであり、新宿駅地下通路の拡幅工事の現場で働いている。勤務時間は夜間ということもあり、日中の貴重な時間を割いて、ガムテープで文字を書く様子を説明してくれたのである。動画も撮影したので要チェックだ！
今回佐藤さんがキャンバスとして使用したのは、プラスチックボードである。引っ越し作業で養生として使われる、薄くて軽い板だ。それにガムテープを貼って下地としている。これにガムテープで文字を描く。ちなみに駅では、仮設のパネルに直にガムテ―プで文字を書くことが多いそうだ。
・カッターにこだわりは？
今回使用する道具は三角定規とスケール、それにカッター。カッターはこだわりのモノを使っているのかと思ったら、「こだわり？ 特にないよ」とのことだった。
・基準となる線が大事
今回は赤地の面にアルファベットで「Rocketnews24」、そして黒地の裏面にカタカナで「ロケットニュース24」と書いてもらうことになった。まずは赤地にアルファベットだ。
まず最初に基準となる線を、プラスチックボードに引いて行く。全体の工程のなかで、ここが一番重要とのこと。この線引きがズレていると、完成する文字のすべてがズレズレになってしまう。
そして、次に文字を配置していく。今回はアルファベットごとに色を変えるらしく、文字ごとにテープを取り換えて、縦線・横線と引いて行く。
次に文字からはみ出している余分なテープをカット。
・文字を掘り起こす
余分なテープと、隣り合う文字の間のテープをカットしていったら……おお！ それらしくなって来た!! 佐藤さんの作業の様子を見ていると、「文字を書く」というよりも、「文字を掘り起こす」みたいな感じがする。まるで発掘しているみたいだ。
余分なテープをぜ～んぶカットしたら完成！ ではないよ。実はここからが佐藤さんの腕の見せ所。修悦体の独特の柔らかさは、ここからの作業にかかっている。
・文字の丸み
文字の角を削って丸みをつける。その削ったパーツを、文字の内側に使って、曲線をよりキレイに仕上げるのだ。
これによって、全体的に柔らかさが出て、親しみを感じる文字へと変化する。これぞ修悦体！
文字ごとに色違いにしたので時間はかかったが、それでも約1時間半で完成。お見事！
・次はカタカナで
続いて裏面。黒地に白テープでカタカナの「ロケットニュース24」を書く。プロセスはアルファベットの時と同じ。まずは基準となる線を縦横に引く。
・まったく文字には見えないけど……
先ほどは色違いで文字を構成したので、基準線の上から1文字ずつ書いて行ったが、今回は基準線をそのまま文字に活用していく。したがって、必要な斜め線を引いた時点で「8割完成」とのことだ。まったく文字に見えないんだけど、これがどう変わるのか？
余分なテープをカットしていくと……。何だか意味ありげな記号みたいだ。
さらに手を加えていき……。
角を丸くして文字を馴染ませていくと……。
できた！ 修悦体による「ロケットニュース24」の完成～!!
・ガムテープを深く理解
実際に作業工程を見ると、手間と工夫が込められていることが良くわかる。佐藤さんは慣れた手つきでサクサクと作業を進めていくが、やってみると「こうはならないだろうな～」と思った。とにかく印象的だったのは、佐藤さんが楽しそうに作業をする様子だ。ガムテープに対する理解の深さは、愛といっても言い過ぎではないかもしれない。
もしも新宿駅で佐藤さんの案内表示を見かけたら、近くに寄って良く見て欲しい。こまやかな工夫にきっと驚くはず！ そういえば新宿駅だけではなく、小田急線下北沢駅にも佐藤さんのガムテープ案内表示があるので、探してみてくれ!!
Report：佐藤英典
Photo：Rocketnews24
▼動画「修悦体」ができるまで
▼修悦体による「Rocketnews24」。
▼同じく修悦体の「ロケットニュース24」
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