バッテリーの欠陥が問題となっているサムスン電子の最新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」をめぐり、米国の政府機関などが相次いで使用中止を呼び掛けるなど波紋が拡大している。米連邦航空局(FAA)が8日(現地時間)、同製品の航空機内での使用中止を勧告したほか、9日(現地時間)には米消費者製品安全委員会(CPSC)も「電源を切り、使用を中止するように」と呼び掛けた。欧州、カナダ、日本、インドの航空当局も相次いでこの動きに同調したため、韓国の国土交通部(省に相当)も10日、同製品の機内での使用中止を勧告することを決め、同日にサムスン電子は韓国国内のユーザーに対し、使用中止を呼び掛けた。サムスンのスマートフォンが全世界で使用中止措置に直面するという初めての事態が起きたのだ。
サムスン電子は世界で販売した250万台のギャラクシーノート7を全量リコール(無料回収・修理・交換)すると発表し、これで事態は収拾するかと思われたが、米国の複数の政府機関が同製品の使用中止を呼び掛けたことで、サムスンブランドは大きな打撃を受けることになった。IT業界では「米当局が自国の企業を守るために過剰な措置を取った」との声も聞かれる。仮にそうだとしても、欠陥のある製品を作ったサムスンの責任が消えるわけではない。
今回の事態は、技術を最優先に考えなければ企業にどのような危機が襲い掛かるのか、ということを示してくれた。サムスンが米アップルに追い付いたのも技術のおかげだった。ギャラクシーノート7も虹彩認証などアップルの先を行く機能で注目された。しかし、製品の早期発売を優先して切羽詰まったスケジュールで事業を進めていたせいで、バッテリーの問題を見逃してしまった。世界的に最高の企業になるためには「技術最優先」が信仰レベルに達しなければならない。この点でサムスンは未熟だという事実が明らかになった。
今回の事態が2006年のソニーのPCバッテリー加熱問題や09-10年のトヨタ自動車の急加速問題 のように、企業の危機に発展するような事態に至ることは避けなければならない。迅速なリコールと徹底した補償を最優先にすべきだが、根本的にはサムスンの役員・社員全員が「技術最優先」という信念を骨の髄まで染み込ませなければならない。ほかの各企業も同様に考えるべきだ。