これを機に、不適切な営業の根を断ち切らねばならない。

 教科書会社が高校に教材類を無償提供していた問題で、文部科学省が調査結果を公表した。

 6社が40都道府県の271校に対し、計約2千万円相当の問題集や指導書を配っていた。一方で、調査にあたった都道府県教育委員会のすべてが「教科書採択に不公正な影響はなかった」と答えたという。

 本当だろうか。疑いは残るが、今回の調査で一連の不祥事はひとつの区切りを迎える。

 三省堂が検定中の教科書について小中学校の校長らの意見を聞き、謝礼を払っていたことが発覚して約10カ月。問題は他の小中や高校の教科書会社にも広がり、業界を覆う不正な営業実態が明らかになった。

 会社側だけでなく、金品を受け取った学校や教員、教委の関係者も教科書への信頼を傷つけた。その責任は重い。

 教科書協会はこれまでの業界ルールを強化し、役職や立場を問わず、教員に意見を聴く際に対価を一切支払わないことを宣言した。今後、疑念を持たれないための当然の対応だ。

 文科省も罰則を強化する。

 国が「不公正な行為」があったと判断すれば、次の検定申請そのものを認めず、門前払いにする制度を設ける。その基準づくりを、文科省は関係する審議会に求めた。

 贈賄など明らかに違法な行為でなくても、教科書を発行させなくするという厳しい措置だ。運用を誤ると影響は大きい。審議会には、慎重な議論と説得力のある結論を求めたい。

 気になるのは、不正を防ごうとするあまり、出版社と学校の距離が広がる傾向があることだ。営業担当者との接触を控える学校は、現に増えている。

 教科書を良くするには、使っている教員の声を生かすことが欠かせない。

 文科省は教科書の検定が終わった後、各社合同で教員向けの説明会を開けないか検討している。それだけでなく、日常から率直に意見を交換できるようにすることが重要だ。

 2020年度から小中高で順次始まる次の学習指導要領は、「何を学ぶか」だけでなく、「どのように学ぶか」を重視し、子どもたちがアクティブ・ラーニング(能動的な学習)に取り組むことを目指している。

 この改革を進めるには、教室の実態をふまえ、教科書を大きく変える必要がある。

 子どもの学びを豊かにするために、教科書会社と学校現場は回路を結び直してもらいたい。