築地市場(中央区)の移転が延期された豊洲市場(江東区)の安全対策工事で、東京都が専門家の提言に従わず、事実と異なる説明をしていたことが明らかになった。小池百合子知事は3つのルートを使い、安全性や経緯を検証する。検証には時間がかかる可能性があり、市場の移転時期や2020年五輪に備えた道路整備に影響しそうだ。
東京都議会の共産党会派に所属する議員団が12日、豊洲市場に関する資料を公表した。同党都議団は7日に現地調査した。土壌汚染の専門家の提言を受け、有害物質のベンゼンが建物に入るのを防ぐ目的で、都が「盛り土をしている」と説明した市場棟の地下部分が、実際はコンクリートで覆われた空間になっていることを確かめた。
豊洲市場の敷地の3割程度には盛り土がない可能性がある。すでに13年12月の段階では、都の設計図でも売り場棟の地下が空洞になっている。
都議団が撮影した写真ではコンクリート層の底面に水がたまっている。都は水が雨水か地下水か、汚染の有無を調べる。
知事が3つのルートで調査するのは、客観性を担保するのが目的だ。
まず、08年に盛り土の必要性を提言した土壌対策の専門家会議(座長・放送大学の平田健正特任教授)を再度招集し、盛り土なしでも安全なのか調査を依頼する。
2つ目は知事直轄の市場問題プロジェクトチームだ。週内に初会合を開き、外部有識者に安全調査を依頼する。約850億円の土壌汚染対策費の内訳や不正の有無も精査する。3つ目は4人の副知事らが中心となった都庁の局を横断した組織で、盛り土を巡る情報公開の経緯を調べる。
知事は地下水の水質調査結果が分かる17年1月以降に新たな移転時期を判断するとしていた。一連の問題は28日に開会する都議会の議論に影響しそうだ。議会が土壌汚染対策の予算を承認した後の、チェックのあり方が課題だ。