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    人気マンガ「こち亀」終了 40年を振り返って

    文化部 西條耕一
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     少年漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1976年から40年にわたって一度の休載もなく連載を続け、世代を超えて親しまれた「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(こち亀)。この人気漫画が今月17日に発売される最新号をもって連載を終えることになった。 作品を愛する多くの人々が衝撃を受け、終了を惜しむ声や感謝の声が上がっている。作者の秋本治氏に作品への思いと現在の心境を聞いた。
    • 作品の連載終了について語る『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の作者・秋本治さん
      作品の連載終了について語る『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の作者・秋本治さん
     ――40年間、連載を続けられた秘訣(ひけつ)は。
     楽しんで描いたので長続きしたのかな。漫画を描いていてつらくなったら駄目ですね。締め切りが厳しいなりに楽しめたのが良かったのでしょう。ただ、長く続けるために最初の担当編集者とは3か月のスケジュールを決めました。ここでアイデアを考えて、それから作画をしてと、それを守れば大丈夫という日程を40年間、心がけました。
     ――1話完結のスタイルも作品に影響したか。
     そうですね。次のネタを考えるだけでも精いっぱいなのは、昔から変わらない。気がついたら40年というのが正直な感想です。当初は大きな事件もない派出所の話なので連載は難しいと編集者に弱音を吐いたら、「とにかく10本描こう」と言われました。それがコミックス1冊になるところまで、そうすると次は2巻も、といっているうちに200巻になったという感じです。
     ――思い出の回は。
     59巻に収録された「おばけ煙突が消えた日」の話です。悪ガキだった少年時代の両さんと臨時の女性の先生とのふれあいを描いた作品。子供のころの東京の下町にあって気になっていた煙突のことを、図書館に行って調べたりしました。
     ――連載を始めるきっかけは。
     元々はジャンプに投稿した読み切りでしたが、載ってしばらくしても、「両さんが面白かった」と読者から手紙が来たので連載になりました。投稿自体、ジャンプが初めてでした。
     ――両さんのモデルはいるのか。
     「こち亀」の前にベトナム戦争について描いたことがありましたが、テーマとしては重かった。今度は軽くて楽しい話を描いてみたいと思っていた時、真面目ではないお巡りさんで、こんな人がいれば面白いんじゃないか、と思いついた。モデルはいません。
     ――秋本さんにとって両さんとは。
     友達かな。ただ、僕は真面目で冒険せず、安全な道を選ぶ性格です。お祭りやスポーツは苦手でしたから、両さんとは正反対の性格ですね。でも、描いていて、自分の内側にはこういう性格もあったのかなとは思います。
    • 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』コミックス200巻表紙 (C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
      『こちら葛飾区亀有公園前派出所』コミックス200巻表紙 (C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
    • 59巻表紙イラスト(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
      59巻表紙イラスト(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
     ――おもちゃがよく登場した。
     (舞台となっている東京の)葛飾区は元々おもちゃ工場が多く、新しいものが好きだったのと、おもちゃで遊ぶ両さんも面白いかなと思ったので。こち亀はサブカルの歴史のようにいわれるが、結果的にそうなっただけです。
     ――世相や流行にも敏感だった。
     最初は身近な話を描いていたが、100巻を超えたあたりから、新しいものをどんどん入れようと思った。たまごっち、プリクラ(プリントシール)とかを紹介するうちに、年配の人が読んでも面白いし勉強になると気づいた。じゃあ、パソコン、携帯も描こうということになった。
     ――40年間で苦労したことは。
     毎回どうなるかなと緊張感はあったが、案ずるより産むが(やす)しで、キャラクターが勝手に動いてくれた。たとえばドローンを両さんだったらどう使うか、(両さんの上司の)大原部長だったら、と描いているうちに毎回出来上がった感じです。
     ――主人公の顔が次第に変化していったが。
     23歳で描き始めて、僕自身も成長したということでしょうね。33歳で描いた両さんと43歳で描いた両さんはこちらの目線が違うので、性格も変わります。当初は凶暴だった両さんも自然に下町らしくのんびりした感じになりました。
     ――新しい作品を描くという話だが。
     構想はあるが、まだ具体的には考えていない。何か読み切りを描きたいですね。でも、こち亀の最終回(9月17日発売)がまだあるので、それが終われば考えようかなと思っています。

    100編以上の投稿作品から選ばれた「こち亀」

    • 「こち亀」の思い出を語る集英社・堀内丸恵社長
      「こち亀」の思い出を語る集英社・堀内丸恵社長
     「こち亀」の初代編集者で、入社2年目から10年間担当した堀内丸恵・集英社社長にも話を聞いた。
     ――作品の最初の印象は。
     「こち亀」は1976年、週刊少年ジャンプ編集部に投稿された作品の一つです。劇画調の圧倒的な迫力のギャグと両さんの個性的なキャラクター、長い作品名とどれもが強烈でした。当時、100編以上の応募があったと思いますが、これは(上司による)2次選考に残さないといけないなと思いました。
     ――秋本さんの印象は。
     両さんとは正反対の物静かなひ弱な感じの青年でしたが、漫画にかける思いは熱かった。とにかく漫画を描くことが一番の楽しみで、自分が満足するまで妥協しない性格でした。
     ――40年も連載が続いた。
     当初は1話描くのに2週間もかかっていた。それでは週刊連載ができないので、限られた時間でベストを尽くす方針に少しずつ変えてもらいました。それでも連載が始まり、「何とか10回は描きましょう」「次は30回」「今度は50回」と励ましているうちに、私の担当で10年、それがもう40年ですか。私が社長になったことより、そっちのほうが驚きますね(笑)。
     ――長く愛される理由は。
     まず、子供たちが関心のあるテーマを取り入れ続けたことでしょう。それと両さんのキャラクターです。お巡りさんは本来、怖がられる存在なのに、遊び好きだけど正義感が強く、少年の気持ちを持っていて、警察官にはふさわしくない行動をしているのに地域の住民に慕われている。両さんをたしなめる大原部長、同僚の中川らほかの登場人物も個性的です。また、締め切りを必ず守る秋本さんの自己管理、体調管理も大きかったと思います。
    • 56巻表紙(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
      56巻表紙(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
     ――いろいろなテーマを扱ってきた。
     スーパーカーなど、その時代に流行しているものを取り入れましたが、ボーナス、クリスマス、オリンピック、大掃除など歳時記的な要素も強かった。そうしたテーマを取り上げる作品の背景に、お祭りや駄菓子屋など、常に秋本さんが生まれ育った下町の風景があった。
     ――「こち亀展」への期待を。
     40年、200巻という大きな節目に、こち亀の歴史を見てもらうことで日本の大きな流れが分かると思います。また、東京の下町の40年の変遷も楽しめるでしょう。
     ――最後に連載終了を決めた秋本さんへ。
     「長い間、ご苦労様でした」「楽しい作品をありがとうございました」の二言しかありません。

    「こち亀展」開催

    • 「こち亀展」キービジュアル (C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
      「こち亀展」キービジュアル (C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
     週刊少年ジャンプ連載40周年を迎える人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の展覧会が9月14日から、東京・日本橋高島屋8階ホールで開かれる。厳選された原画や映像に加え、作者の秋本治さんが描き下ろして神田明神に奉納した約8メートルの絵巻物も展示する。
     【会期】9月14日(水)~26日(月)午前10時30分~午後7時30分(最終日は午後6時閉場)、入場は閉場30分前まで
     【会場】東京・日本橋高島屋8階ホール(03・3211・4111)
     【料金】一般800円、大学・高校生600円・中学生以下無料
     主催=こち亀展実行委員会(読売新聞社、集英社)
     展覧会情報はこちら
    2016年09月13日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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