Top > 魚類・甲殻類・水生生物 > 熱帯魚
2016-09-10 04:40:57
熱帯魚は「グッピーに始まり、グッピーに終わる」という有名な言葉があります。
一度目にすれば忘れられないグッピーの美しさは、多くのアクアリストにとって熱帯魚飼育をはじめるきっかけになってきました。
育てやすくブリーディングもしやすい間口の広さがある一方、アートにも例えられる美しいグッピーを生み出すチャレンジには果てがありません。
飼育のはじめやすさと奥深さ、この両面性がグッピーの魅力です。
本記事では、そんなグッピーを飼育するための基礎知識についてまとめました。
まずは魚としてのグッピーの分類や歴史をふまえ、大きさや性格、寿命、かかりやすい病気などの基本データをご紹介します。
その上で、具体的な飼育を始めるために必要な水槽づくりと注意事項、さらにもう一歩進んだ楽しみ方としてのブリーディングについて解説していきます。
グッピーは「卵胎生メダカ」の一種です。
「卵胎生」とは繁殖形態のことです。
メダカの仲間には卵生・卵胎生・胎生の3種類の繁殖形態をとるものがいます。
多くの魚と同じように、卵を水中にそのまま産むものを「卵生」といいます。
これに対して卵をお腹の中で孵化させ、かえった稚魚を産むものを「卵胎生」といいます。
さらに、哺乳類のようにある程度お腹の中で稚魚を育ててから産むものを「胎生」といいます。
グッピーは卵胎生ですから、メス親のお腹から直接、孵化した稚魚が生まれてきます。
ちなみに卵を産む「産卵」に対し、稚魚を産むことを「産仔(さんし)」と呼びます。
親魚から子魚が生まれてくる…!
そんな場面はなかなか目にすることがありませんから、グッピーの産仔場面はブリーディングの醍醐味のひとつです。
グッピーの稚魚はまだ卵であるかのように丸まった状態で生まれてきますが、すぐにピンピンと跳ねるように泳ぐようになり、その姿はとてもキュートです。
グッピーはもともと南米北部に生息していた魚で、1850年頃に発見されました。
「グッピー」とは、この時の発見者であるイギリスの植物学者、レクメア・グッピー氏の名前をとったものです。
グッピーはその後、主にイギリスやドイツで繁殖・研究が進みましたが、やがて繁殖の中心はシンガポールをはじめとしたアジア諸国に移ってゆきました。
日本では1930年頃からグッピーが売られ始め、一般的なものとなったのは戦後のことです。
東京オリンピックが開かれた高度経済成長期の1960年代~1970年代、バブル景気にわいた1990年代の2回にわたって大きなグッピーブームがありました。
宝石にも例えられるグッピーの美しさが、豪華さを好む社会の空気によくマッチしたのかもしれません。
景気の波が引いてからブームはおさまりましたが、グッピー人気は定着し、今も多くの愛好家を惹きつけています。
輸入された外国産のグッピーに対し、日本国内で繁殖・飼育された国産グッピーもいます。
これは主に美しさを追究する愛好家の手によって作出されてきたもので、品評会も開催されています。
グッピーは成長すると5cmほどの大きさになります。
もっとも成長の度合いは水槽の状態によっても変わり、増えすぎると体形が小さくなることもありますので注意が必要です。
外国産のグッピーはオス・メス1ペアで200円~、国産グッピーは1ペア1,000円~で購入できます。
高級なものでは数千円~数万円になることもあります。
輸入される外国産グッピーはリーズナブルな価格ですが、長旅で魚が弱っていたり、病気に感染している可能性もあります。
そのため初心者には国産グッピーの方が育てやすいと言われています。
グッピーの餌としては生餌と人工飼料がよく用いられます。
ブラインシュリンプは栄養価が高く消化もしやすいことで知られ、グッピーの餌としてもっともおすすめされています。
特に稚魚の餌として、生後1か月くらいまではブラインシュリンプを欠かさないことがコツです。
イトミミズはグッピーの好物ですが、水槽を汚してしまいやすいため十分なケアが必要です。
与える前に雑菌をよく洗い落とし、水質を悪化させる食べ残しが出ないよう、すぐに食べきれる量だけを与えるようにしましょう。
もっともイトミミズを与えると、特にメスの体形がふっくらとして大きくなります。
最近ではフリーズドライのタイプも販売され、与えやすくなっています。
人工飼料は保管もしやすく、栄養素がバランスよく配合されています。
生餌とうまく組み合わせて与えましょう。
グッピーフードなどが売っています。
グッピーはよく泳ぎまわり、たくさん食べますから、できれば何回かにわけて与えることが理想です。
熱帯魚の餌について、より詳しくは「おすすめの熱帯魚の餌ランキングTOP10! 熱帯魚の餌について知ろう!」の項目も参照してみてください。
グッピーは基本的に温和な性格で、人懐こい一面ももっています。
水槽のそばにいくとグッピーが寄ってくる、という体験があるアクアリストも少なくありません。
グッピーの寿命はおよそ1年です。
早くて数か月、長い場合は2年ほど生きることもあります。
アクアショップで売られている成魚の状態のグッピーはすでに生後3か月ほどを経過しているため、家に迎え入れてからの時間はあっという間に感じられるかもしれません。
グッピーは繁殖のしやすい魚としても有名ですから、ぜひ、次世代を育てて長くグッピーを楽しんでください。
若い魚を選んで売ってくれるショップで購入することもポイントです。
フレキシバクター・カラムナリス菌によって発症し、口やヒレがカビたように白くボロボロになります。
尾腐れ病やヒレ腐れ病、マウスファンガスとも言われる病気です。
進行が早く致死率が高いため、早期発見が重要です。
ケガした部分から寄生され、発症することがあります。
特にグッピーはヒレが大きいため、引っかけたりかじられてヒレが欠けているなどの異常を見つけたら要注意です。
早期段階であれば、フラン剤(フラン系合成抗生物質)による薬浴で治ることがあります。
グリーンFゴールド、エルバージュなどが市販されています。
グッピーの特徴である大きな尾びれが折りたたまれて針のように細くなり、弱って死んでしまう病気です。
稚魚によく起こる症状ですが、成魚がかかることもあります。
ハリ病の治療には0.5%(1リットルの水に対して5gの粗塩を投入)の塩浴をさせる方法、0.2~0.3%(1リットルの水に対して2g~3gの粗塩を投入)の塩浴とメチレンブルーによる薬浴を組み合わせる方法などが推奨されています。
ただし、薬と塩を同時に入れないように注意しましょう。
ハリ病発症の原因に関しては、先天的な原因がある場合、水質の悪化によって発症する場合などがあるとされ、まだはっきりとしたことはわかっていないのが現状です。
しかし、少なくとも後天的な発症を防ぐため、水質を悪化させないためのケアが不可欠であることは言うまでもありません。
次のページでは驚くほど豊富なグッピーの種類、バリエーションについてご紹介していきます!