神戸大教授、規制強化に反対 内閣府聴取
内閣府男女共同参画会議の「女性に対する暴力に関する専門調査会」は12日、アダルトビデオ(AV)への出演強要問題について有識者へのヒアリングを行った。神戸大の青山薫教授(社会学)は「規制強化は業種への差別意識を強め、出演者への危害を増やす結果になる」と主張し、人権団体などが求める法規制に反対する姿勢を示した。
出演強要問題を巡っては今年3月、人権団体ヒューマンライツ・ナウ(HRN)が「『拒めば違約金が発生する』などと脅されて出演を余儀なくされる事例が後を絶たず、著しい人権被害だ」とする調査報告書を公表した。国会でも問題が取り上げられ、政府が実態把握を進める方針を示していた。調査会は6月に人権団体側のヒアリングを実施し、「新たな法規制が必要」と提案を受けていた。
業界側では7月、元AV女優の川奈まり子さんらが一般社団法人・表現者ネットワーク(AVAN)を設立し、統一契約書の策定などによる健全化に取り組んでいる。
同法人のアドバイザーを務めヒアリングで女優らの意思を“代弁”する形となった青山教授は「取り締まりが厳しくなれば業界が『アンダーグラウンド(地下)化』し、労働条件が悪化する」と指摘し、実態を正確に把握するため「現場を知る業界関係者を会議に呼ぶべきだ」と訴えた。
一緒にヒアリングに応じた琉球大の矢野恵美教授(刑法)は「現行刑法でも処罰の可能性はあるが、スカウトや事務所幹部など現場にいない人間は立証の壁がある」と実情を説明した。【加藤隆寛】