「早くも明確に現れた”新ペップ戦術”、そして正攻法で対抗するユナイテッド」イングランド・プレミアリーグ マンチェスター・ユナイテッド-マンチェスター・シティ
ともにモウリーニョとグアルディオラというワールドクラスの監督へと交代し、彼らが十分満足出来るスター選手を思う存分補強しまくった両チームの対戦は、もはやマンチェスター・ダービーと呼ぶだけに留まらず、世界一の金満ダービーと言って差し支えない注目の対戦になった。
やはり何と言っても試合最大のポイントは、グアルディオラがシティの選手でどういうサッカーを目指しているのかという点だが、それについては早くもハッキリとした”ペップ・カラー”を見せて来たと言える。
シティのフォーメーションは、形的には4-1-4-1だが、インサイドハーフには何とシルバとデ・ブライネという従来はウイングやトップ下でプレイしていた選手を起用して来た。シティはマイボールになると、SBが中に絞りながら高く上がった2-3-4-1という形に変化し、2列目に並んだノリート、シルバ、デ・ブライネ、スターリングが中に入ったり外に出たりとダイアゴナルな動きでボールを引き出し、そこにSBがオーバーラップで絡むなど、極めて分厚いビルドアップを見せて来た。
そして1トップに入ったイヘアナチョは、事実上の0トップとして中盤に降りてユナイテッドのCBを引きつけ、出来たスペースに2列目の4人が入り込む。その中で特に目立つのが、左サイドでシルバとノリート、コラロフが絡んで崩し、右サイドからスターリングやデ・ブライネが中央に走り込んでクロスに合わせる形である。
前半のうちに挙げたシティの得点は、ロングボールをイヘアナチョが流してデ・ブライネがブリントの前で拾って決めたものと、ゴール前の混戦からデ・ブライネのシュートがポストに当たったものをイヘアナチョが押し込んだ2点だったが、上記の攻撃にユナイテッドの守備陣は全く対応できず、ホームでほぼやられっぱなしの40分間だった。
ただグアルディオラにとってやや誤算だったのは、バルサから獲得して早速先発起用したチリ代表GKブラボの出来。グアルディオラのサッカーにとって不可欠である足元の技術を買っての事だろうが、イブラヒモビッチ、ルーニー、ポグバとフィジカルモンスターが揃うユナイテッドの攻撃に対して明らかに気後れしていて、前半42分にクロスをキャッチしようとしてファンブルし、こぼれ球をイブラヒモビッチにムチのように足首がしなるボレーを決められて1点を返されてしまう。
これで前半は息をしてなかったユナイテッドが突然復活、後半からはエレーラとラシュフォードを投入、ポグバを1列上げて個人のフィジカルとスピードでゴリゴリと突き進むスタイルに変更、シティはやむなく本来の4-1-4-1でゾーンを引いて守る形に変更せざるを得なくなる。が、さすがにユナイテッドのペースもそこまで長続きはせず、徐々にシティがペースを取り戻してフェルナンジーニョやデ・ブライネがカウンターから決定的なシュートを放つがこちらも決められず。
最後はユナイテッドが3バックにしてポグバとフェライニを前に上げ、トリプルタワーにマルシャルとラシュフォードがクロスを上げるという、日本代表が受けたら毎分ごとに失点しそうな恐怖のパワープレイを仕掛けるものの、シティはイヘアナチョをDFに下げる6バック状態で何とか耐え忍び、かろうじて2-1と逃げ切ってマンチェスター・ダービーを勝利で飾った。
シティは最後こそアップアップだったが、間違いなくペップスタイルは根付きつつあり、それがプレミアでも十分威力を発揮できる事をこの試合の前半で証明したと言えるだろう。ユナイテッドのほうは、まだ各選手がボールを持つとプレイの判断に迷っているところがある。特に右ウイングに入ったムヒタリアンは、イブラヒモビッチとルーニーにボールが集まるので遠慮したようなプレイになっているのが気の毒だった。選手の個人能力的にはシティを上回っているだけに、彼らをどう有機的に組み合わせられるか、モウリーニョの手腕に期待したい。
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2016/09/13 | イングランド・プレミアリーグ
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