韓国で初めて、夫を強姦(ごうかん)したとして起訴された被告の女に対し、裁判所は強姦容疑については無罪を言い渡した。ソウル中央地裁刑事第26部(イ・ジェソク裁判長)は9日、被告(41)に対して夫を監禁したことについては認めながらも、強姦については無罪とし、懲役2年、執行猶予3年を言い渡した。
被告は昨年5月、ソウル市内の自宅で、知人と共に夫を梱包(こんぽう)用テープとひもで縛り、約29時間監禁した。
被告は夫に「浮気をしたのだから離婚の責任がある」と言うように強要、夫の服を脱がせて強制的に性関係を持ったとして起訴された。被告は検察の取り調べに「夫に過ちを認めさせて結婚生活を修復しようと思った。もし、それがうまくいかなければ離婚訴訟に有利な資料を確保するつもりだった」と犯行の経緯を説明した。
これは、2013年に大法院(日本の最高裁判所に相当)が「夫婦間でも強姦罪が成立することがある」という判例を出して以降、妻が夫を強姦したとして起訴された初の事件ということで関心が寄せられていた。
同地裁は「被告の夫は手足が縛られていたとはいえ、助けを借りトイレに行ったり、テーブルでパンを食べたりするなど、限定的な活動が可能な状態だった。夫が望まない性的関係を持ったと見る余地はあるが、抵抗を抑圧するほどの暴力があったと見るのは難しい」と判決理由を説明した。また、被告と夫が結婚生活について長時間話し合ったことも「強姦罪」を認めるほど強圧的な雰囲気ではなかったと判断した根拠だとしている。
ソウル市内のある弁護士は「事件前後の状況を考慮すると、手足が縛られていただけでは強制と認めるのが難しいということだ」と語った。